予測不能なトランプ政権、翻弄される同盟国は八方ふさがり

ホワイトハウスで記者会見するトランプ大統領(6日)

貿易関税、ウクライナへの支援、そしてデンマーク自治領グリーンランドの将来を巡り、トランプ米政権と欧州・アジア・中東の友好国は1年にわたり衝突してきた。イラン戦争はその集大成として厄介なジレンマとなっている。

各国は最も重要な同盟国である米国が、一貫性に欠ける行動を取っているとみており、さまざまな困難や不確実性がすでに生じている。戦争で各国経済が疲弊しており、ホルムズ海峡封鎖が今後も続けば、世界的なエネルギー危機が深刻化することになり、さらに大きな打撃が迫っている。

大西洋を挟んだ両岸では、多くの国が米国をもはや同盟国と言えるのかさえ疑問視している。米国やイスラエルと共に参戦することを拒否した欧州諸国に対し、ドナルド・トランプ大統領は怒りをあらわにし、臆病者と表現した。北大西洋条約機構(NATO)からの離脱もちらつかせた。

ドイツ与党に所属するロデリッヒ・キースウェッター議員は、欧州で広く共有されている思いを代弁し、「米国は予測不可能だ」と述べた。「西側諸国にとって、もはや信頼できるパートナーではない」

こうした国にとっての難題は、米国の軍事・経済の代替となる存在が当面は見当たらないということだ。中国とロシアが略奪的な政策を推し進める中、欧州やアジアの中規模な民主主義国が米国依存から脱却し、相互協力を強化するには時間が必要となる。

オーストラリアのシンクタンク「ローウィー研究所」のエグゼクティブディレクター、マイケル・フリラブ氏は、第2次世界大戦以降、米国は民主主義を掲げる各国にとっておおむね善意ある大国であり、同意に基づいて覇権を確立してきたと述べた。だが現在のトランプ政権下の米国は、そのようには見られていない。

フリラブ氏は「同盟国を侮辱し、あらゆる交渉で追い詰め、世界に対して最も醜い顔を見せるなら、この同意は消え去るだろう」とした上で、「だが米国主導の同盟体制に代わるものとは、どのようなものだろうか? 米国は地球上のどこにでも力を投射できる唯一の国となっている。米政府以外に誰が西側を率いるというのか?」と述べた。

この難題は、特にペルシャ湾岸における米国の友好国や同盟国に突きつけられている。湾岸諸国の都市には、連日のようにイランによるミサイルやドローン(無人機)攻撃が実施されている。これらの国は自国が始めたわけでも、その行方を左右できるわけでもない戦争に対するイランの報復によって、最も大きな打撃を受けている。

湾岸諸国の当局者たちの間では、トランプ氏に対する不満が募っている。同氏は数々の非外交的な姿勢を示しており、サウジアラビアが先月主催した投資会議では、同国の実質的な支配者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子が「私のご機嫌を取るとは思っていなかっただろう」と発言して皇太子を侮辱した。

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子とトランプ氏

それでもこれらの国は重要な兵器、特に防空システムを提供できるのは、米国のみであることを理解している。さらに、イランの将来的な地域支配の試みから守ることができるのは米国だけだと認識している。

アラブ首長国連邦(UAE)大統領の外交顧問を務めるアンワル・ガルガシュ氏は4日、記者団に対し、「われわれの主要な安全保障パートナーは米国だ」と語り、「米国との関係をさらに強化していく」と述べた。

アジアでも同様の判断が下されている。北朝鮮の脅威と勢いづく中国に直面している韓国は、3月に米国が重要な防空資産を中東に再配備したことを憂慮しながら見守った。

ソウルの韓国外国語大学で国際政治を教えるメイソン・リッチー教授は「米国がイランで取っている行動は、米国が無法な行為者で、国内外で示される政治的価値観が韓国の掲げる価値観とはもはや相いれないことを露呈させるだけでなく、その行動が甚大な経済的影響をもたらすものであることも示している」と説明。「それでも韓国は、自国の安全保障上の目的のために、トランプ政権と良好な関係を維持する必要がある」とした。

マルコ・ルビオ米国務長官は、欧州やアジアの同盟国が米国とは異なり、ホルムズ海峡を通じたエネルギー輸送に依存しているとし、問題解決に向けて立ち上がるべきだと述べている。さらにイランとの戦争後に米国はNATO同盟が「一方通行」になっていないか検証するとした。これは米国が欧州を守る一方で、一部の欧州諸国が米国による基地使用や領空通過を拒否していることに関連している。

トランプ氏は6日の会見で、北朝鮮の指導者との良好な関係を誇示しながら、韓国がイランとの戦争参加を拒否したことへの不満を示した。また引き続き、グリーンランドの領有を望んでいると語った。

