【不登校】「深刻化しにくい国」は何が違う?

不登校が深刻化しにくい「もうひとつの理由」, 「ちょっと見てみよう」ができる環境, 「学力によって学年を調整」受け入れる側の柔軟性, 「既存の学校教育に適合できない子」の救いになりうる

なぜマレーシアが「リスタートの場」として注目を集めているのか、社会文化的側面に注目し、現地のリアルな声からその理由をひもといていく(写真:tomwang/PIXTA)

みずもと氏は2022年に家族でマレーシアに移住。2人の子どもはインターナショナルスクール(インター校)に通い始めて4年目を迎えた。
数多くの日本人教育移住者と交流する中で、「日本では不登校だったがマレーシアに来て学校に行けるようになった」という声を耳にする機会があり、日本とは異なる教育環境・社会文化が子どもに変化をもたらすケースがあることを実感している。
今回の記事では、なぜマレーシアが「リスタートの場」として注目を集めているのか、社会文化的側面に注目し、現地のリアルな声からその理由をひもといていく。

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【不登校】「再スタート」で海外へ移住、現地のリアルな実情「学校に通い続けるプレッシャー」が日本とは全然違う?

不登校が深刻化しにくい「もうひとつの理由」, 「ちょっと見てみよう」ができる環境, 「学力によって学年を調整」受け入れる側の柔軟性, 「既存の学校教育に適合できない子」の救いになりうる

2026年2月、マレーシアのショッピングモールにて。中華系の旧正月(春節)を祝う赤い装飾(写真左)が終了すると、即座にイスラム教の断食明け祝祭(ハリラヤ)を象徴する緑の装飾(写真右)へと切り替わる。多民族・多文化を象徴する光景(筆者撮影)

不登校が深刻化しにくい「もうひとつの理由」

マレーシアで「不登校」という状態が深刻化しにくい背景について、前回の記事では「教育制度」に着目して整理しました。

【写真で見る】不登校の「再スタート」で海外へ移住、現地のリアルな様子

「在籍」を重視する日本の制度設計と異なり、マレーシアやインター校では「資格取得」を軸とした制度設計であるため、学校に通うことそのものが目的化しづらいという点です。

そのうえで、「不登校」を取り巻く状況は、制度だけで説明できるものではありません。

「転校」や「ホームスクーリング」といった選択が、前向きな選択として受け止められるかどうかは、「社会全体の価値観」にも大きく左右されます。

では、マレーシアでは「学校に行かない」という選択は、どのように受け止められているのでしょうか。

「子どもにもっと合っている学校があるなら、なぜ転校しないの?」

お子さんをインター校に通わせているマレーシア人ご家族と「日本では転校がなかなか難しいイメージがある」と話した時に言われた言葉です。

もちろん、物理的、経済的に転校が難しい場合もあるでしょう。一口にマレーシア人といっても考え方は多様で、インター校にご子息を通わせるようなご家庭は、比較的柔軟な考え方をしているのかもしれません。

そのうえで、マレーシア人と日本人の「環境を変えること」に対するイメージは異なっているように感じます。

「ちょっと見てみよう」ができる環境

マレーシアは多民族国家です。

一口に公立小学校といっても、言語別に学校が分かれており(マレー語/中国語(マンダリン)/タミル語)、どの学校に通うかを保護者が選択できます。

不登校が深刻化しにくい「もうひとつの理由」, 「ちょっと見てみよう」ができる環境, 「学力によって学年を調整」受け入れる側の柔軟性, 「既存の学校教育に適合できない子」の救いになりうる

ペナンの国民型中国語小学校(筆者撮影)

英語習得を優先して低学年時は「インター校」へ通い、その後「公立校」へ移る子もいれば、その逆のルートを辿る子もいます。

選択肢はほかにも「私立学校」「宗教学校」「ホームスクーリング」と多岐にわたり、「このルートこそが正解」という「絶対解」が、制度的に生まれにくい状況にあります。

公立小学校では言語別に学校が分かれていますが、公立中学校から教授言語はマレー語が基本です。あるインド系の女学生は、タミル語小学校から公立中学校に入学したものの、マレー語の理解が追いつかず、1年間補講クラスに在籍したと教えてくれました。

