「車の維持費ショック」の正体――なぜ7割は“整備見積書”に絶望するのか? 任せきりで膨らむ費用の仕組みとは

見積もり超過の常態化

 車検に行ったら「想定の1.5倍」の金額を示された――。

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こうした声がディーラー現場では珍しくない。実際、半数を超える人が想定外の出費を経験している。背景には、整備の中身が見えにくいことと、販売店への依存があるだろう。

 NEXER(東京都豊島区)と富士屋硝子店(栃木県小山市)が2026年3月に行った共同調査では、全国の男女400人のうち208人、52.0%がメンテナンスで予想外の支払いを経験したと答えている。その内訳を見てみよう。

Q.どのような出費が予想外でしたか?(複数回答可)

・1位 バッテリー交換:52.4%

・2位 タイヤ交換:48.6%

・3位 車検時の追加整備:33.2%

・4位 ブレーキ関連の修理・交換:15.9%

・5位 オイル漏れ・エンジン関連修理:14.9%

・6位 エアコン修理:10.6%

・7位 ライト・電装系の修理:10.1%

・8位 フロントガラスの交換・修理:6.3%

・その他:5.8%

調査全体では、メンテナンス費用について

「70.3%」

が「想定より高い」と感じている。特に負担感は上位の項目に集中している。年間の維持費を3万円未満と見積もる層が48.6%にのぼり、必要な整備を後回しにする傾向も見える。こうした認識のずれの背景には、

「車は購入後に大きな費用がかからない」

という見方がある。だが実際には、上記の52.0%が経験した想定外の支払いは、先送りされてきた整備が一気に表に出たものでもある。安全を保つための負担が、ある時点でまとめて現れる構図になっているのだ。

費用抑制行動の欠落

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「車の維持費・メンテナンス費用に関するアンケート」調査(画像:NEXER)

 なぜ整備費用への納得感がここまで弱いのか――。

 その背景には、利用者の行動と市場の構造が重なり合ったまま維持費の負担が膨らむ流れがあるからだろう。調査で目を引くのは、7割が費用を高いと感じている一方で、79.5%が費用を抑える工夫をしていない点だ。この差の裏には、車の仕組みが複雑になるなかで、中身を十分に追い切れない不安を、結果として支払いの受け入れで埋めている状況がある。利用者の多くは、

「ディーラーであれば安心だ」

という感覚で判断を委ねている。ただその安心は、別の選択肢で問題が起きるかもしれないという不安と表裏になっている。そのため、整備専門店に切り替える動きや自分で点検する余地は広がりにくい。45.0%の専門店利用経験者や42.7%の工夫をしている層が持つような、価格を見比べる視点も限定されていくだろう。

 結果として、比較が十分に行われないまま提示された見積もりを受け入れる流れが続く。その積み重ねが、想定を超える負担につながっているのだ。

電装化による負担増

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「車の維持費・メンテナンス費用に関するアンケート」調査(画像:NEXER)

 1位のバッテリー交換(52.4%)と2位のタイヤ交換(48.6%)が想定外の出費として多く挙がる背景には、

「車の仕組みそのものの変化」

があるだろう。電気制御の比重が高まり、バッテリーは始動だけでなく車全体の電力を支える部品になった。寿命が近づいても前触れが目立たず、ある時点で動作が不安定になることもある。

 ただ、79.5%の人は特に備えをしていない。電圧の低下や摩耗の進み具合を日常のなかで把握する機会が少ないままだ。タイヤも車体の大型化や性能向上に合わせてサイズが広がり、価格は以前より上がっている。

 こうした変化に対し、利用者の維持費に対する感覚は昔のまま残っている。そのずれが見積もりへの不満につながる場面は多い。点検の間隔が空いたまま整備の場に持ち込まれ、その場で交換が必要になる。結果として高価な純正部品をそのまま選ばざるを得ない状況が生まれているのだろう。

車検集中整備の負担増

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「車の維持費・メンテナンス費用に関するアンケート」調査(画像:NEXER)

 3位の車検時の追加整備(33.2%)は、利用者の負担感を強める要因になっている。車検は公道を走るための必須手続きであり、提示された金額が想定より高くても、その場で断ることが難しい局面が少なくない。

 利用者の多くは専門知識を持たないため、整備士からの不具合説明はそのまま受け入れる形になりやすい。安心を優先して同じ業者に任せ続ける人も多く、55.0%は他の業者を利用した経験がないとされる。比較の機会そのものが限られている状況だ。

 結果として、本来は時期を分けて対応できる整備まで車検に合わせてまとめられやすい。価格の調整余地が小さいまま取引が進むことが、不満につながっているのだろう。

自主的対応層の広がり

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「車の維持費・メンテナンス費用に関するアンケート」調査(画像:NEXER)

 費用を抑える工夫をしている20.5%の人は、「DIYでできることは自分で行う」(42.7%)、「定期点検をして大きな故障を防ぐ」(37.8%)、「カー用品店を活用する」(23.2%)といった方法を取っている。

 ディーラーが車をよく理解しているという信頼は多くの利用者にある。ただ、コスト管理まで任せきりになると、支払いが積み上がる流れに入りやすい。専門店を使い分ける45.0%の層は、自分で判断しながら負担を抑えている。一方で、工夫をしていない79.5%の層は、維持費を

「避けにくいものとして受け止めている」

場面が目立つ。70.3%が「高い」と感じている不満は、気分の問題だけではないだろう。必要な情報に触れないまま判断を重ねてきた結果、余分な支払いが積み重なっている面がある。知識を持って動くか、動かずに支払いを続けるかで差は広がる。車を持ち続けるうえで、その違いが負担の重さを左右していくのだ。

維持費上昇の長期傾向

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車の維持費を抑えるコツ。

 今回の調査が示すのは、車を持ち続けることそのものが重さを増しているという現実だ。52.0%が経験した想定外の出費は、今後も増えていく流れだ。電動化が進み、安全機能が標準装備になるほど、修理や維持にかかる費用は上がり続ける。

 これまでのようにディーラーに車を預け、安心を理由に提示額をそのまま支払うやり方を続ければ、支出は膨らみやすい。現状の習慣のままでは、負担を抑えるのは簡単ではない。

 車との向き合い方は変わる必要がある。専門店を使い分ける45.0%のように、自分で知識を持ち、

「必要な整備とそうでないものを見極める力」

が求められている。移動の自由を保てるかどうかは、業界に任せるか、自分で維持費を見ていくかで差がつく。

 車を持つことが負担の大きい選択になりつつある今、考えることをやめれば、そのまま所有を続けることは難しくなるだろう。