EV「世界3割」の衝撃――日本車の逆転なるか? 中国勢シェア55%の“関ヶ原”で進む再編と技術融合

主役に躍り出たEVシェア3割

 2026年、世界の電気自動車(EV)市場はひとつの大きな節目を迎えようとしている。乗用車販売全体に占める割合がいよいよ3割に届く見通しとなった。国際エネルギー機関(IEA)がまとめた最新のリポート(2026年5月20日発表)によれば、年間の販売台数は約2300万台規模にまで膨らむという。世界販売の約4分の1を占めた2025年の2000万台超という数字を塗り替え、EVはもはや市場の脇役ではなくなった。

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 買い手側の意識も変わりつつある。普及の裾野がふだんの生活を営む人たちへと広がったことで、車に求める価値が変わってきた。これまでの新しさへの関心は薄れ、長く乗り続けられるか、壊れないかといった、道具としての確かさが問われるようになっている。

 ただ、その成長の姿はどこも同じというわけではない。地域ごとに市場の熱量はわかれている。欧州では前年比で約30%増、中国を除いたアジア太平洋地域では80%増、中南米では75%増と、目覚ましい勢いで伸びた。

 一方で、これまでの市場を引っ張ってきた米国と中国では、制度の見直しなどが響いて1月から3月期の販売が前年同期に比べて8%ほど落ち込んだ。主要国が足踏みをする傍らで新しい市場が急成長する今の状況は、それぞれの土地の事情に合わせて、EVという存在が社会に深く入り込み始めた証しともいえる。

 この広がりは、単に移動の仕方が変わるという話にはとどまらない。車が電力網とつながり、エネルギーを支える土台へと役割を広げつつあるからだ。作る側の仕事も、車を売って終わりではなく、手放すまでの全行程を見守るものへと様変わりした。これまでのものづくりの経験に、

・AI

・ソフトウェア

といった新しい力を掛け合わせる。そんな実力勝負の競争が、産業全体の景色を少しずつ、だが着実に変えていこうとしている。

補助金頼みの終焉と燃料高騰

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リポート「エネルギー危機への対応として、各国や消費者が動きを見せていることから、今年販売される自動車の30%近くが電気自動車になると見込まれている」(画像:国際エネルギー機関)

 2026年に入り、EV市場を巡る空気はより複雑さを増してきた。第1四半期の動きを振り返ると、各国の政策転換とエネルギー情勢の荒波が、同時に押し寄せた格好だ。米国では2025年9月にトランプ政権がEV購入への税額控除を打ち切り、中国でも手厚い支援の見直しが進んだ。これまでのように手放しで補助金に頼る時期は過ぎ、市場が自らの力でふるいにかけられる段階へと移りつつある。

 その一方で、市場を動かすもうひとつの力が強まっている。中東情勢が緊迫の度を深めたことで、ガソリン価格が跳ね上がったのだ。日々の出費に敏感な買い手にとって、燃料代の変動に振り回されない電動化車両への関心は、切実な動機となって表れている。

 燃料供給の先行きが読みづらくなるなかで、電気を賢く使う車は、暮らしの安定を守るための備えとしても存在感を増した。IEAの分析が示す通り、EVは主要な市場で着実にコスト面での強みを磨いており、変動の激しい燃料価格に不安を抱く層の受け皿となっている。こうした流れは、プラグインハイブリッド車やハイブリッド車までをも含めた、全方位で備える戦略の価値を改めて浮き彫りにした。不測の事態でも足を止めない強さが、実利を求める人々の需要と結びつき、市場の姿を塗り替えようとしている。

 土台となる技術や環境も、着実に整ってきた。バッテリー価格は下がり、街中の充電インフラも広がりを見せている。もはや一過性の流行ではなく、長く使った際の経済性を見極めて車を選ぶという、当たり前の流れが定着し始めたといえるだろう。

 今のエネルギー危機への公的な対応が、市場に再び勢いを与える可能性も否定できない。世界各地で車の価格が目に見える形となって示されるなか、技術は人々の暮らしの奥深くまで、確実に浸透し続けているのだ。

際立つ中国一極集中と知能化

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中国(画像:Pexels)

 供給のあり方を眺めると、特定の場所への偏りが一段と際立ってきた。2025年の時点で、世界のEV販売の約6割を中国勢が占めている。作る側に目を向けても、世界全体で世に出た約2200万台のうち、4分の3近くが中国での生産だ。

 国内で使い切れないほどの力は、そのまま外の世界へと向けられている。中国からの輸出台数は前の年に比べて2倍となる250万台を超え、これまでで最も多い水準を塗り替えた。実際、中国や欧州、米国といった主要な場所を除けば、売られているEVの

「55%」

が中国からの輸入車だ。わずか5年前には5%にも満たなかった数字が、驚くほどの速さで膨れ上がったことになる。

 この偏りは、車そのものだけでなく、さらに上流の部品や材料のつながりにも及んでいる。心臓部である電池セルの生産では、中国勢が全体の約8割を供給しており、材料の調達まで含めて他を寄せ付けない強みを保っている。こうした大規模な生産の広がりは、作るコストを抑える力となり、結果としてEVがより多くの人の手に届く土台を作ってきた。ただ、作る拠点がこれほど1か所に集まった事実は、これからの産業のあり方を考えるうえで、