また、高い学力水準と中国語の習得を期待して、あえて中国語小学校を選択するマレー系の家庭も近年増加傾向にあると聞きます。

公立の学校を選ぶにしても、都度、「自分たちはどうするか」を問われる文化的背景があり、選択を可能にする制度がある。これが「環境を変えること」への抵抗感が小さくなる理由のひとつなのかもしれません。

さらに、「教育の選択肢の多さ」も、柔軟な対応を可能にする要因のひとつです。

マレーシア国内のインター校は現在200校を超えると言われており、毎週のようにどこかの学校でオープンデー(入学説明会)が開催されています。

わが家も転校を具体的に考えていない時期にマレーシア人の友人から「気になっている学校の説明会に行くから一緒にどう?」と誘われ、レジャー感覚で参加したことがありました。

この「ちょっと見てみよう」ができる環境こそ、ひとつの学校に固執せず、常に「最適解」を模索できるマレーシアという国の強みなのでしょう。

不登校が深刻化しにくい「もうひとつの理由」, 「ちょっと見てみよう」ができる環境, 「学力によって学年を調整」受け入れる側の柔軟性, 「既存の学校教育に適合できない子」の救いになりうる

積極的に見学を受け入れているインター校も多い。この学校では2日間のトライアルも提供している(筆者撮影)

「学力によって学年を調整」受け入れる側の柔軟性

また、日本の場合は「生まれ年」で学年が固定されますが、特にインター校の場合は「生まれ年」をベースにお子さんの学力によって比較的柔軟に学年を調整する印象です。

あるケンブリッジ式(英国式)インター校で日本の小学6年生に当たる生徒に話を聞いたところ、クラスには2歳年上の同級生がいるそうです。日本ですと、年齢が違う同級生がいるというのはある種「好奇の目」を向けられそうですが、子どもたちは「そういうもの」として自然に受け止めています。

別のケンブリッジ式インター校では、生徒の学力に合わせ、本来なら5年かかるカリキュラムを4年に短縮し、卒業試験終了から大学入学までに1年間「子どもの自由時間」を設けていることを売りにしていました。

「親も1年分学費が節約できてメリットがあるだろう」とアピールする学校スタッフを見て、同じカリキュラムを採用しているインター校でも、こうも違うのかと驚きました。

もちろん、学校の方針にもよるので一概には言えませんが、このような「受け入れる側の柔軟性」も、お子さんの個性や各ご家庭の要望にマッチしやすく、転校やホームスクーリングからの移行に伴う心理的・実務的な摩擦を軽減しているのではないでしょうか。

不登校が深刻化しにくい「もうひとつの理由」, 「ちょっと見てみよう」ができる環境, 「学力によって学年を調整」受け入れる側の柔軟性, 「既存の学校教育に適合できない子」の救いになりうる

このケンブリッジ式インター校では、ゲーム技術だけでなく、チームワークや規律、タイムマネジメント能力の育成を目的とし「eスポーツ」を正式な教育プログラムとして導入(写真は専用施設「eスポーツハブ」:筆者撮影)

「既存の学校教育に適合できない子」の救いになりうる

そのうえで、「マレーシアのインター校に通えば上手くいく」「合わなければ転校すればいい」という単純な話ではありません。

あるご家庭ではマレーシアの生活環境にお子さんが馴染めず、予定より早い帰国を決意されました。また、「より英語を効率的に学ぶため」日本人が多いインター校から、日本人ゼロのインター校に転校した結果、学校に馴染めなかったお子さんの話も聞きます。

そもそも、学校で学ぶことがお子さんに合っているかどうかという議論もなされる必要があるでしょう。

ただ、その一方で、「教育の選択肢の多さに救われた」という話も多く聞きます。

ある日本人生徒は、英語がうまく話せないこともあり、通っていたインター校に馴染めなかったそうです。

引越しが難しかったため、家から通える別のインター校を探し、いくつか見学に行った中で一番雰囲気のいい学校へ転校、今では「学校が楽しい」と話しています。

「学校に行かないこと」が将来の不利益に直結しない制度だけでなく、このように環境を調整できる多様な選択肢があり、社会全体がそれを「問題視しない」という土壌は、既存の学校教育に適合できず苦しむ子どもたちにとって、救いとなりうるのかもしれません。

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【不登校】「再スタート」で海外へ移住、現地のリアルな実情「学校に通い続けるプレッシャー」が日本とは全然違う?