日本から譲渡、タイとラオスの「元国鉄車両」最新事情 再デビューした「キハ40系」、「DD51形」は"視界不良"

日本国有鉄道(国鉄)が分割民営化され、JRが発足してから来年で40年となる。この間、JR各社では様々な新型車両が登場。鉄道車両の寿命は一般的に30~40年程度と言われており、国鉄時代に造られた車両は引退のフェーズに入って久しい。

【はじめに写真を見る】▶これはこれでなかなかカッコいい▶ラオス仕様の「DD51」、「アユタヤ」と行き先を表示したタイ仕様の「キハ40系」▶日本から譲渡された「国鉄車両」最新の姿

JR東海は全車両がJR時代のものとなり、JR東日本にも国鉄末期からJR時代にかけて製造された「211系」などがわずかに残るのみ。他社でも確実に数を減らしている。

国鉄車両が東南アジアへ

一方、廃車された日本の鉄道車両が海を渡り、東南アジアで活躍する例は近年も増えている。インドネシアやタイ、ミャンマーなどがよく知られており、筆者も何度か紹介してきた。

いずれも日本で数十年にわたって使われた“中古車”だが、現地では好意的に受け入れられ、大切に使われている。

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2026年2月、筆者はラオスの首都、ヴィエンチャン近郊にあるタナレーン駅を訪れた。

同駅は09年にタイとラオスを結ぶ国際鉄道が開業したのに伴い、ラオス側の拠点として開設されたものの、同鉄道が市内中心部により近いカムサワート駅まで24年に延伸された際、旅客営業を廃止。現在もホームは残っており、また信号の関係で全ての列車が停車するものの、乗客が乗り降りすることはできない。

一方、同駅からは近くにあるドライポートへの貨物線も延びている。ドライポートとは「陸上港」とも訳され、貨物輸送コンテナの通関手続きを行ったり、積み替えを行ったりする場所だ。

ラオス仕様となった「DD51」

タナレーンのドライポートには道路とタイからの鉄道路線に加え、中国とラオスを結ぶ高速鉄道の線路も引き込まれているが、タイ―ラオス国際鉄道と中国―ラオス高速鉄道は線路幅が異なるため、ここで積み替える必要がある。

駅舎を通ってホームに出ると、目の前に2両のディーゼル機関車がいた。1両は中国製、そしてもう1両は日本から海を渡ってやってきた、元JR北海道の「DD51形」だ。

カラーリングは“ラオス仕様”となり、ナンバープレートや製造会社を表す銘板も外されているものの、この独特の凸型車体を見間違えるはずがない。

国鉄車両が東南アジアへ, ラオス仕様となった「DD51」, 元ブルートレインの客車も活躍, タイでは「キハ40系」が運行開始, まだ手つかずの車両もある

タナレーン駅で並んだラオス国鉄のディーゼル機関車。手前が元JR北海道の「DD51」(撮影:伊原薫)

実は筆者は、ちょうど1年前にもこのDD51に会っている。日本から輸出されたこの車両は、タイ・バンコク近郊にある民間の整備工場でオーバーホールや車体の再塗装が行われたのだが、運よくその様子を見学することができたのだった。

日本時代に青色だった車体は補修の過程で黄緑色に塗られ、「この後で白色をベースとしたオリジナルのデザインにする」とスタッフから聞いていたが、実際に目の当たりにするとこれはこれでなかなかカッコいい。

元ブルートレインの客車も活躍

このDD51は25年3月にタイからここまで運ばれ、安全祈願の儀式を実施。その後、試運転などを経て同年12月にデビューした。

当面はドライポートで高速鉄道から積み替えられたコンテナを、トラックに代わってタイ側のノンカイ駅まで運ぶという役割が任されている。

ちなみに、両国間には1日2往復の旅客列車も運行されており、同じく日本から輸出された元ブルートレインの客車が活躍。DD51の投入で、“日本勢”の進出がさらに進む……はずだった。

国鉄車両が東南アジアへ, ラオス仕様となった「DD51」, 元ブルートレインの客車も活躍, タイでは「キハ40系」が運行開始, まだ手つかずの車両もある

これから国境を渡る元「24系寝台客車」がDD51の横を通過した(撮影:伊原薫)

【写真を見る】雪国仕様の旋回窓が残る「DD51」の運転台。機器類は日本時代とほぼ変わらない

雪国仕様の旋回窓が残る「DD51」の運転台。機器類は日本時代とほぼ変わらない

ただし、この貨物輸送は当初から1日あたりコンテナ数個という日も頻発。現在はほぼ運休状態となっている。トラックからのシフトが思うように進んでいないようで、筆者も国境を渡るDD51の姿を見ることはできなかった。

タナレーン駅で出番を待つDD51の車内は、スイッチ類をはじめ各所に日本語の表記が残っており、エンジン音も変わらぬままだった。彼がその実力を存分に発揮できる機会が来ることを願いたい。

タイでは「キハ40系」が運行開始

さて、26年春にはラオスと国境を隔てたタイ側でも、元JR車両に関する新たな動きがあった。24年にJR東日本から譲渡され、タイ国鉄の工場で改造工事が進められていた「キハ40系」が、デビューしたのである。

このキハ40系は、もともとJR五能線や男鹿線で活躍していた車両だ。タイ国鉄での使用に際し、車輪の幅を日本の1067mm軌間からタイの1000mm軌間に変更する「改軌」などを実施。カラーリングは日本時代の塗分けパターンを踏襲しつつ、帯色が赤とされた。

国鉄車両が東南アジアへ, ラオス仕様となった「DD51」, 元ブルートレインの客車も活躍, タイでは「キハ40系」が運行開始, まだ手つかずの車両もある

改造を終え、試運転を行うキハ40系(撮影:大橋伸行)

車内は座席の表地が布製からビニールレザー製となるなど手が加えられているものの、座席自体はボックスシートのまま。日本にいると錯覚しそうである。

国鉄車両が東南アジアへ, ラオス仕様となった「DD51」, 元ブルートレインの客車も活躍, タイでは「キハ40系」が運行開始, まだ手つかずの車両もある

キハ40系の車内。日本時代のボックスシートがそのまま並んでいる(写真:大橋伸行)

タイ国鉄はこのキハ40系を、バンコク市内のドンムアン駅と観光地でもあるアユタヤ駅を結ぶ新設のコミューター列車に、26年4月から投入した。

平日に1日3往復というダイヤで、乗車するのに予約は不要。両駅間の所要時間は1時間弱で、全区間を乗り通しても片道50バーツ(約250円)とお手頃だ。異国で活躍する元JR車両を気軽に楽しめるとあって、日本とタイの鉄道ファン双方から注目されている。

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まだ手つかずの車両もある

ところで、24年にタイへ渡ったキハ40系は合計20両であり、うち6両がこのコミューター列車用として整備された。工事を手掛けるマッカサン車両工場では、残る14両のうち数両で整備が進められていたほか、まだ手つかずのまま留置中の車両もいた。

かつて北海道で急行「はまなす」に使われ、タイで観光列車「ROYAL BLOSSOM」へと改造された14系客車のように、一部が観光列車化されるという噂も聞く。数年後、彼らがどんな姿となって活躍しているのか、今から楽しみだ。