VTuber星街すいせいの苦言から考える──“推し活”全盛期の音楽フェスが抱える課題

羊文学に続き、ステージの大トリをつとめた星街すいせい, 星街すいせい「来んなフェスにお前は。何しに来てるんだよマジで」, ジャンル/コミュニティが越境する──音楽フェスの文化的価値, “推し”以外には興味がない──推し活全盛期における音楽フェスの課題, 星街すいせい、フェスでの基本的な作法について啓蒙

VTuber星街すいせいの苦言から考える──“推し活”全盛期の音楽フェスが抱える課題

バーチャルアイドル/VTuber・星街すいせいさんが4月8日、一部のファンや観客による音楽フェスでのマナー違反行為について、配信内で苦言を呈した。

星街すいせいさんは4月5日、神奈川・横浜で開催された都市型フェス「CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2026」のDAY3に出演。

これに前後して、一部の星街すいせいさんのファンによる、本イベントでの地蔵行為(目当てのアーティストではない出演者のパフォーマンスに対して無反応であること)や迷惑行為に苦言を呈したポストがSNS上で投稿/拡散され、物議を醸していた。

音楽フェスにおけるマナー問題は長年議論されているが、異文化であるVTuberのファン層がそこに直面することになった形だ。

羊文学に続き、ステージの大トリをつとめた星街すいせい

星街すいせいさんは、Studio STELLARおよびホロライブに所属するバーチャルシンガーの代表的存在の一人。

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YouTubeのチャンネル登録者数は287万人。代表曲は「ビビデバ」「Stellar Stellar」「もうどうなってもいいや(TVアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』EDテーマ)」など。

4月5日、星街すいせいさんは、「CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2026」の横浜赤レンガ倉庫 赤レンガパークに特設された「Echoes Baa 2026」ステージに登場。

当日、同ステージにはソロシンガー・華乃さん、ロックバンド・Aooo、アイドルグループ・CANDY TUNE、CUTIE STREET、シンガーソングライター・asmiさん、

音楽プロジェクト・MAISONdes、ロックバンド・羊文学が出演していた。

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星街すいせいさんは、MAISONdes、羊文学からバトンを受け取り「Echoes Baa 2026」ステージの大トリをつとめていた。

星街すいせい「来んなフェスにお前は。何しに来てるんだよマジで」

星街すいせいさんは配信の中で、イベント中に他のアーティストに対して失礼な発言をしたり、フロアの前方で星街すいせいさんの出番まで携帯を弄っていた“星詠み”(星街すいせいさんのファンのこと)がいたとされるポストに言及。

これに対し、「来んなフェスにお前は。何しに来てるんだよマジで」「すいちゃん(=星街すいせいさん)のソロライブだけ来ればいいじゃん。そんな他のアーティストにリスペクトできないような人間がソロライブに来るのも私は嫌だけどね」と、強い怒りを露わにした。

その上で星街すいせいさんは、こうしたファンによる他アーティストへの敬意を欠く行為が「星街すいせいのファンはマナーが悪い」などと、タレント本人の評判まで傷つけてしまう現実を厳しく指摘している。

ジャンル/コミュニティが越境する──音楽フェスの文化的価値

音楽フェスのように多様なアーティストが出演する音楽イベントは、普段は断絶しているジャンルやコミュニティが交わる“交差点”のような側面がある。

アーティスト側にとって音楽フェスとは、ライブパフォーマンスを通じ既存のファン層を楽しませるだけでなく、新規リスナーを開拓するチャンスでもある。そしてリスナー側にとっても、それまで知らなかったアーティストや楽曲と出会える──つまり音楽をディグ(dig)れる場でもある。

音楽フェスの文化的価値は、単なる出演陣の豪華さだけでなく、そういったジャンル/コミュニティの越境性にこそある。

そういった背景もあり、主催者側も音楽フェス、ひいては音楽シーン全体をより盛り上げるため、それまで音楽フェスに出演していなかったアーティストをブッキングし、新たな層を呼び込もうと試みている。

“推し”以外には興味がない──推し活全盛期における音楽フェスの課題

かつて、音楽フェスの醍醐味は、複数の異なる文脈や背景を持ったアーティストのライブを一度に観られることだった。

しかし、コロナ禍を挟んだことや推し活ブームの全盛もあってか、近年は目当てのアーティスト以外には興味を持たない(“推し”以外には興味を持てない)フェス参加者も増加。旧来のフェスの価値観が揺るがされている。

そういった参加者は、目当てのアーティストをできるだけ近くで観るために、その前のアーティストのパフォーマンス時からフロアの前方を陣取り、興味なさげに微動だにしないことがある。

そのような地蔵行為は、マナー違反だと常に物議を醸している。また、そういった軋轢を生まないように、ブッキングやタイムテーブルを調整する主催者側の手腕も問われている。

星街すいせいさんのようなVTuber/Vシンガーが、こういった他ジャンルのアーティストも出演する音楽フェスに出演した事例はまだ少ない。それ故に、今回星街すいせいさんが苦言を呈する事態にならざるを得なくなってしまったとも考えられる。

星街すいせい、フェスでの基本的な作法について啓蒙

星街すいせいさんは配信の中で、今後同じような問題が起きないよう、スタンディングライブに不慣れな層に向け、フェスでの基本的な作法についても言及。

手荷物は最小限にし、大きな荷物や痛バッグはスタンディングエリアに持ち込まずロッカーに預けるのが、トラブル回避のセオリーであると説明した。

一方で、ライブ中に観客が一緒に歌うのはマナー違反かについては、「人それぞれ」「ケースバイケース」だと表明。アーティスト側が煽る場合もため、すべてを明確なルールで縛ることはできないと指摘している。

結論として、細かいルールで縛るのではなく「その場のノリや空気を読むこと」「他人に寛容になること」、そして何より「他のアーティストへのリスペクトを持ち、つまらなそうにしないこと」が最も重要だと呼びかけている。

なお、今回の一件を踏まえ、星街すいせいさんは今後のライブで、(星街すいせいさん自身を含めた)出演者が「今日も可愛い」コールを促した場合以外での「今日も可愛い」コールを禁止する意向を示している(外部リンク)。