「ボンドロ」2100万枚超の異例ヒットの裏側 シール開発者が語る技術の結晶「2層に分けた印刷」とは

懐かしいのに、新しい――。そんな感覚が広がり、シール「ボンボンドロップ」が2100万枚出荷の特大ヒットとなった。“平成女児”世代にも刺さるが、実はブームを狙って作られたものではなかった。
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シール集め、シール交換がブームだ。
きっかけは、大阪の文具メーカー「クーリア」が2024年に発売した「ボンボンドロップシール」だ。まるでドロップのような、異次元の立体感と透明感が特徴だ。
文具店ではシール売り場が拡大しているが、「ボンドロ」は依然として入手困難な状態が続く。大人から子どもまで人気が広がっている。
これまで2万点以上のシールを集めてきた愛好家の「シール大臣」さん(30代女性)によると、25年春夏ごろから人気が加速し、9月ごろには入手困難になったという。
売り場では入荷してもすぐに棚が空き、「どこにも売っていない」と探し回る声も少なくない。ボンドロ以外のシールやシール帳も品薄となり、1シート550円ほどのシールが、フリマサイトでは倍以上の価格で出品されることもある。
SNSでは、大人同士がシール帳をめくりながら「これ、かわいい」と見せ合い、交換する様子が投稿されている。芸能人の収集も話題で、明石家さんまさんが番組で小学生と自身のシールを交換したことや、俳優の新木優子さんの“電話帳並み”に分厚いシール帳も注目を集めた。
■シールは「小さなアート」
透明のぷっくりしたシールは昔からある。指で押すと少しへこみ、キラキラしていた印象があるが、近年は従来のシールの延長線上で、素材や加工、サイズのバリエーションがさらに広がっているとシール大臣さんは話す。
「シールは、『小さなアート』だと思っています」
光にかざすと、裏面まで透けるような透明感がある。ラメの輝きとも違う、水中のようなやわらかな光を反射する。まるで物語の中の湖を閉じ込めたような質感だ。

「同じシリーズでも色や形、素材、テーマの違いによって、見え方が変わるのも魅力のひとつです。この透明感が好きだな、この色の重なりがきれいだな、と見ているだけで楽しいんです」(シール大臣さん)
シール大臣さんが一番ワクワクするのは、新作が発売されるとき。透明感が売りのボンドロが、起毛素材やオーロラ加工など、異なる表現でも展開されたときは新鮮さを感じた。
新作が出るたびに、「今回も素敵だな」と思う。そしてまた次を待つ。
「好きなアーティストの新曲を待っている感覚に近いかもしれません」(シール大臣さん)
■これまでのシール製造技術の“集大成”
クーリアによると、ボンドロは2026年2月末時点で累計出荷数2100万枚に達した。
同社は、1996年に創業して、アニメ化された「しずくちゃん」などの人気キャラクター、人気シールを多数生み出してきた。だが、社会現象といえる規模のヒットは初めてだという。
SNSでの拡散、キャラクターコラボ、メディア露出。いくつもの要素が重なり、想定を超えて広がった。通常、ヒット商品には人気の偏りが出るというが、ボンドロは違う。
「どの種類でも、出荷したらすぐ売り切れてしまいます」(同社広報担当者)
どれが一番人気か聞かれても答えられない。すべてが売れていく、異例の状態だ。同社は増産を続けている。
シール全体のブームへと広がった。動物のおしりがモチーフの「おしりシール」、水が入った「ウォーターシール」をはじめとした他シリーズも好評だという。
ヒットの裏側には、技術の進化があった。ボンドロを企画した、開発部デザイナーの山﨑菜央さん(29)は言う。
「ボンドロは、これまでの技術をすべて組み合わせて作った、全く新しいシールです」
シールの底に印刷するだけだと、上にのせた樹脂カプセルを通してプリントが歪んで見えてしまう。そこで取り入れたのが、2層に分けた印刷だ。

キャラクターなら顔は表面に、体は底面に印刷する。膨張して見えるのを防ぎつつ、立体感を生む。奥行きを出す設計だ。
「お菓子のデザインなら、シールの中に本当にお菓子が入っているように見えるようにしています」(山﨑さん)
たしかに、透明のカプセルのなかに、立体的なイチゴケーキが入っているようなシールもある。
「2層に分けた印刷は、仕上がりを想像するのが難しく、ずれないようにデザインを調整するのが大変でした」(山﨑さん)
■「平成女児ブームを狙ってない」
ボンドロはなぜここまで広がったのか。
その理由として指摘されるのが、「平成女児」と呼ばれる世代の存在だ。1990年代後半から2000年代にかけて小学生だった女性。小学生時代はぷっくりシールを集め、シール帳を作って友達と交換していた。いま20~30代になり、ブームを牽引しているともいわれる。
29歳の山﨑さんも生粋の平成女児だが、意外なことを言った。
「平成女児ブームを狙ったわけではありません」
開発の出発点は、別にあった。
トレーディングカードケースや小物雑貨を飾る「デコ文化」に着目し、「手軽にデコできるもの」を目指した。
ただし、ターゲットはあくまで「子ども」だった。未就学児から小学校低学年くらいの女子を想定していた。
その「狙いすぎなさ」が当たった。
「開発チームのメンバーは20代から40代まで幅広く、世代を超えたチームの話し合いのなかで形になりました。ただ、低年齢層をターゲットにしたことで、懐かしさも、進化したかわいさも感じてもらえる商品になったと思っています」
同じシールでも、使い方は人それぞれだ。子どもにも、大人にも、集める人にも、飾る人にも、あらゆる層に刺さった。
どこに貼ろうか。まだ取っておこうか。誰にあげようか。
その時間もまた、楽しさの一部になっている。

(AERA編集部・井上有紀子)
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