「あれ、服が似合わない…」加齢と低身長で"ファッション迷子"、筆者を救った「3300円」阪神梅田・接客サービスの中身
年齢と身長による、「似合ってないかも?」の壁
「なんだか、今まで着ていた服が似合ってないかも……」と、思うことはないだろうか?
【画像】「背が低いからロングスカートは引きずっちゃう……」そんなお悩みに寄り添うコーディネート例
出かける前、鏡の前に立って自分の姿を見るたびに、がっかりするようになった。筆者は42歳、2歳児の母である。年齢を重ねるにつれ、体型の微妙な変化やシワやシミなどが気になり始めた。そのせいか、若い頃のファッションでは立ち行かなくなったと実感する。
今までずっと着ていたお気に入りの服が、なぜか最近しっくりこない。何が違うのか。自分では分からず、毎朝服を選ぶのが苦痛になる。
それに加えて、筆者の身長は148センチ、「低身長」というコンプレックスがあった。普通サイズの服を着れば、Vネックの胸元はだらしなく開き、袖口はブカブカ。肩のラインは二の腕まで落ち、まるで親の服を借りてきた子どものようなアンバランスさが漂う。
パンツは裾上げをしないと着られないため、お直し代という追加コストと受け取りに行く手間を要する。直したパンツは本来のシルエットが失われて土管のような形に……。ロングスカートは階段を降りるたびに裾を足で踏まないように、神経を尖らせねばならない。
「フリーサイズ(F)」と明記されている服は、メーカーが設定した幅広いサイズの人が着られるものである。だが、平均以下の身長の人間にとって、“F”の文字は選択肢の一つではなく、壁だった。
そもそも筆者は「サイズがぴったりでなければ着こなせない」という思い込みがあり、素敵なショップを見つけても「ここはフリーサイズの洋服しかないから……」と試着すらあきらめてきた。
結果として、安価なファストファッションで全身を揃え、自分らしさや特別感が欠けてしまっているような心細さを感じていた。いつの間にか、洋服を買う時は「これが着たい」というワクワク感は消え、「これなら着られる」というその場しのぎを繰り返すようになった。
もっと、大事な日には胸を張って着られる服が欲しい。そう切実に願っていた矢先、Instagramで見つけたのが、阪急うめだ本店・阪神梅田本店が展開する「ファッションコンサルティングサービス」だった。
これは百貨店離れが進む中、阪急阪神百貨店が打ち出した「モノ」を売る前段階の“納得感”を売るビジネスだった。
「3300円」で体験するプロのサービス
このサービスは、ファッションコーディネーターと一緒に店内の売り場を回りながら、自分に合う洋服選びのアドバイスをもらうものだ。
百貨店といえば「高いものを勧められそうだな」と尻込みしてしまうが、税込み3300円という手頃な価格設定で、何より「低身長さんのためのスタイリング」というメニューに釘付けになった。これこそ、私の悩みに答えてくれるサービスかもしれない! 早速、予約し、阪神梅田本店に足を運んだ。

"低身長さん"のお悩みに寄り添い、一人ひとりに似合うスタイリングを提案している(画像:阪急うめだ本店・阪神梅田本店ファッションコンサルティングサービスのInstagram / @hankyu_hanshin_fashioncsより)
実際の予約サイトでは、コーディネーターのプロフィールを見て指名することができる。そのほかに働くママの学校園行事&オフィススタイル、大人カジュアルなど、希望のスタイリングの内容から選択することも可能だ。

阪急うめだ本店・阪神梅田本店で実施しているファッションコンサルティングサービスのメニュー例(画像:阪急うめだ本店・阪神梅田本店のHPより)
担当してくれたスタイリングパートナーの小松さんは、甘すぎない黒のジャケットに、首元にアレンジの利いた白シャツ。大きめのシルバーリングや光沢感のある黒靴を履いており、どことなくパンクな要素を取り入れたファッションスタイルだった。
百貨店の販売員といえば、「自社の売り場の商品を売る人」というのが一般的だ。しかし、今回担当してくれた小松さんはそうではない。特定の店舗の販売員ではなく、フロア全体を網羅し、顧客のクローゼットを最適化する代理人のような動きをしていた。

中央が小松さん(写真:筆者撮影)
最初のヒアリングで「手持ちの洋服と合わせた着こなし方を知りたい」という要望を伝えると、小松さんは筆者の手持ちの服を把握したうえで、館内にあるさまざまなショップを横断。ブランドをミックスさせた提案をしてくれた。
実際のところ、「今日は話を聞くだけでもいいですか?」「クローゼットに服がいっぱいだから、まずは手持ちの洋服の着こなし方を知りたい」と言う人も多いという。「全然気にせず、気軽に試していただきたいです」と小松さん。
Sサイズの呪縛
店内のレディースファッションフロアを一緒に回り始めると、筆者の凝り固まったファッションの常識が次々と露呈した。
「身長が低いから、Sサイズしか買えない」と思い込んでいたのだが、案内されたのは、なんとフリーサイズのみが置かれているお店だった 。そこで、小松さんはこう言った。
「サイズはあくまで表記なので、あってないようなものです。Mサイズでも丈が短かったり、形が小柄な人向けのデザインだったりすることもあります。Sサイズでなければいけないというハードルを払拭していきましょう」