欧州やアジアの民主主義国の中で、イランの神権政治体制を支持する国はほとんどない。イランの体制は1月の民主化運動を弾圧する過程で、自国民を数千人虐殺している。だがここ数週間で米国の軍事的困難が増すにつれ、ある種の「シャーデンフロイデ(他者の不幸を喜ぶ感情)」が広がりつつある。これは戦争で思うような戦果が得られず他の地域に対するトランプ氏の介入意欲を抑制し、より従来型の国際関係に回帰することへの期待感だ。

オーストラリア首相を務めたマルコム・ターンブル氏は、「西部劇のカウボーイ的なやり方が、地政学において称賛されるのは、それが成功した時だけだ」と指摘。第1次トランプ政権と在任期間が重なった中道右派のターンブル氏は、「米国の友好国は、選択によるこの戦争の早期終結を望んでいるだけではない。米国の熱が冷め、衝動的で無謀な戦略的行動が、より秩序ある地政学的行動に取って代わられることも望んでいる」とした。

トランプ氏は主要政策課題で絶えず方針を転換し、既存の合意を唐突に破棄し、同盟国の意見を全般的に無視する姿勢を示してきた。イタリアのジョルジャ・メロー二首相のように、トランプ氏に取り入ろうとした外国首脳でさえも、しばしば痛い目に遭った。

イタリアの上院議員で産業担当閣僚を務めたこともあるカルロ・カレンダ氏は、「誰もが混乱している。現在の米国が実際に何であるかを、誰も理解できない。カリギュラやネロ以来見たことのないような、思いついたことを何でも口にする狂った皇帝によって統治されているように見える」と述べた。また「欧州人が理解したことが一つある。それは、私たちが弱い者いじめをする者を相手にしているということだ。彼が望むものを何でも与えることもできるし、彼の侮辱が聞こえないふりをすることもできる。だが彼はいじめを続けるだろう。だから、ある時点で私たちは彼を止めなければならない」とした。

トランプ氏は1月、グリーンランドの領有を試み、米政府が欧州の同盟国に対して軍事作戦を行う可能性があるという状況が数日間続いた。これは欧州首脳にとって重要な転換点となった。

グリーンランドのヌークで行われた抗議活動(1月)

フランスのミシェル・ヤコブレフ退役陸軍中将は「これは決して忘れられないだろう」とし、「トランプ氏がグリーンランドを領有すると発言したことは、心理的には、父親が冗談めかして自分の娘の1人をレイプすると語るのと同等のものだ。当然ながら、その後は家庭の世界が変わる」とした。

トランプ政権下の米国への怒りは世論調査で示されている。イラン戦争が始まる前の2月に発表された調査会社ユーガブの調査によると、欧州主要国の約34%が米国を脅威と見なしており、この数字は中国、北朝鮮、イランの脅威と同等かそれ以上となった。米国よりも大きな脅威と見られているのは、ロシアだけだ。欧州やアジアの伝統的な同盟国はいずれもトランプ氏の要求に応じず、軍事作戦への参加や自由な航行のためホルムズ海峡再開に向けた部隊派遣を拒否したが、この世論はその背景を映し出している。

実際のところ、現在のイラン戦争は、米国が伝統的な同盟国なしに戦う1世紀ぶりの主要な紛争となった。アフガニスタン戦争には、NATOのほぼ全ての加盟国が参加。英国やスペインなどは2003年のイラク侵攻には加わった。1991年のイラクに対する湾岸戦争では、数十カ国が作戦に加わり、ベトナム戦争でさえ、米軍はオーストラリア、韓国、ニュージーランド、フィリピン、タイからの支援を受けた。

国際治安支援部隊(ISAF)の兵士ら(2005年、アフガニスタンの首都カブール)

だが現在は「MAGA(米国を再び偉大に)」運動が取り込もうとしてきた極右・ポピュリスト運動の多くでさえ、イラン戦争を非難し、トランプ氏と距離を置こうとしている。来年のフランス大統領選に向けた第1回投票の世論調査で、先行する極右政党「国民連合(RN)」のジョルダン・バルデラ党首は、イランにおける米国の目標が「極めて支離滅裂」だと批判し、エマニュエル・マクロン大統領による参戦拒否を「合理的かつ名誉ある」判断だと称賛した。

ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」のティノ・クルパラ共同党首は、さらに踏み込んだ発言を行っている。同氏はドイツ政府に対し、スペインの左派政権にならい、イランに対する「侵略戦争」においてドイツ国内の軍事基地を米国が使用することを禁止するよう要求。また全ての米軍をドイツから撤退させることを提案している。

シンクタンク「ブルッキングス研究所」の米国・欧州センターのディレクターを務めるコンスタンツ・シュテルツェンミュラー氏は「欧州と統一された国際的な強硬右派運動を構築するというMAGAの戦略は、トランプ氏によるイラン攻撃から副次的打撃を受けているようだ」とした。

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――筆者のヤロスラフ・トロフィモフはWSJ外交担当チーフコレスポンデント