高市氏は秋まで? 永田町で広がる「茂木首班構想」

世論調査では引き続き高い支持率を維持している高市首相。しかし、その“はしご”が外されかねない事態に陥っているようだ(写真:ブルームバーグ)
共同通信が4月4日と5日に行った世論調査では、高市内閣の支持率は63.8%と、前月の64.1%からほぼ横ばい。不支持率は26%で、2ポイント増加した。最新のJNN(ジャパン・ニュース・ネットワーク)の世論調査でも、内閣支持率は71.5%と頭打ち感がある。
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3月下旬に行われた毎日新聞の世論調査では高市内閣の支持率は前回比3ポイント減の58%だったが、与党に厳しい数字が出ることで知られる毎日新聞の調査にしては高水準。国民は今のところ、高市政権を支持しているといってよい。
ただ、遠くから金色に見えていた宮殿が単なる「ハリボテ」だということもある。実際に政権基盤は盤石ではないようだ。月刊総合情報誌『選択』2026年4月号が報じた「高市が『退陣』を口にした夜」は、永田町を震撼させた。
『選択』に描かれた衝撃の相克
その内容とは、3月の訪米でホルムズ海峡への自衛隊派遣に前のめりだった高市早苗首相を、内閣官房参与の今井尚哉氏が阻止。官邸に乗り込んで言い争いになった末、政府・与党からの反発もあって、高市首相が譲歩せざるをえなかった。そして、3月24日夜に政府関係者たちが集まる中、高市首相は今井氏の更迭を口にしたというものだ。
あまりに衝撃的な内容のため「にわかに信じられない」との声は少なくないが、納得できる点もある。ここ最近、「高市首相が今井氏の言うことに耳を貸さないため、2人の関係はよくない」との話が関係者の間でささやかれていたからだ。
第2次安倍政権を支えた今井氏は、高市氏が首相に就任するに際して政務秘書官に迎えようとした人物だ。キヤノングローバル戦略研究所研究主幹などを務めるため、フルタイム勤務の首相秘書官は無理として、非常勤の内閣官房参与に就任。1月の衆院解散を主導したといわれた。
しかし、今はそのような「重鎮」と距離を取ろうとする場合ではない。アメリカとイスラエルによるイラン攻撃以来、石油不安が高まっている。
高市首相にすれば、3月19日から22日まで訪米し、ドナルド・トランプ大統領と直々に会談したことは、外交上の大成功だったに違いない。機上で寝ずに考えた「世界に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけ」とのメッセージにトランプ大統領は満足そうな表情で応え、日米蜜月関係を大きくアピールできた。
また、次世代原子炉の小型モジュール炉の建設など、約11兆円にのぼる対米投資という“お土産”を持参したおかげか、夕食会では高市首相のお気に入りのX JAPANの曲が奏でられるなど、最高の待遇を受けた。
だがトランプ大統領は、4月2日に行った演説で「燃料を入手できない国は、アメリカから石油を購入しろ」「海峡へ行き、防衛しろ」などと、日本を含む各国にメッセージを送っている。

マクロン大統領と「かめはめ波」を打ち合うなど、日仏首脳会談は和やかな雰囲気で進んだが、成果は韓国のほうが大きかった(写真:ブルームバーグ)
高市首相は3月31日にインドネシアのプラボウォ・スビアント大統領、4月1日にはフランスのエマニュエル・マクロン大統領と首脳会談を行ったが、日本を離れた後に韓国を訪問したマクロン大統領は李在明(イ・ジェミョン)大統領と会談し、ホルムズ海峡の安全な航路の確保や中東情勢の安定に向けた協力で合意。「意思疎通」にとどまった日本との合意よりも、積極的な内容となった。
また、高市首相の盟友であるイタリアのジョルジャ・メローニ首相は、4月3日と4日に中東を訪問し、サウジアラビアでムハンマド皇太子、カタールでタミム首長、UAE(アラブ首長国連邦)でムハンマド大統領と会談。エネルギー問題やホルムズ海峡の航行の安全について協議した。
「これでは秋までもたないのではないか」
そして高市首相はようやく6日の参院予算委員会で、イランとの首脳会談の可能性について口にした。取り残された感がある高市首相が頼るのは、Xによる情報発信だ。その一方で、委員会の出席数は歴代首相と比較しても少なく、会見を開いて石油危機の不安におびえる国民の不安をなだめようとする姿勢も見せていない。
「これでは秋までもたないのではないか」との声が永田町で聞こえるのは、高市首相の健康面への懸念からだけではないようだ。
今年2月に総選挙が行われたばかりで、次の衆議院選挙までには4年間の“猶予”がある。また、次の参院選は2年後の2028年で、次期総裁選は来年10月に行われる予定だ。
しかし、今年秋には内閣改造と党人事が予定され、高市首相は「気に入らない幹部を更迭する」と見られている。すでに鈴木俊一幹事長の名前が挙がっており、その後任に茂木敏充外相を充てる説もある。
鈴木氏は25年の総裁選で高市首相を勝利に導いた麻生太郎副総裁の義弟だが、高市首相との関係は芳しくはない。今年1月の衆院解散を高市首相側から事前に知らさなかった。

キングメーカーを自認する麻生太郎副総裁(左)と、その義弟である鈴木俊一幹事長。鈴木氏は高市首相との疎遠が噂される(代表撮影:日本雑誌協会)
そして、キングメーカーを自認する麻生副総裁の頭には、すでに「茂木首班」があるという。ただし本格政権ではないようで、「次期参院選では小林鷹之政調会長か小泉進次郎防衛相を“顔”にする予定で、茂木氏はそれまでの“つなぎ”にすぎない」と、ある関係者は打ち明ける。
茂木氏の背後にロシアに強い鈴木宗男・貴子父娘がいる点も、ポイントになるだろう。エネルギー問題が長期化すれば、サハリン1や2のほかにもロシアからの供給ルートを考えなければならなくなるが、高市首相はロシア政府から入国禁止措置をくらっている。
また、以前から独自性を発揮してきた参院自民党は事実上、高市首相から離反。高市首相も3月23日午前、情勢説明のために官邸にやってきた松山政司参院会長や石井準一参院国対委員長らに対し、公邸に閉じこもったまま応じていない。
期待値が大きいほど反動も強い
高い支持率だけで安定的な政権運営は不可能だ。第2次安倍政権は老獪な二階俊博幹事長(当時)を通じて党本部を牛耳り、院内最大グループである清風会(旧安倍派の参院議員グループ)を通じて参議院も従えた。
はたして高市政権は、高い支持率以外に何があるのか。ある自民党の議員がポツリとこうつぶやいた。
「小泉純一郎氏にしろ、鳩山由紀夫氏にしろ、期待値が大きいほど反動が強く出る。05年の郵政民営化選挙の次の総選挙(09年)で民主党が圧勝して政権交代が起きたが、その次の12年の総選挙で自民党に政権が戻った。われわれは次の選挙を心して準備しなくてはいけない」
政治の歴史とは、ある意味で「はしご外しの歴史」ともいえるのかもしれない。高市首相はそのはしごに、必死にしがみついているのだろうか。