身長が低い人に向けたロングスカートの提案例(画像:阪神梅田本店)
「サイズはあってないようなもの」と言われても、筆者の頭の中には「結局、袖や丈が余って、高いお直し代がかさむのでは?」「百貨店の高い服を無理やり買わされるのでは?」と懐疑的になった。しかし、プロの提案は違った。
勧められたMidiUmi(ミディウミ)のブラウスに腕を通すと、たいてい断念する袖の長さも、手首にしっかり留まる「袖口のボタン」があるデザインだったため、お直し不要で自然に着こなせたのだ。
また、シルク入りの落ち感のある素材だったことから、肩幅や身幅が広くても体に沿ってすっきりと馴染んだ。その後も、「直しに出さなくても、きれいに着られる服」を、プロの目利きで試着を繰り返した。

ミディウミの店舗(画像:阪神梅田本店)
凹凸感を見せるより縦長のラインをどう出すか
さらに、小柄な人が最も気にするバランスについても、目から鱗のアドバイスを受けた。
低身長の筆者は、「小柄だからこそ、ウエストの位置を高く見せなければならない」と言う常識があった。脚長効果を狙ってのことだ。
だが、小松さん曰く、「ハイウエストにしすぎると、上半身が短く見えて不自然になってしまうんです」とのことだった。たしかに、トップスの裾をズボンやスカートに入れすぎると、どことなく野暮ったさが出てしまう。
「小柄な方は、凹凸感を見せるよりも、縦長のラインをどのように出すかがポイントになります。今は少しオーバーサイズのシルエットがトレンドですが、ただ緩く着るだけではなく、全体的に縦長を意識してバランスを取るんです 」(小松さん)
例えば、トップスをパンツにインしてウエスト位置を見せる場合、ハリのある生地だと膨らんでバランスが悪くなってしまうが、ストンと落ち感のある素材ならすっきりとまとまる。
年齢を重ねた女性ならではの服選びや「ファストファッションだけでは物足りなく感じる」と言う筆者の悩みにも、小松さんから答えがあった。
「ファストファッションはベーシックなアイテムが多いので、そればかりだと少し寂しくなりがちです。そこに、ツヤ感があったりする上質な生地をワンポイントで足すだけで、大人ならではの魅力が引き出せます」
提案されたのは、Mila Owen(ミラオーウェン)の少しラメが入った表情豊かな生地のカーディガンだった。ビジネスの場でも「親しみやすさと、きちんとした印象」を両立できる素材選びである。
加齢によって気になり始めたヒップラインをカバーする方法も教えてもらった。例えば、筆者の60代の母はこれまで、お尻周りを隠すためにいつも長めのトップスにパンツを合わせる、エプロンのようなスタイルになりがちだ。
こういった場合、前を開けてインナーのウエスト位置をしっかり見せたり、「ロングジレ」というベストを羽織ったりすることで、すっきりとしたラインが作れるという。
「パンツはあえて1サイズ大きめを選んだ方が、脚のラインを強調しすぎずきれいに見えることがあります。セレクトしたパンツは、長さをウエストで調整していただけます」(小松さん)
プロの裏側にあった見えない努力
館内で数軒のお店で試着して約2時間。印象的だったのが、小松さんがそれぞれの店員さんに「見させていただきます」と声をかけ、売りものを丁寧に扱う姿だ。そして、お店側も「なんでも着てみてくださいね」というウェルカムな雰囲気があった。
日頃から小松さんは、館内のさまざまなショップの店員と密にコミュニケーションを取っている。「小柄な人に合う新作はないか」と日常的にやり取りをし、ブランドの垣根を越えた関係性を築いているという。
筆者が「買わされるのではないか」と不安に思っていた裏で、彼女たちは「この人に一番似合うものを探す」という努力をしていたのである。

スタイリングサービスを受けている筆者(写真:筆者撮影)
最終的に私は3着の服と1足の靴を購入した。総額6万円ほどで、筆者にとって奮発した買い物だった。正直なところ、サービスを受ける前は、買うつもりはなかった。だが、お店を出る頃には「買ってよかった」という満足感に包まれていた。
得られた「心の豊かさ」
その思いは、数週間経っても消えていない。消費されがちな安い服よりも、納得して選び抜いたものをずっと大切に使う。その日々が、気が付いたら大人になっていた筆者に、心の豊かさを生んでいるように感じたからだ。
ここで、ふと冷静になると一つの疑問が浮かぶ。
プロのコーディネーターが付きっ切りで館内を歩き回って、たったの「3300円」……? 安すぎるような気がした。百貨店側からすれば、どう考えても人件費に見合わない赤字ではないだろうか。
アパレル不況が続く中、なぜ阪急阪神百貨店は、あえてリーズナブルな価格設定でプロの知見を解放したのか――。後編では、この異例のサービスの裏側にある、「百貨店の戦略」を探求する。