最高18億円?「億超え」車両も多数のクラシックカー展示会「オートモビルカウンシル」は文化を作れるか?
いま日本では、若い人が旧車におおいなる興味をもったり、富裕層が高価な車両を買ったりと、新車に加えてクラシックカーが人気だ。
【写真】高額車両が目白押し!オートモビルカウンシル2026で見た名車たち
そんな中、「オートモビルカウンシル2026」というクラシックカーのイベントが、2026年4月10日から12日にかけて、千葉・幕張メッセで開催された。
このイベントの特徴は、かなりめずらしい海外のクルマの展示と、旧車の展示即売が同時に行われること。
会場規模を大きくしながら、26年で11周年を迎えた事実から、一般の支持を集めていることがうかがわれる。
ポルシェが「911ターボS」、マセラティが「GT2ストラダーレ」と、新車をお披露目したのもユニークな点だ。

ポルシェ911ターボSは523kWの3.6リッターエンジン搭載で3635万円(筆者撮影)
「富裕層が多く、マニアック(な嗜好の)客層に合わせて」展示モデルを選んだ、とはポルシェジャパンの広報担当者の説明。
同社では、同じブースにオレンジ色が目をひく1976年型の「911」も並べ、ともに来場者の興味を強く惹いていたようだ。
300万円~18億円までの名車が並ぶ
展示の中心は旧車。「1,800,000,000円(18億円)」の値札がついた64年型ポルシェ「904-8」から、300万円台のサーブ「900ターボ」までと、幅広い。
77年型のマツダ「サバンナクーペGT」が1080万円、さらに、72年型の日産「スカイラインGT-R」が3800万円。こういうのには驚いたが、いまはフツウになってきているのだろうか。

RX-3とも呼ばれたマツダ・サバンナクーペ(筆者撮影)
個人的には、ちょっとマニアックだけれど、63年型フィアット「アバルト850TC」や、50年型「アバルト204A」に惹かれたけれど、前者は億超え。
このように“億超え”のプライスタグがついたクルマは少なくなく、幕張メッセの会場を回っていると、感覚がおかしくなってくる。
「オレも1億6500万円のチシタリアなら買えるかな?」なんていう具合。もちろん買えないが……。
初日に3480万円のプライスとともに置かれていたアストンマーティン「ラゴンダ」シリーズ4は、翌日には「売約済」となっていた。このクルマも魅力的だった。
ウェッジシェイプのラゴンダ(76~90年)は、ウィリアム・タウンズのデザインで76年に登場した全長5.3mの4ドアセダン。

このウェッジシェイプのラゴンダの前にDBSベースの4ドア(74〜75年)がありそれはシリーズ1と呼ばれた(筆者撮影)
タウンズは、オーソドクス(だけど魅力的)なデザインのスポーツカー「DBS」も手がけたが、そののち独自のデザインセオリーを展開。はたしてラゴンダは、超がつくほど直線的なラインで構成されたデザインとなった。
当時には「オリガミ(フォルデッドペーパー)デザイン」とも呼ばれた。
日本にもこんなきれいな個体があったのかと、私は会場で感心。こういうクルマにノスタルジアを刺激されるのだ。
オートモビルカウンシル開催の意図
オートモビルカウンシル共同代表の関雅文氏がかつて「買おうと思えば買えちゃう自動車博物館」と、「カーセンサー」のオンラインインタビューで語っていたのが印象的だった。
「出展者(車)で気にかけているのは、やはり質です」
そう語るのは、やはりオートモビルカウンシル共同代表であり、株式会社カーグラフィック代表の加藤哲也氏。
「クルマのショーですが、ヒストリックカーを販売する場でもあります。クルマの販売業者はとかく色眼鏡で見られることもありますが、(消費者との間の)垣根を低くしたいという思いも強く、だからこそプライスをASKではなく、ちゃんと掲げて欲しい旨を出展者に伝えています」

チシタリア204をベースにカルロ・アバルトが仕上げ、自分のレースチームで走らせたアバルト204A(
加藤氏の言葉にある「ASK」とは、販売店のオンラインサイトで見かけるもの。日本語にすると「応談」となるだろうか。
それがクルマを買うときの心理的抵抗感に結びつくことへの懸念を払拭して、いいクルマが欲しい買い主のもとへ渡るための橋渡しになることを目指したという。
「我々はクルマが売れたからといって、コミッションをいただくわけではありません」と加藤氏。
「(場を提供しているだけなので)万一、購入後にトラブルがあっても、責任を負う立場にはありませんが、それでもイベントに対する信用度には響く可能性があり、ましてや我々はCG(カーグラフィック)の看板を背負ってるだけにメディアを傷つけることも考えられる」ことを常に懸念しているのだそう。
“掘り出しもの”を探し当てる楽しみ
旧車を買う楽しみは、かつて欲しかったクルマを自分のものにできること。偶然、思いもよらないクルマを見つける出会いもある。
もうひとつの楽しみは、“掘り出しもの”を探し当てることだろう。
程度のいいクルマを、一般的な相場より低めの価格で見つけたときのよろこびが、クルマ好きを旧車に向かわせるのだ。
ただし、失敗すると悲惨なことになりかねない。フィルムカメラやレコードなどと同じ目線で旧車を好む若者を相手にしたビジネスには、警鐘を鳴らす専門家もいる。

GAZOO RacingではAE86と呼ばれるレビン/トレノの補修用パーツのリプロダクションも始めた(筆者撮影)
「一見、きれいな外観で、価格も抑えめの車両を見つけて、飛びつくように買ったものの、調子が悪いと整備工場にもちこんだら、シャシーがサビで腐ってた……、なんて話も聞きます」
そういう目に遭いたくない人は、多少値が張っても、のちに修理にかける手間とコストをてんびんにかけて、オートモビルカウンシルに出展されたような旧車を買うのがいいのだろう。
先に触れたとおり、ポルシェジャパンやマセラティ ジャパンは新車を展示。一方、ホンダや三菱自動車が、これから出る新車とのつながりを強調していたのも興味ぶかかった。
三菱自動車は、「パジェロ1」と名付けていた試作車からパリ・ダカールラリー優勝車にいたるまで、歴代パジェロを並べた。

「ジープパジェロ」とも呼ばれた1973年発表の第1号車(筆者撮影)
そのうえで、岸浦恵介代表執行役社長兼COOが記者会見を行い「今年の新型SUVに期待してください」と述べた。おそらくこれが、噂されている新型パジェロなのだろう。
ホンダは、85年の「シティターボⅡ」と、その近くに「5月に発売予定」というスポーティでコンパクトなEV「Super-ONE」を置いた。

80年代にホンダが手がけたホットハッチ(高性能ハッチバック)たるシティターボⅡと隣にモトコンポ(
Super-ONEの車体側面には、シティターボⅡの愛称的に使われていた「BULLDOG」なる文字が入っていたのも、来場者にウケていた。正式には、この愛称は使われないとのことだけれど。
真の自動車先進国になるために
「キッカケは『日本にも成熟した自動車文化を根づかせたい』と思ったことに尽きます。生産では世界一でも文化面は、まだまだプア。真の先進国になるためにはインダストリアル、カルチャー両面が必要だと考えた次第です」
加藤氏はそう語り、ホンダや三菱、それにトヨタなどの過去と現在を時間軸でつなげた“垂直”展示もおおいにアリとした。クルマの魅力は多角的なのだ。