めくるめく団地の世界にようこそ! 失われゆく「昭和の団地」の豊かな個性と“褪せない”魅力を団地マニア暦26年のスタッフが紹介

昭和の「団地建築」の奥深い世界をご存じですか? 団地愛が止まらない天然生活編集部の川添と、建築には広く浅く興味があるミーハー派・関根が、団地の魅力を語り尽くします。初回から5,000字超えの熱量で、団地界のアイドル「スターハウス」や、エレベーターが止まらない!?「スキップ廊下型」などを徹底解説。暴走するマニアと冷静な現実派、ふたりのおしゃべりから広がる、めくるめく団地の世界をお届けします。

めくるめく団地の世界へようこそ!, 実は「団地」という言葉は幅が広いので、勝手に定義させていただきます, 団地界のアイドル「スターハウス住棟」をご覧ください!, 団地のタイプはまだまだ多彩。めくるめく団地ワールドにようこそ!, 時代が下って高層化した団地も、見どころがいっぱいです, 集合住宅好きながら戸建てへの誘惑も捨てきれない、背徳の「テラスハウス」

団地案内人

川添大輔(かわぞえ・だいすけ)

団地マニア歴26年の『天然生活』編集部員。

中学時代に暮らした社宅の団地で、その魅力に目覚める。大学時代にはトランジットで滞在したシンガポールの“レトロフューチャー”な団地群に衝撃を受け、社会人になってからは夜な夜なカメラを持って自転車で都内の団地を巡るのが日課に。警察にマークされながらも光が丘団地に通い詰め、憧れが高じてURに入居。前職では、念願の団地本も出版。昭和30年代の歴史的団地が姿を消しつつあるいま、その姿を記録に残すことへの執念は深まるばかりだ。

めくるめく団地の世界へようこそ!

関根 こんにちは。天然生活編集部の関根です。

川添 こんにちは。同じく川添です。なんだか「美しき鉱物の世界」連載のような始まり方ですが、実はこれは別件でして、「天然生活web」で念願の団地企画がスタートすることになりました!

関根 この記事がその第1回目になります!

川添 いま、団地暮らしの記事や本が大人気じゃないですかー。

関根 そうですね! では、この企画も素敵な団地暮らしを訪ねるという方向性でしょうか? 楽しみですー!

川添 いえ、それがスミマセン......、この企画では団地全体の計画と建物についてご紹介していきたいなーと。

関根 えっと、建築のお話ってことですか?

川添 はい。素敵な団地暮らしにも興味深々ではありますが、そこが盛り上がっているのに便乗して、建物としての団地の魅力に触れていければと。個人的には団地の建物のデザインと、配置計画が大好物でして。そこも盛り上げていきたいなー、と。

関根 ちょっと、人気が出るかが不安になってきましたが、ダメなら即終了ということでいいですかね。(笑)

川添 ......はい。頑張ります。

実は「団地」という言葉は幅が広いので、勝手に定義させていただきます

関根 そもそも「団地」って、何なのでしょうか?

川添 まずはそこからですよね。ここでいう「団地」は「住宅団地」のことなんですけど、本来は住居のために開発・整理された土地に、戸建てや集合住宅がズラ~っと建っているものを指します。

関根 集合住宅だけじゃないんですね。

川添 本来はそうなんですけど、皆さんが思う「団地」とは集合住宅の方だと思いますし、私が興味があるのもそっちですので、ここでは、自治体や法人が開発した集合住宅が立ち並ぶものを「団地」とさせてください!

関根 とりあえずOKです。

川添 でですね。団地の建物にもいくつか種類があります!

関根 よくある、5階建てぐらいの四角い板状の建物だけじゃないんですね。

川添 そうなんですよ! 関根さんがいっている5階建てぐらいの四角い建物は、「板状階段室型住宅」と分類されています。多くの場合建物の南側に階段があって、その両側に住戸が配置されているタイプですね。その構造が左右に連なって、板状の横に長い建物になっています。

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団地の代表格といえばこの「板状階段室型住宅」タイプ。どれも同じように見えるかもしれませんが、実はバリエーションが豊富なんです

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1枚目の写真ではよくわからなかったかもしれませんが、階段室と両側の居室が連続して、横に長い板状の建物になっている様子です。どのくらい連続して横に長いかは、まちまちなんです

関根 いっている意味はよく分かりませんでしたが、写真を見て分かりました。誰もが想像する団地のタイプですね。

川添 そうですね。おなじみのタイプと思います。

関根 その分類って、誰が決めたんですか?

