埼玉県南部に広がるアフリカ人・コミュニティー。レアな料理の数々を食べ歩く!

この地域の東武スカイツリーライン沿い、実はアフリカの人々が多い。レストランや食材店も10軒以上。

日本ではきわめてレアな料理の数々を、アフリカ人たちとつきあいの深い比呂啓さんと食べ歩いてみた。

取材・文=室橋裕和(TOP写真・左) 案内人=比呂 啓(同・右)

カメルーン料理のキモは「出汁」だった『DELICE INTERCONTINENTAL RESTAURANT AND BAR』【蒲生】

カメルーン料理のキモは「出汁」だった『DELICE INTERCONTINENTAL RESTAURANT AND BAR』【蒲生】, リベリア×フィリピン夫妻が営むアフリカンスーパー『T.E.D.S International Food Store Soka Saitama』【草加】, ガーナ料理の決め手は旨辛調味料「シト」!『Amazing Grace』【新田】, いかにしてコミュニティーが形成されていったのか, 明るく元気なパワーの源、アフリカ料理の魅力とは?

「カメルーンはサッカーだけじゃないよ!」。

カメルーン料理のキモは「出汁」だった『DELICE INTERCONTINENTAL RESTAURANT AND BAR』【蒲生】, リベリア×フィリピン夫妻が営むアフリカンスーパー『T.E.D.S International Food Store Soka Saitama』【草加】, ガーナ料理の決め手は旨辛調味料「シト」!『Amazing Grace』【新田】, いかにしてコミュニティーが形成されていったのか, 明るく元気なパワーの源、アフリカ料理の魅力とは?

ンドレ1500円はビターリーフとピーナッツなどの炒め煮。揚げバナナと食べよう。

10年以上、日本各地のアフリカ料理店で腕を振るってきたティフ・ジャネットさんが2025年5月にオープン。比呂さんは「西アフリカ共通ですが、カメルーンも出汁を取って旨味を出す料理が多い。乾燥させたナマズや、ザリガニの粉と一緒に煮込んだり。それにデッカい肉や、フフ(キャッサバ、ヤムイモなどでつくる餅のような主食)と食べるガッツリさが魅力です」と熱く語る。

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ジャネットさん(右)と妹さん。

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アチュ2500円はなんと石灰とパームオイルなどのスープ。牛肉もどっさり。

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牛肉とザリガニ煮込みエルゥ1500円。

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パームワインとギネスビールを混ぜて飲む。

カメルーン

アフリカ中西部の国で、植民地支配の経緯からフランス語圏と英語圏が併存している。ジャネットさんは英語圏出身。日本には1774人が住むが、埼玉県は646人と最多。

DELICE INTERCONTINENTAL RESTAURANT AND BAR(デリスインターコンチネンタルレストランアンドバー) 住所:埼玉県越谷市蒲生寿町14-17/営業時間:11:00~23:00/定休日:無/アクセス:東武鉄道東武スカイツリーライン蒲生駅から徒歩6分

リベリア×フィリピン夫妻が営むアフリカンスーパー『T.E.D.S International Food Store Soka Saitama』【草加】

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「アフリカ料理を作りたい人はぜひ来てね!」。

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リベリアだけでなく西部を中心にアフリカ各地の調味料やスパイスが並ぶ。用途が分からないものは聞いてみよう。

トビアス・ウィーフォーさんと妻のエヴァさんは電子機器や洗濯機、自転車などの中古品をアフリカに輸出する貿易業を営んでいたが、コロナ禍によって難しくなり経験を生かして輸入と小売りに転換。「リベリアはアメリカから帰還した奴隷たちがつくった国だから、いまもアメリカの影響が強いんだ。うちの商品も香水や化粧品はアメリカ製が多いよ!」と、トビアスさん。

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隣にリベリア料理レストランも2026年2月オープン!

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ココヤムなどからつくられたリベリア製のフフ粉。

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リベリア直輸入のパームオイルは大胆な売られ方。

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シアという木の実が原料のアフリカンブラックソープ。

リベリア共和国

アフリカではエチオピアに次いで古い西部の国だが、世界でも特に経済的に厳しいことでも知られる。日本に住むリベリア人はわずか127人で、埼玉県が40人と最多。

T.E.D.S International Food Store Soka Saitama(テッズ インターナショナル フードストア そうか さいたま) 住所:埼玉県草加市氷川町90-15 1F/営業時間:10:00~21:00/定休日:無/アクセス:東武鉄道東武スカイツリーライン草加駅から徒歩7分

ガーナ料理の決め手は旨辛調味料「シト」!『Amazing Grace』【新田】

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ケンケと鯖セット1500円。シトとトマトソースがつく。

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ワラチェ1500円は米と豆の赤飯を魚やシト、キャッサバ粉などと食べる。

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来日20年以上のフェリシアさん。「シトは4時間かけてじっくり煮込みます」。

