BYDに乗るとプライバシーがダダ漏れって本当なのか? 若きエンジニアに意地悪な質問をぶつけてみた!

 2025年10月にBYDのシーライオン7を購入した国沢光宏氏。塗装や足回りなどの検証を行ってきたが、今回は会話や映像、位置情報が抜かれているのではないか? という疑問をBYDのエンジニアにストレートにぶつけてみた。

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文:国沢 光宏/写真:ベストカーWeb編集部

センターコンソール下のSIMを抜けば位置情報は特定できなくなる!

センターコンソール下にあるSIMを抜けば位置情報はわからなくなる

 BYDについての記事を書くと、必ずや「情報を全部抜かれている」とか「突如暴走するかもしれない」みたいなことを言う人もいる。確かにシーライオン7はスマホに常時止まっている場所が表示され、クルマの状況までチェック可能。また、車内にマイクやカメラが付いているため、会話の内容をどこかに送ることだってできる。加えて車外のカメラもあるため、これまた心配という声もある。

 一方、今や日本車だって駐車位置や車輌の状況をクラウドに送っている。私の経験からすれば2011年の初代リーフから車輌に発信装置を積んでいた。MIRAIも車輌情報などスマホで確認可能。果たしてBYDに乗っていると、どのくらいの情報を抜かれてしまう可能性があるんだろうか? 

 そのあたりをBYDの技術トレーニングやOTAを担当しているBYD Auto Japanアフターセールス部サービス企画の山岸聖昂(やまぎし・さとあき)さんにジックリと話を聞いてみた。

不躾な質問に丁寧に答えていただいたBYD Auto Japanアフターセールス部サービス企画の担当部長・山岸聖昂さん

 国沢「まず車輌の位置ですが、中国側に知られていたりしますか?」

 山岸(以下敬称略)「車輌のクラウドサービスに使用している位置情報は日本のサーバーで管理しています。BYDでいうならば、BYDアプリの駐車位置確認機能に使用しています。ただし、これらの情報は、お客様の要望に応じて任意で許可して使用できるようになります。したがって、よく言われる中国側で直接チェックすることは難しいですね。車輌との交信はソフトバンクのキャリアを使っています。位置情報の開示権限はBYDではなく、通信会社(法令に基づく対応などにより)にあるので、通信会社が許可すれば、基地局との接続履歴から、おおよその車輌位置はわかります」

 国沢「居場所が特定できないようにする方法はありますか? 家族にすら知られるのを嫌がる人だっているかもしれません」

 山岸「どんなシチュエーションなのかわかりませんが、BYDアプリと呼ばれるスマートフォンアプリの位置情報へのアクセスを制限することで、居場所が分からないようにすることができます。つまり、物理的には通信を切れば良いので、通信SIMを抜けば位置情報を送れなくなります。位置情報がわからなくなることを家族の方が知ったら、逆にどこにいるんだと怪しまれるんじゃないですか(笑)」

 国沢「中国と関係ない話になりました。次は音声情報です。車内の会話はどうですか? 現状だとハイBYDと言えば音声入力が可能になるため音声入力に対し常時録音できるスタンバイ状態だと思われます」

 山岸「そうですね。音声アシスタンスは、ハイBYDというコマンド入力で起動するため、スタンバイ状態であることに間違いありません。ただ、BYDの車内で交わされる普通の会話をダラダラ録音していたら情報量が膨大になってしまうので、録音はしていません。」

BYDの車載音声アシスタントはアメリカのセレンス社製を使っていて、BYD以外にも採用実績は多い

 国沢「ハイBYDがスイッチになっているのと同じく、中国が入手したいという情報のキーワードを発したら反応するようにすることはできますか?」

 山岸「技術的には可能だと思いますが、BYDは対応していません。BYDでは、音声コマンドのユーザー体験品質を向上させるために、実行に失敗したケースのフィードバック機能があります。ちなみに車載音声アシスタントの音声エンジンは、アメリカのセレンス社製です」

 国沢「それを言い出したら音声入力機能を持つ中国製の携帯電話とか家電製品とかすべてできるかもしれませんね。私は我が国の国家機密に接していないため、そもそも何を聞かれても問題ないですけど(笑)」

車内と車外のカメラを採用するが、個人の特定にはつながらない

シーライオン7はAピラーに装着される小型カメラによるドライバーモニタリングシステムを標準装備

 国沢「続いてカメラについて聞きたいです」

 山岸「カメラは車内(Aピラー)と、外部(前後左右)に付いています。SEALION 7に搭載しているドライバーの眠気やよそ見を検知するカメラは赤外線カメラで、目の瞼の閉じている、黒目が左右によっているなど検知できますが、表情そのものや個人の特定をするレベルの解像度では見ていません。もちろんこれらのカメラ映像も録画していません。」

 国沢「車外カメラはどうでしょう?」

 山岸「車外カメラの情報は、基本的に送信対象ではありません。もちろん、記録もしていません。最近は、駐車中のイタズラや当て逃げの証拠保全のため、スマホなどに映像を送ってほしいというニーズが多いのも事実です。こうした機能は他社で採用されているので、いつかはBYDも、同じ機能は実現するかもしれません」

 国沢「原子力発電所や自衛隊の基地、米軍基地のような国家機密の区域に入るような時は気を付けないとダメですね」

 山岸「米軍基地ですか!? なかなか入れる場所でも機会のないかと思いますが、仮にそうした場所に入ったとしても、位置情報やカメラ映像が第三者に漏洩する心配はありません」

 国沢「暴走の危険性ついて聞きたいと思います。知らないうちにOTAによってアップデートされ、アクセル踏んだら全開になっているとか、走行中、突然ハンドル切れるようになっているとか、乗っ取られるとか……はどうでしょう?」

OTAでいろいろなアップグレードが可能だが、逆に不安という声はBYDにかぎらずあるものだ

 山岸「BYDが日本で販売するクルマは、走行中にOTAのアップデートができないようになっています。OTAは、駐車時のみ稼働します。これらはUN-R156という国際法規に基づくもので、BYDは欧米や日本製のクルマと同じセキュリティ対策が取られています。走行中に乗っ取られるという噂がよく聞かれますが、これも同じくUN-R155という国際法規によって、サイバーリスクに対する管理が徹底されています。そのため、第三者は、アクセル全開や急ハンドルに代表される制御領域には入れないようになっています。」

 国沢「でもアダプティブクルーズのハンドル制御を変えたり、加速の加減の変更もOTAでのアップデートで可能ですよね?」

 山岸「それは可能です。こうしたEVならではのユーザーメリットであるプログラムの改修は、きちんと国土交通省への申請・審査・実施許可を経て行っています。直近でも過大と言われていたシーライオン7のハンドル制御をOTAでマイルドにしています。」

 国沢「それを思い切り激しくしたら危険かもしれないですが、その場合、最初の何台かの事故でバレますね。日本で走っているBYDをすべて暴走させることは難しい」

 山岸「はい、さすがに無理ですね(笑)。いずれにしろ現状は日米欧のクルマと同じ基準やハード、ソフトになりますので、やれる範囲が限られています」

 国沢「確かに切りがありません。そもそも中国製の家電製品だって家にはたくさんある。そして、私は中国の国家転覆計画も持っていないし、我が国の機密も持ってない。もし仮に重要人物になったら、通信SIMを抜いて走ります。BYDユーザーの皆さんも本当に心配ならSIMを抜きましょう」

 今回のインタビューで疑問が氷解したわけではないが、山岸さんのような正直なエンジニアとなら、また話してみたいと思った。