川添 そういわれるとよくわかりませんが、とりあえず団地の総本山と私が勝手に思っている、URさんが公開している資料を参考にさせていただきました。

関根 わかりました!

団地界のアイドル「スターハウス住棟」をご覧ください!

関根 そのほかに、団地のタイプってあるんですか?

川添 あとは、団地界の人気者「スターハウス住棟」、比較的新しい高層タイプに多い「片廊下型住棟」、その変形の「スキップ廊下型住棟」、「片廊下型住棟」がくっついた「ツインコリダー(ツインコリドール型とも)」。これは、専門のマニアがいるぐらい人気なんですよ。それに郊外に多い、戸建てのような地に足がついた住環境が魅力の「テラスハウス」などですかねー。

関根 いまのところ、ひとつも頭に入って来ませんが、結構種類がありますね。

川添 ですよね。見てもらう方が早いので、写真で見ていきましょう。まずは「スターハウス住棟」です。

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どーん! こちらが団地界のアイドル「スターハウス住棟」です。建物の中央に螺旋状の階段があって、あちこちに住戸の入り口のドアがあって楽しそうなんですよ。各住戸も3方、あるいは2方に開口がある開放感あふれる間取りで、緑豊かな団地の景色も楽しめる、団地好きにとっては夢のような住まいです。住んでみたかったなー

関根 これはかわいいですねー。どんな形をしているんですか?

川添 いいですよねー。これは上から見たら、Y字型というか、三方に住戸が突き出た形になっています。初期の団地のほとんどを占めた「板状階段室型住宅」がズラーっと並ぶ配置だと、変化がなさ過ぎて人間の住まいとしてどうなの?みたいな考えから生まれた、団地の景観に変化をつけるために考えられたタイプといわれています。

関根 確かに、団地というと、板状の建物が平行にズラーっと並んでいるイメージでした。それが嫌という人もいそうですね。

川添 そうなんです。それで「スターハウス住棟」は「星型ポイント型住宅」と呼ばれることもあるのですが、恐らくコストダウンを図ったのかなーと思うんですが、星型ではない四角柱型のポイントハウスもあるんですよ。これは「ボックス住棟」と呼ばれます。

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なんとな~く、「スターハウス住棟」のローコスト版に思えなくもない「ボックス住棟」。そのためか、スターハウスと比べて多数が現存しています。日本の団地といえば白かアイボリーを基調とした明るい色が一般的でしたが、最近はヨーロッパの集合住宅を思わせる(注: 川添 の勝手な想像です)カラーリングが増えてきました

関根 「ボックス住棟」も味がありますね。

川添 ですよね。「スターハウス住棟」は昭和30年代の団地に多いので、数は減っていますが建て替えられた「赤羽台団地」では4棟が、団地として初めて、国の登録有形文化財に登録されて保存されてるんですよ。高層団地に建て替えられた「ひばりが丘団地」でも、1棟が保存されていて、在りし日の昭和の団地の景色を留めてるんですよねー。

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こちらが団地界の星、団地で初めて国の登録有形文化財になった「赤羽台団地」(東京都・北区)のスターハウス。まだ人が住んでいた2005年ごろに撮影したものです。「赤羽台団地」は植栽の手入れが行き届いていて、古くはあっても凛としたたたずまいがありました

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こちらは2000年頃の「赤羽台団地」のスターハウスなんですが、聖地過ぎて何度も通っているうちに、うっかり、ほぼ同じ構図で撮ってしまっていたという、我ながら微笑まし過ぎる団地愛溢れる写真になっております。カラーリングの変化もわかって面白いですねー。いまさらですが、5年の間に治安が悪化したのかが心配になりました

関根 川添さんのキャプション(編集用語で、写真の解説文のことです)が常軌を逸した長さになってきていますが大丈夫ですか? 記事も、ここまででもう1800文字になってますから、次行きますよ。

団地のタイプはまだまだ多彩。めくるめく団地ワールドにようこそ!

