佐渡島民のソウルフード「いごねり」。いご草100%の佐渡の味づくりを俳優・工藤阿須加さんが体験!【通いたくなる島、佐渡】

佐渡の郷土食として古くから愛されているいごねりを専門に製造する早助屋さんの前で。
新潟・北西部の日本海に浮かび、特別天然記念物のトキの生息地やかつての金銀山で知られる佐渡島。一周約280kmと小さな島は、対馬海流の影響により冬の平均気温は本州より1〜2度暖かく、夏は本州より1〜2度涼しいなど、一年を通して過ごしやすい場所でもあります。
そんな佐渡に残る原風景や独自の文化に触れるべく、映画『ゴールデンカムイ』で演じた月島 基の故郷として縁のある俳優・工藤阿須加さんとともに聖地巡礼の旅に訪れました。
宿根木を巡り、はんぎりを体験した工藤さん。今度は作品とも関わりの深い、佐渡島民のソウルフードでもあるいごねりづくりを体験しました。
「いご草ちゃん」の由来にもなったいご草を使った「いごねり」とは?

佐渡島ではあご出汁めんつゆでかけそばのように食べる地域もあるのだそう。海藻100%のいごねりはまさに海の恵み。早助屋さんのメイン商品「巻いごねり」は2本入りで237円。いごねり直送便から購入できる。
「いごねり」と聞いてピンとくる人はなかなかの佐渡島通かもしれません。それもそのはず、いごねりは日本海側でしか採れないいご草を使った佐渡の郷土料理であり、ソウルフード。冷凍も出来ず、熱もダメ。冷蔵流通がマストで、しかも紫外線に弱く、スーパーの蛍光灯でも変色して白くなってしまうというデリケートな食品がゆえ、佐渡島以外ではなかなかお目にかかれない逸品なのです。
もちろん、工藤さんも初体験。佐渡の郷土の味をいただくだけでなく、今回は特別にいごねりを専門に製造する老舗早助屋さんでいごねりづくりも体験させていただきます。

原料として使用されるいご草。

倉庫にはギッシリといご草が。
今回、いごねりづくりを指導してくれるのは四代目の山内三信さん。案内され、早助屋に足を踏み入れると早速フワッと磯の香りが漂います。
いごねりの原料はいご草という昆布やホンダワラなどの大型海藻に着生する海藻の一種。そのゴワゴワとした見た目は確かに髪の毛のよう。月島軍曹の想い人だった「いご草ちゃん」の由来になるのも頷けます。
7月中旬から8月中旬、お盆あたりまで採れる海藻で、日本海側に広く生育していますが、早助屋では佐渡島産のものだけを使用しているのだそう。元々は福岡で食べられていた「おきゅうと」が北前船の影響で佐渡に伝わったのではないかと言われています。
生息地や採れる年によって味わいや食感が異なるので、5~6地域のいご草を配合して早助屋らしい味わいを保っているのだといいます。この配合がいごねりの出来の決め手。シーズンの初めには何度も何度も出来を確認し、割合を決めるのだそう。
「そんなにデリケートなんですね。でもよく考えてみれば海藻だって生物、僕も普段農業をしていますが、野菜も土地や時期によって味わいが変わる。それと同じことなんでしょうね」(工藤さん)
ゴワゴワだった海藻が、みるみるうちにトロトロに

海藻を煮込む。昔は大鍋で煮込んでいたが、今は餡練器を使用している。
いごねりの原料はいご草100%。天草を原材料とするトコロテンのつくり方に似ていて、海藻を煮て溶かし、その時に発生する寒天質を利用して固めてつくります。
1回の煮炊きには乾燥したいご草を4キロ使用。そこから出来上がるいごねりは60キロほどになります。沸騰させグツグツ煮込んでいると、あのゴワゴワだったいご草がトロトロに。思わず工藤さんも驚きの声を上げます。こげないようにヘラで丁寧にかき混ぜながら、およそ1時間。煮込みを終えたら裏ごしし、冷やして成型していきます。