「ガーナではどの家でもお母さんが作る。白いごはんにのっけてもおいしいよ」とフェリシア・ケセワさんが話すのは、シトというガーナ名物の国民的調味料。エビや煮干し、ニンニク、チリペッパーなどを煮込んだものだ。「それとケンケですね」と比呂さん。こちらはトウモロコシ粉を発酵させて蒸した主食。酸味が強いが、魚とよく合いなんともクセになる味わいだ。

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2階に食材店も併設。ガーナをはじめアフリカ各地のものが揃う。ガーナ名産チョコレートが売っていることも。看板商品のケンケ550円。

ガーナ

アフリカ西部では比較的安定した国。日本はカカオ豆の輸入の8割をガーナに依存している。在日ガーナ人は3270人で、埼玉県が669人と最多。

Amazing Grace(アメイジンググレイス) 住所:埼玉県草加市金明町351-6-104/営業時間:12:00~23:00/定休日:火/アクセス:東武鉄道東武スカイツリーライン新田駅から徒歩5分

いかにしてコミュニティーが形成されていったのか

「オベントー」「OーBENTO」「お弁当」。みんなして口を揃えるのである。「このあたりに住んでいるアフリカの人たちって、どんな仕事をしているの?」と尋ねたところ、カメルーンのジャネットさんもリベリアのトビアスさんもガーナのフェリシアさんも「スーパーマーケットやコンビニで売られている、弁当や総菜の工場」が多いのだと話す。

「あとはパン工場や宅配」(ジャネットさん)、「タオル工場、ホテルのベッドメイク」(トビアスさん)、「建設現場」(フェリシアさん)。いずれも日本人があまり就かなくなった、しかし社会には必要な仕事だ。こうした工場や職場がたくさんあることで、埼玉県東南部にはアフリカ人が集まってくるようになった。

「でも、20年くらい前はこのへん、ノーアフリカ。川口が多かったよ」と、日本での暮らしが長いフェリシアさんは思い返す。川口はもともと、製造業の一大拠点。しかし次第に日本人は現場労働を敬遠するようになり、バブル期あたりから人手不足のため外国人労働者に頼ってきた地域だ。中東・南アジアの人々が中心だったが、アフリカの人たちも交じっていたようだ。

やがて、コミュニティーは東に移っていく。日本各地の「異国飯」を食べ歩き、アフリカ人たちとも親交の深い映像ディレクターの比呂啓さんは言う。

「越谷の大袋にナイジェリアの食材店がかなり昔からあるんですが、あの人たちがパイオニアだと思うんですよね」

一つキーとなる店や人物が現れると、そこを核にコミュニティーが形成されていくのは、どの国でも同様だ。それはフェリシアさんが語ったひと言に集約されているようにも思う。

「別々は寂しい。一緒は大丈夫」

こうして日本に仕事を求める人、留学生などが、越谷周辺に住み始める。2000年代初めのことだ。ナイジェリア人が多かったが、ガーナ人やカメルーン人も増えていく。比呂さんは「04年だと思うんですが、南桜井にはすでにカメルーンのレストランがあって、コミュニティーになってましたね」と言う。

一気に増えたのは「ここ5年くらいかな」と、フェリシアさん。背景にあるのは日本の少子高齢化による労働力不足と、そこを外国人で補おうという国の方針だ。アフリカの厳しい経済事情もある。少しでも稼ごうとツテを頼って日本に来た人が大半だ。そして、エッセンシャルワーカーとして、日本人からはあまり見えない場所で働いている。また、本国の政情不安を理由に、難民として申し出る人も多い。

明るく元気なパワーの源、アフリカ料理の魅力とは?

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ピーナッツスープ&フフ1500円。『Amazing Grace』にて。

「フフを手でつかんで食べていると“メシとは、かくあるべき”みたいな感じがするんですよ」

比呂さんは熱弁する。

「アフリカ料理は肉もでっかい。それも手づかみにして、フフと一緒に食べると、これこそメシだって納得いくんです」

また、紹介したカメルーンとガーナはいずれも出汁をベースにした旨味文化圏で、意外かもしれないが日本人の味覚に共通する部分もある。

「それに、たとえばガーナだったら『ケンケは魚と食べるべし』というような主食とメインの組み合わせへのこだわりが強いのが面白い」

加えて、なんといってもアフリカの人々の底抜けな明るさと笑顔だろう。ジャネットさんなんて取材中ずっと爆笑していたくらいだ。こっちまで元気にさせてくれるアフリカンパワーを、ぜひ体感しに行ってほしい。

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西アフリカの揚げ菓子その名も「チンチン」はザクッとした食感のクッキーという感じ。こちらが『DELICE』で、

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こちらが『Amazing Grace』のもの。

撮影=井原淳一

『散歩の達人』2026年3月号より

室橋裕和

ライター

1974年生まれ。新大久保在住。週刊誌記者を経てタイに移住。現地発の日本語情報誌に在籍し、10年にわたりタイや周辺国を取材する。帰国後はアジア専門のライター、編集者として活動。おもな著書は『ルポ新大久保』(辰巳出版)、『日本の異国』(晶文社)、『カレー移民の謎』(集英社新書)。