タモリ「面白くない」論争にスリムクラブの救いの一枚、乙武氏は痛烈皮肉

お笑いコンビ・スリムクラブの真栄田賢(左)と内間政成

YouTuberのヒカルが放った「タモリは面白くない」発言がSNSで大きな波紋を広げつづけている。ネット上では「タモリの凄さを知らない世代」と「教養としてのタモリ派」が激しく対立。そんな中、お笑いコンビ・スリムクラブの2人が明かしたタモリとの秘話、そして作家・乙武洋匡氏が言及した伝説の「勧進帳(かんじんちょう)」が、知らない世代から、改めて脚光を浴びている。

乙武洋匡氏

逆子が治った?スリムクラブ内間が明かす「安産祈願」の奇跡

タモリ

SNSで3万5000以上の「いいね」を集めているのが、スリムクラブ・内間政成の投稿だ。2011年、内間の妻が妊娠30週で逆子と判明。不安な中で出演した『笑っていいとも!』で、タモリに安産祈願を依頼しようとしたが、放送時間の都合で叶わなかった。しかし、物語はそこで終わらなかった。

スリムクラブ内間の投稿:2011年、嫁は妊娠してました。 順調だったのですが、妊娠30週で逆子である事が判明しました。

そんな時に出演させてもらったのが、『笑っていいとも!』

『笑っていいとも!』といえば、タモリさん。

そして、そのタモリさんに安産祈願を書いて貰ったら、安産間違いなしと言われていました。

そこで、番組終了後にタモリさんにお願いしようとしたら、アフタートーク中のため実現出来ず。しょうがない。。

ところが、

タモリさんは僕の事を聞きつけて、後日、スタッフさんを通して僕の元に、安産祈願を書いた色紙を届けてくれたのです。涙

更に、

3日後に逆子が治りました。涙×鳥肌

改めてタモリさんに会った時に、

「ありがとうございました!お陰で逆子が治り安産でした!」と、お礼を伝えると、

タモリさんは何事もなかったかのように、

「だろ?」

この色紙には、タモリ独特のタッチで女性器を模したイラストが描かれていたという。ナンセンスの中に宿る圧倒的な「肯定」が、奇跡を引き寄せたのか。相方の真栄田賢も、当時のタモリのさりげないフォローについてこう振り返る。

スリムクラブ真栄田の投稿: あの人にも読んで欲しい。面白さって愛だよね。

ちなみに、その出演時にテレフォンショッキングでタモリさんにお土産を渡すやつがあって、少しでもウケたくて、僕は手作りの玉子焼きをラップに包んで持って行きました。

結果、スベリ気味の僕に、タモリさんが、「関東風?関西風?」と、フォローしてくれて持ち直してくれた事にも感謝です。

乙武洋匡氏が指摘する「中学生男子のようなムーブ」と最高傑作

こうした擁護の動きを俯瞰し、鋭い視点を提示したのが乙武洋匡氏だ。乙武氏は、タモリを安易にディスる風潮を「中学生男子」と切り捨て、タモリの真骨頂として2008年の赤塚不二夫さんの告別式における弔辞に言及した。

乙武洋匡氏の投稿: みんなタモリさんの面白さを本気で実証したいというより、「忖度なんかせずに大物をディスれる俺、かっけえ」という中学生男子みたいなムーブに胸焼けがして、「いや、タモリさん面白いよ」と反駁することで、それを胃薬にしてる気がする。

たしかに、赤塚不二夫さんの“勧進帳”弔辞は最高だったよね。

この弔辞は、タモリが手にしていた紙が実は「白紙」であり、約8分間にもわたる言葉を即興で紡ぎ出したという伝説のエピソードで知られる。

まさに、タモリという存在そのものが、赤塚氏の最高傑作であることを証明した瞬間だった。あまりにも有名なこの橋。知っている人も、知らなかった人も、この全文を読み返すだけで、タモリというお笑いや文化人という形容詞に収まらない傑物の存在感が伝わると思う。なので、全文を再録してみたい。

【全文再録】私も、あなたの数多くの作品の一つです」タモリが赤塚不二夫に捧げた「白紙の弔辞」

8月の末に、あなたの告別式に立ち会うとは、夢想だにしないことでした。

私たちの世代は、赤塚先生の作品に浸りきった世代です。あなたの作品は、僕らの精神の血肉となり、細胞の一つひとつに刻み込まれています。

あなたが世に送り出したキャラクターたちは、単なる漫画の登場人物ではありません。彼らは、不条理なこの世の中を笑い飛ばす、私たちの分身でもありました。バカボンのパパ、イヤミ、チビ太……。彼らの叫びは、私たちの魂の叫びでもありました。

あなたの死は、一つの時代の終わりを告げるものではありません。あなたのまいた笑いの種は、今もなお、日本中のいたるところで芽吹き、花を咲かせています。

私は、あなたの数多くの作品の中でも、特にお会いしてからのあなた自身、赤塚不二夫という存在そのものが、最大の傑作だったのではないかと思っています。

あなたの周りには、常に笑いが絶えませんでした。あなたは、自らを笑いの対象にすることで、周囲の人々を幸せにしました。それは、並大抵の覚悟でできることではありません。

あなたの生き様は、「これでいいのだ」という言葉に集約されています。それは、この不確かな世界において、私たちが自分自身を肯定し、生きていくための最高の知恵であり、勇気でもありました。

今、あなたの前で、私は一つの確信を持っています。

それは、あなたがいない世界でも、私たちは笑い続けるだろうということです。なぜなら、あなたの笑いは、私たちの心の中に永遠に生き続けるからです。

最後になりますが、あなたは、私に多くのことを教えてくれました。

芸とは何か、笑いとは何か、そして、人間としてどう生きるべきか。

あなたの教えを胸に、私はこれからも歩んでいきます。

あなたの残した膨大な作品群、そして、その自由な精神は、これからも多くの人々を救い、勇気づけていくことでしょう。

私も、あなたの数多くの作品の一つです。 ありがとうございました。

平成20年8月7日

森田一義

「面白さ」の定義が、賞レースでコスパを極限に追及したギャグの効率や採点の数字に置き換わる現代。誰かの不安を「だろ?」の一言で包み込み、白紙の中に無限の言葉を宿らせるタモリの至芸は、もはやお笑いという枠を超えた「哲学」に近い。「これでいいのだ」とすべてを肯定する赤塚イズムは、タモリにも宿り、批判する側も、擁護する側も、実は等しく救っているのかもしれない。

(zakⅡ編集部 霞蓮刃)