・供給の網をいかに広げ

・揺るぎない体制を整えていくか

という、新しい問いを各社に投げかけている。

 一方で、車そのものが持つ価値の源は、目に見える車体や部品から、AIやソフトウェアといった目に見えない領域へと広がりつつある。IEAのリポートが、技術の動向としてソフトウェアや人工知能を重く見ているのは、産業の重みが「いかに効率よく作るか」から、

「いかに高度な制御を組み込むか」

へと移っている裏付けだろう。これまで積み上げてきたものづくりの土台と、知能化という新しい流れが結びつくことで、これまでの枠組みを超えた他業種との手を取り合う動きが、さらに勢いを増しているのだ。

多極化する市場と現地への適応

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欧州(画像:Pexels)

 世界各地で進む車の電動化は、どこも同じように動いているわけではない。それぞれの土地が抱える事情やインフラの整い具合によって、独自の広がりを見せ始めている。2026年3月の集計によれば、世界約90か国で前年の実績を上回り、そのうち約30か国が月間の過去最高販売を塗り替えた。これまでの特定の国々が引っ張る形から、各地の特性に合わせた自律的な広がりへと、その中身が移り変わっている。

 なかでも、東南アジアの変化は一段と際立っている。2025年の年間販売台数は前の年から倍増し、市場に占める割合は20%に迫る勢いを見せた。域内最大の市場となったベトナムをはじめとする各国は、いまのエネルギー危機を受けて、税制面での後押しをさらに強める構えだ。

 2035年にはシェアが6割に達するという予測も出ている。すでに電動化が進んでいる二輪や三輪の分野も伸び続けており、こうした動きは充電網の広がりを促すとともに、現地の暮らしに寄り添ったきめ細かな対応を各社に求めている。

 電気の供給がどれほど安定しているか、充電できる場所がどれだけあるか、あるいは燃料の価格がどう動くか。こうした土地ごとの違いが、それぞれの場所で異なる進化の形を生んでいる。どこへ行っても同じものを作るのではなく、各地が抱える課題に向き合い、ふさわしい選択肢を用意することが、いまの市場では重みを増してきた。

 需要がバラバラに広がる現状は、長年現場で培ってきた柔軟な対応力や、多種多様な動力源を形にする技術の厚みが、ふたたび表舞台に立つ機会を広げているのだ。

知能化と商用EVへの価値移転

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米国(画像:Pexels)

 これから先、目を向けるべきは市場がどこまで膨らむかという規模の話ではない。むしろ、その成長が生む価値が、産業のどのあたりに流れ込んでいくか、という点に尽きるだろう。

 IEAの予測では、世界のEV保有台数は2035年までに5億1000万台に届く。いまの約8000万台から見れば驚くような積み上がり方だが、その裏で、産業の重心は車両の組み立てから、電池やエネルギーインフラ、さらにはソフトウェアの階層へと、はっきりと移りつつある。

 こうした価値の移り変わりは、商用車の世界を見てもわかりやすい。2025年の電動トラックの販売台数は前の年から倍に増えた。世界で新しく売り出されるトラックの

「10台に1台」

が、すでに電動モデルになっている計算だ。こうした動きを追うと、自動車メーカーの立ち位置が、作り手から、社会の土台を支える役割へと少しずつ歩みを進めていることがうかがえる。車の良さを決める基準も、走りの性能だけでなく、移動の合間の体験や、電気をいかに賢く管理できるか、といったところに移ってきた。

 顔ぶれの間での役割分担も、刻一刻と形を変えている。それぞれの地域が独自のつながりを広げ、腰を据えた供給体制を整えようと動くなか、完成車メーカーから部品の出し手、さらにはエネルギーを担う会社へと続く、価値のつながりがこれまでにない広がりを見せている。それぞれの会社が、自分たちの強みをいまの環境に合わせて広げていこうとしているのだ。

日本勢逆襲の鍵を握る「確かさ」

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自動車(画像:Pexels)

 繰り返しになるが、2026年、世界の新車販売でEVが3割を占める。

 今、この「3割」という数字の向こう側に、日本勢が進むべき道筋がはっきりと見え始めている。爆発的な広がりの裏で、世界が本当の意味で求めているのは、過酷な環境でも揺るがない

「確かさ」

だ。決して一足飛びの速さだけが、この先の競争を勝ち抜く条件ではない。日本が長年、土を耕すように積み上げてきた品質の厚みと、複数の動力源を自在に使いこなすしなやかさは、不確実な世界において何よりの盾となる。

 異なる分野との手繋ぎを恐れず、持ち前の泥臭い現場力に新たな知能を注ぎ込むことができれば、この“関ヶ原”は、ふたたび日の丸の旗が鮮やかに翻る場となるはずだ。世界がブームの先にある円熟を求めるこれからこそ、日本が培ってきた底力を存分に振るう時が来ている。