「だいぶ高くなった」「気軽に行けない」と客離れ…カツ丼600円の壁に直面 「かつや」の何がマズかったのか
とんかつ・カツ丼の専門店チェーン「かつや」がここ最近、不調だということをご存じだろうか。
【画像】気づけば結構高くなったかも…値上げで客離れ中の「かつや」メニューの様子。一方、「松のや」は…
1998年に創業以降、右肩上がりで成長を続け、現在は国内外に500店舗以上を展開している「かつや」だが、2025年12月から26年3月までにかけて、客数が前年割れとなっている。

「かつや」の直近の売り上げ(オレンジ線)は、前年比割れ。値上げで客単価は上昇したものの、それ以上に客離れが進んでいる(画像:アークランドサービスホールディングス 2025年度決算説明会資料より)
「かつや」最近の苦戦の原因は?
「かつや」を運営するアークランドサービスホールディングスが公表している25年度決算資料によると、25年11月頃から売り上げは徐々に下がり始め、12月には前年比割れとなった。26年3月にはやや回復傾向も見られるものの、依然として苦戦が続いている。
原因として考えられるのは、おそらく2025年10月6日に実施された価格改定だろう。多くのメニューが値上げされ、最も安い「カツ丼(梅)」は590円(税込649円)から620円(税込682円)へと変更された。その結果、税抜500円台のメニューが姿を消すことに。
税抜500円台であれば、「ほぼワンコイン」という感覚で利用していた人も少なくなかっただろう。しかし、600円台に突入したことで、「気軽に行ける店」というイメージに変化が生じた可能性がある。
本稿では、「かつや」の値上げ事情に着目。実際に店舗を訪れ、価格改定後の客入りや、味のクオリティについて検証した。
「かつや」は今、本当に空いているのか
筆者は「かつや五反田店」を訪れ、「カツ丼(梅)」を注文した。休日の13時頃に来店したが、客層は20代〜50代ほどの男性一人客が中心。店内は静かで、食べ終えるとすぐ退店する人が多く、回転率は高そうだった。一方で、休日の昼時としては、やや空いている印象も受けた。
注文は、吉野家や松屋のように、店内の入り口にあるタッチパネルから注文するスタイル。外国人スタッフと日本人スタッフが半々ほどだったが、接客やオペレーションはスムーズで、着席から5分ほどで商品が提供された。

「カツ丼(梅)」税込682円。80gの豚ロースを使用した、「かつや」で最も小さいサイズのカツ丼(写真:筆者撮影)
注文した「カツ丼(梅)」は、80gの豚ロースを使用した、「かつや」で最も小さいサイズのカツ丼だ。一方、120gの豚ロースを使用した「カツ丼(竹)」は税込869円。いずれも25年10月の価格改定で約30円値上げされている。

「かつや」では、冷凍ではなくチルド保存された豚ロースを使用している(写真:筆者撮影)
醤油やだしの旨みが効いた割り下に玉子でとじられたカツは、程よい厚みがあり、しっとりやわらか。衣のサクサク感もしっかり感じられ、少量の三つ葉がアクセントに。最後まで飽きることなく堪能できる。
ごはんの量は選べるが、少なめにしても料金が安くなるといったサービスはない。筆者個人としては、この提供スピードとクオリティを考えると682円でも十分に安いと感じたが、以前から定期的に利用していた人にとっては、この値上げは、いい気持ちがするものではないだろう。

「とん汁(小)」税込165円。野菜たっぷりで、味噌の甘みとコクも感じられて非常においしかった(写真:筆者撮影)
ちなみに、かつや好きの知人に「とん汁がカツ丼に負けないくらいおいしい」と聞いていた。SNSでも「むしろ、カツ丼ではなくとん汁が主役だと思う」という投稿を見かけたため、とん汁も注文してみた。
豚肉、大根、にんじん、玉ねぎ、こんにゃくなど具だくさんで野菜たっぷり。味噌の甘みとコクも感じられて非常においしかった。とん汁(小)は、税込165円、カツ丼とセットで頼むと合計847円になる。なお、とん汁(大)は税込220円だ。