プラスチックの板に固まり切る前のいごねりを流し、成型していく。

職人さんはササッとやっているように見えるが、厚さの調整や仕上がりの綺麗さなどは一朝一夕には真似できない。
早助屋さんがいごねりづくりを始めたのは1950年頃。それまで佐渡のお家では、鍋とこたつの板などを利用して自家製でそれぞれつくっていたのだそう。早助屋さんも、最初のころは大鍋と漆の木の板を使っていて、1970年代におおよそ今のつくり方が確立したのだとか。
また、昔は冷蔵庫や冷房などの設備がなかったため、20度以下でないと凝固しないいごねりは夏の製造はできなかったのだといいます。いご草の収穫後、稲刈りを終え田植えが始まるぐらいまでの間に製造しており、今でも年配の方は冬の風物詩だと思っている方が多いのです。
いごねりづくりの仕上げに挑戦!

仕上げに挑戦!
後はいごねりを商品の形に仕上げる工程。早助屋のいごねりは綺麗な長方形の商品がクルクルッと巻かれ、筒状になった形で販売されています。その最後の仕上げの部分に挑戦です。
1.いごねりに少し残っている不純物を取り除く
2.いごねりの長方形の短辺をちょうどいいサイズに揃える
3.クルクルッと巻き商品の形に仕上げる(重さが60gなら大成功!)
仕上げはこの3工程。一見簡単そうに見えますが、適切なサイズに合わせ綺麗な見た目にするのは簡単ではありません。

丸めるために端っこをピンセットでつまむだけでも難しい。

このサイズだな、というところでピンセットで切り取る。

60gから4gショート。一見成功に見えてもこれでは商品として流通させることはできないのだ。
四代目の山内さんは見事な速さでこなしていきますが、慣れていない人がやるとそうは簡単に行きません。特に難しいのはサイズの調整。1本60gが早助屋のいごねりの規格。工藤さんも挑戦しますが、少なかったり多すぎたり。慎重にやりすぎると「いごねりが熱を持ってしまうからもっと速くやった方がいいよ!」と指導が。思わず工藤さんも「難しい! これはスピードと正確さが問われますね」と悔しがります。

最後はピッタリ大成功。山内さんも拍手で祝ってくれた。

自分でつくったいごねりの味はまたひとしお。
何度も挑戦を繰り返し、最後は無事に大成功。自作のいごねりをいただきました。
「見た目の印象からこんにゃくのような感じなのかなと思っていましたが、全然食感が違いますね。柔らかくて食べやすくてスルスルと入っていきます。そこに海藻の風味がフワッと広がって。元々海藻自体好きなので、これはたまらないですね。いくらでも食べれちゃいそう」(工藤さん)
佐渡のソウルフードに舌鼓を打つ工藤さん。しかし、昨今の気候変動の影響もあり、佐渡の海にも少しずつ変化が見られると山内さんは言います。
「かつては佐渡の名物だった飛魚や鰤が今では全然取れなくなったという話を聞いて驚きました。海の温度が少し変わるだけで環境が全然変わってしまうんですね。
おいしいいごねりがなくならないで欲しいというのはもちろん、古くから続いてきた文化や風習がなくなることにもつながりかねない。いつまでもこの豊かな佐渡の文化が続いていってくれるよう都会に住む僕たち一人ひとりも日々の生活を考えなきゃいけないですね」(工藤さん)
工藤阿須加(くどう・あすか)
1991年8月1日生まれ。埼玉県出身。ドラマ『理想の息子』(2012)で俳優デビュー。映画『ちょっと今から仕事やめてくる』(2017)、映画『ハケンアニメ!』(2022)、Netflixシリーズ『御手洗家、炎上する』(2023) 。舞台『シラの恋文』(2023~2024)では初舞台に挑戦した。2021年より山梨県北杜市で農業を始める。現在、NTV「有吉ゼミ」内コーナー「工藤阿須加の楽しい農園生活」、BS朝日「工藤阿須加が行く 農業始めちゃいました」に出演し、自身でも農業について学ぶ。食の問題について精力的に発信。現在公開中の映画『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃篇』では、月島 基役を好演。
早助屋
所在地 新潟県佐渡市沢根炭屋町37
https://igoneri.com/
※2024年11月に取材した内容を記事にしています。