川添 では、どんどん行きますね。まずは「片廊下型住棟」です。

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いわゆる普通のマンション型。面白みがないなんて意見が聞こえてきそうですが、通路側の造形美にしびれるようになれば、あなたも立派な団地マニアです

関根 普通のマンションに多いタイプですね。

川添 はい。14階建てが多い気がするのですが、団地が高層化した後に増えてきたタイプですね。エレベータがついていて、そこから各住戸に移動するための廊下が北側についていることが多いです。私が住んでいる団地もこのタイプです。

関根 えっ、川添さん団地に住んでるんですか?

川添 団地好きですから。

関根 でも、割と普通のタイプだったんですね。

川添 手厳しいですねー。このタイプはすべての階にエレベーターが止まるので、年老いても末永く暮らせるかなーとか、いろいろ考えて、私の場合はこのタイプに行きつきました。いろいろな団地をめぐっていると、「見て楽しい団地」と「住みやすい団地」は違うのではなんてことに気がつ......

関根 あっ、その話は今回はいいです。それより、エレベータが各階に止まらないとこなんてあるんですか?

川添 それがあるんですよ! 「スキップ廊下型住棟」がそれです!

関根 よくわからないので、続けてどうぞ。

川添 これはですねー、近代建築の世界的な巨匠、ル・コルビュジエの3人の日本人のお弟子さんのひとりで、日本建築界の巨匠・前川國男さんが設計した、初期の傑作高層団地「晴海高層アパート」(現存せず)にも取り入れられていた構造でして、エレベーターが3階ごとにしか止まらず、停まらない階には階段で移動するというちょっと複雑な構造の団地なんです。

関根 編集者なのに一文が長すぎませんか?

川添 興奮するとこんな文章になるんです......。まぁこれも写真を見てもらうのが分かりやすいですね。こちらが北側(通路側)になります。

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「スキップ廊下型住棟」の通路側の雄姿をお楽しみください。団地初心者には驚かれる形状ですが、実はたくさん建ってます

関根 「初心者」の意味が分かりかねますが、複雑でおもしろい形ですね。

川添 はい。実は私が住んでいる団地のもう1棟がこのタイプなんですが、バリアフリーという面では「片廊下型住棟」に劣るものの、北側の居室のプライバシーが保たれるなど利点も多いです。あと、エレベーターが酷使されにくいので寿命が延びるんじゃないかな~という気もしています。これは私の個人的な考えですけど。

関根 面白いですね。もし友人が住んでいたら、部屋までたどり着けるか自信がないです。

川添 ですよね。「スキップ廊下型住棟」はデザイン的にも面白い建物が多くて、現存するものでは、広島市内にある「市営元町高層アパート」なんかもその系譜になります。ここはすごくカッコいい団地で、実は、私が一番好きな団地でもありまして、設計者は「晴海高層アパート」を設計した前川國男さんの元で働いていた大高正人さんが設計していて、大高さんといえば、香川県・坂出市の......

関根 また、一文が長くなってますよ!

川添 あぁ、ついうっかり。とにかく、「スキップ廊下型住棟」は建物のデザインが面白くなりがちで、住み心地は分かりませんが、見ていて楽しい団地です!

関根 ちょっと、住んでみたくなりますね。

川添 ですよね!

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川添的ナンバーワン・フェイバリット団地の「市営元町高層アパート」(広島県・広島市)。築50年近い団地とは思えない未来感が最高です。建て替えなどの話も出ているようですが、末永く残ってほしい団地としみじみ思います

時代が下って高層化した団地も、見どころがいっぱいです

川添 で、「片廊下型住棟」のもうひとつの変形タイプが「ツインコリダー(ツインコリドール型)」なんですが、これも写真を見てください。

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「ツインコリダー(ツインコリドール型)」といえばこの構図。詳しくは本文をどーぞ

関根 なんですかこれは!?

川添 壮観ですよねー。「ツインコリダー(ツインコリドール型)」は「片廊下型住棟」がくっついた、とさっきいいましたが、「片廊下型住棟」が平行に並んで、その間が吹き抜け空間になっているんですよ。その景色がこの写真です。

関根 スゴイ景色ですね。でも、2棟が平行に並ぶと、どちらかが完全北向きになっちゃうんじゃないですか?