「海老ヒレカツ定食」税込1122円。赤身肉でさっぱりとしたヒレカツ2枚と、海老フライ2本に加え、先ほど紹介したとん汁がセットになっている(写真:筆者撮影)
価格をあまり気にしないのであれば、定食メニューも充実している。定食は税込869円〜1177円。「海老ヒレカツ定食」は、赤身肉でさっぱりとしたヒレカツ2枚と、海老フライ2本に加え、先ほど紹介したとん汁がセットになっている。
他チェーンでは定食に味噌汁が付くケースが多い中、とん汁がセットになっている点は、かつやならではの強みと言えそうだ。
気になる競合チェーンとの価格差

松のや「ロースかつ丼 並盛」は税込690円。味噌汁付き(画像:松のや公式サイトより)
味がおいしくても、値上がりによって客足が遠のく――。店側から見れば、なかなか厳しい時代だ。“ラーメン1000円の壁”が話題になることは多いが、カツ丼にも「600円の壁」が存在するのかもしれない。
ここで気になるのは、競合チェーンとの価格差だ。松屋フーズが展開するとんかつ専門店「松のや」のロースかつ丼は、並盛税込690円。かつやより10円高いものの、味噌汁付きであることを考えると、コストパフォーマンスは高い。
一方、定食メニューは690〜1520円と、「松のや」のほうが高価格帯の商品も多い。「ロースかつ定食」は「松のや」690円に対し「かつや」913円なので、これに関しては「松のや」のほうが安い。が、定食メニューという意味では、「かつや」のほうが割安感があるか。
【2026年5月18日6時45分追記】初出時のメニュー説明の一部箇所を修正しました。

「和幸」のロースかつ丼は税込1450円(画像:和幸公式サイトより)
とんかつ専門チェーン「和幸」のロースかつ丼は税込1450円、ひれかつ丼は税込1380円。味噌汁、サラダ、お新香も付くため単純比較はできないものの、価格帯はかつやの倍以上だ。
それでも、価格重視の層にとっては、「かつやが値上げしたなら別の店へ」となっている可能性もある。
ちなみに、とんかつチェーンではないが、「名代富士そば」だと、かつ丼は税込み620円。「かつやが高い」というより、「富士そばが安い」とも言えそうだが、いずれにせよワンコイン感覚でかつ丼を食べられる時代は、終わりつつあるということだろう。

「かつや」の公式アプリでは100円引きクーポンを配布している(画像:かつや公式アプリより)
「かつや」の値上げ問題だが、実は “値上げ対策”とも言える仕組みも存在する。「かつや」の公式アプリでは、100円引きクーポンが常時配布されているため、「カツ丼(梅)」は実質580円台で食べられる計算になる。これを利用すれば、店内飲食でも値上げ前に近い価格帯で利用できる。
【2026年5月18日6時45分追記】初出時のクーポン説明の一部箇所を修正しました。
値上げが止まらない時代だからこそ、クーポンを活用して“体感価格”を下げる工夫が、今後さらに重要になるのかもしれない。
「高い」「安い」は消費者の感覚で決まる
先日SNSでは、「コンビニより成城石井のほうがむしろ安く感じる」という声が話題になった。結局のところ、「高い」「安い」の感覚は、絶対的な価格ではなく、消費者が“何を得られるか”によって決まるのではないだろうか。
「より安い富士そばに行こう」「味噌汁が付くなら松のやに行こう」「少し高くても和幸でゆっくり食べたい」「いや、もはやかつ丼じゃない店にいしよう」…そんなふうに考える人が増えた結果として、かつやの客数減少につながっている可能性はある。
「かつや」は、値上げによって“圧倒的な安さ”という武器がやや弱まった。一方で、味や提供スピード、とん汁の満足感など、依然として強みは多い。
今後、競合との差別化をどう打ち出していくのか。クーポン施策を含め、「かつや」の次の一手に注目したい。