スバルの1/4を占める「フォレスター」新型モデルの初年度「3万台」という数値が大きくなくても堅調な実績といえるワケ
今でこそスバルの4分の1を占める基幹車種となっているフォレスターだが、最初から重要な存在であったわけではない。特に1997年に誕生した初代モデルと、2002年からの2代目の存在感は小さかった。
【写真】スバルの約4分の1を占める屋台骨「フォレスター」最新モデルの内外装
初代と2代目は、ステーションワゴン風クロスオーバーというユニークな路線であり、一部コアなファンを獲得できたものの、数多くは売れなかったのだ。

初代「フォレスター」(写真:SUBARU)
07年デビューの3代目は、一般的な背の高いSUV路線に舵を切った。とはいえ、それはそれで初代と2代目を支持したファンにそっぽを向かれ、またも不発となってしまう。
しかし、“一般的なSUV路線”は北米で人気となり、日本で12年にデビューした4代目以降は、じわじわと売れるようになっていく。最初は苦戦しつつも路線変更などを経て、少しずつ、そして着実に成長してきたというのが、フォレスターの歴史だ。
スバルならではのクルマづくりの方法
6代目となる現行モデルは、25年4月17日に日本で発売された。
このモデルのトピックは、世界初となるサイクリスト対応歩行者保護バッグの採用、トヨタのFF用システムを縦置き4WD用に大改造したストロング・ハイブリッドの採用、3眼化した新世代の運転支援システム「アイサイトX」の採用といったものだ。

デザインはよりタフに、SUV志向が強まった(写真:SUBARU)
ただし、今回のフォレスターでスバル初となる技術は、世界初となるサイクリスト対応歩行者保護バッグ程度で、それ以外の技術は、すでに他モデルで採用済みのものばかりだ。
しかし、スバルがフォレスターをないがしろにしたわけではない。その理由は、スバルならではのクルマづくりの方法にある。
スバルは、水平対向エンジン+縦置きプラットフォームのパッケージを、軽自動車を除くすべてのモデルで使っており、それをベースに新しい技術を適宜、新モデルに採用してゆくというクルマづくりをしている。
土台となる部分を共通化することで、新モデルは、常にスバルの最先端の技術を満載することができるのだ。そういう意味で、今回はたまたま他モデルが新技術採用のタイミングであっただけ、といえる。
また、スバルの最重要モデルとも言えるフォレスターに当たりはずれのある初技術を採用せず、数の少ないモデルで最新技術を試し、技術を熟成させてから最重要モデルフォレスターに採用したと見ることもできるのだろう。

フルインナーフレームを採用するボディ構造(写真:SUBARU)
実際に新型モデルを先代と比べてみれば、フルインナーフレーム構造と呼ばれる強固なボディの作り方から、パワートレイン、先進運転支援システム「アイサイト」まで、すべてが新世代へと進化している。
しかし、基本部分は継承されているし、他モデルとの技術的なつながりもある。そのため、前と比べればまったく新しくなっているのに、その乗り味はしっかりと継承されている。いわば、「継ぎ足しの秘伝のタレ」のようなクルマに仕上がっているのだ。
新しくなっても「スバルの味」
この新型フォレスターを走らせてみれば、他のスバル車と共通するフィーリングを感じることができる。
運転席からの視界の良さや、スムーズにふけ上がるパワートレイン、しっかりと4輪が路面をつかむ安心感は、いかにもスバル車らしいもの。ハイブリッド機構のつかないガソリン車に試乗して、2~3世代前のスバル車を思い出してしまったほどだ。

パワートレインは1.8リッターターボと2.5リッターストロングハイブリッドがある(写真:SUBARU)
もちろん燃費性能や静粛性の高さ、ステアリング操作に対するクルマの正確な動きなどは、旧世代よりも格段に進化している。けれど、根本のフィーリングは、確固たるスバルそのものであった。スバルの味をキープしつつ、最新の性能を実現する。それが新型フォレスターと言えよう。
ちなみに、自動車メディアが定める「2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤー」には、この新型フォレスターが選ばれている。業界でも高く評価されているのだ。
では、そんな最新のフォレスターは発売から1年で、どれだけ売れたのか。
結果は、3万104台(25年4月~26年3月)で、前年比114.9%。2025年度の新車販売ランキングで24位であった。
まったくの新型モデルの数字と聞けば、「ちょっと足りないのでは」と思う人もいるかもしれない。しかし、これはスバルとしては、十分に立派な数字だ。

インテリアはグレードにより異なるカラーや素材を設定(写真:SUBARU)
まず、新型フォレスターデビュー時の販売目標は月販2400台、年間ならば2万8800台。この目標を軽々とクリアしている。24位という販売ランキングも、スバルとして最上位だ。基幹モデルとして、十分な結果と言えよう。
また、先代モデルがデビューした翌年の19年は年間3万2384台。さらに先々代デビューの翌年は3万5166台であった。現行モデルと比べれば若干多いけれど、それでもどちらも3万台レベル。つまり、先代や先々代と比べるとちょっと物足りなくはあるが、十分な成績を残したと言えるのだ。
電動化が進む中で重要なフォレスターの存在感
スバルは今、電動化に全力投球している真っ最中だ。トヨタと共同開発したEV「ソルテラ」(トヨタ名:bZ4X)に続く新型EVを、なんと3モデルも市場導入する。
具体的には、コンパクトSUVとなる「アンチャーテッド」(同C-HR+)、ステーションワゴンの「トレイルシーカー」(同bZ4Xツーリング)、3列シートの大型SUV「ゲッタウェイ」(同ハイランダーEV)という、大中小の3台のEVである。
グローバルで年間生産1000万台規模のトヨタならいざ知らず、その10分の1となる年間100万台規模のスバルで、3モデルもの新型EVの投入は一大事そのものだろう。
しかも現状、北米市場と日本市場でEVは、なかなか難しいのが実情だ。日本では、EVの販売比率は、わずか2~3%程度にすぎない。そんな中で、従来の人気モデルが着実に売れ続けることは、ビジネス的に非常に重要なことになる。
つまり、苦戦が予想されるEVの販売を支えるためにも、フォレスターはしっかりと売れてくれないと困るのだ。スバルも、そのことは重々承知のはず。発売1年を過ぎ、購買意欲が高まるような、年次改良や特別仕様の追加などをスバルに期待するばかりである。