川添 鋭いですねー。「ツインコリダー(ツインコリドール型)」は、南北に配置されることが多くて、居室が東西を向いてる形が多いんです。

関根 日当たり重視の方にはちょっと抵抗があるかもしれませんね。

川添 そうなんです。それで、「豊島5丁目団地」(東京都・北区)のように2棟を並行配置ではなくてV字型に配置したり、各住戸が少し南側に角度をつけたデザインにしたりして、少しでも採光をよくしようという工夫がされているものもあって、そういったバリエーションも見どころになってるんですよねー。

関根 へぇ~。

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首都高からもよく見える「豊島5丁目団地」。写真は北側からの景色です。V字型に開いた変形タイプの「ツインコリダー(ツインコリドール型)」として目を引きます

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こちらは、少しでも採光を入れようと、各住戸が南側に壁とベランダを傾けたタイプの団地です。この連続感がたまりません

集合住宅好きながら戸建てへの誘惑も捨てきれない、背徳の「テラスハウス」

川添 なんだか長くなってしまいましたが、最後の「テラスハウス」がこちらです。

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テラスハウスはいろいろなタイプがあって面白いです。茨城県・つくば市で解体寸前で廃墟になっていたテラスハウス。おそらく分譲タイプと思われます。廃墟とはいえあまりのカッコよさにたくさん写真を撮ってしまいました

関根 廃墟ですか......。でもデザインはいいかも。私はこのタイプに住みたいです!

川添 いいですよね。私もいつか「テラスハウス」に住みたいと思っているのですが、庭がついてるものも多く、戸建てのように暮らせるのが憧れです。郊外の団地に多いタイプですが、かつてはたくさんあって、先ほどお話した「ひばりが丘」団地などにもズラーと建っていたのですが、建て替えで姿を消していますね。一方で、多摩エリアなどには分譲タイプのテラスハウスが多く残っているので、私も宝くじが当たったら、一部屋欲しいな~と思ってたりもします。

関根 そうなんですかー。

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上皇陛下が皇太子時代に視察に訪れ、ベランダに立った団地として有名な「ひばりが丘団地」(東京都・西東京市、現在は建て替え済み)にあったテラスハウス。多分賃貸だと思います。昭和30年代のテラスハウスは、こんなにシンプルなデザインでした。昔は郊外型の団地にズラーっと建っていたのですが、すっかり見られなくなりました

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テラスハウスといえば、団地の聖地のひとつ「阿佐ヶ谷住宅」(東京都・杉並区)ですね。緑ゆたかな広い敷地に、かわいいテラスハウスが点々と建っていて、東京23区内とは思えないのどかな景観が広がっていました。「阿佐ヶ谷住宅」は、前川國男事務所で大高正人さんが担当。日本住宅公団では、昭和30年代に数々の傑作団地を手掛けた団地のカリスマ・津端修一さん(映画『人生フルーツ』でも有名ですね)が担当した、オールスターキャストが終結したスゴすぎる団地だったのですが、いまは民間のマンションに建て替えられました。私も写真を撮っていたはずなのですが、解体時の写真しか見つからなかったので、ウィキペディア・コモンズより転載させていただきました(撮影/Kakidai)

川添 団地って、有名設計者がデザインしているものがあるんですが、テラスハウスですと「金沢シーサイドタウン」は、住宅設計の巨匠、宮脇檀をはじめとするそうそうたる設計者がデザインしたものが立ち並んでいて、素敵な空間になっているんですよ。

関根 「金沢シーサイドタウン」ってどこですか?

川添 横浜の金沢八景のちょっと手前ぐらいの埋め立て地なんです。もし、自分が横浜で働いていたらここに住みたいなーと思っています!

関根 団地って、結構いろいろな種類があるんですねー。少し興味が湧いてきました。

川添 よかったです!

関根 でも、もう5,000字を超えてますけど......。

川添 ですね。今回は、団地のタイプ別をしたうえで、いまはなき団地の聖地「赤羽台団地」を紹介したかったのですが、それは次回のお楽しみとさせてください。

関根 もしこの記事のアクセス数がよければ、紹介できるかもしれませんのでお楽しみにー。

川添 ......。

<撮影/川添大輔>