スーパーエルニーニョ確定?100年に一度のレベルに発達する可能性

スーパーを通り越して、「ゴジラ・エルニーニョ」と呼ばれはじめてるのよね…。

早ければ今月中にも発生するといわれているエルニーニョ現象。いくつかのモデルの予測をみると、秋までに赤道太平洋の海面水温がとんでもなく上昇して、「スーパーエルニーニョ」になる可能性が高まってきました。

専門家は、この超ド級エルニーニョが地球の平均気温や異常気象、食料安全保障にどんな影響を及ぼすかについてますます危機感を募らせています。

予測値がグラフをはみ出す

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Image: NOAA / NWS / NCEP / CPC

アメリカ海洋大気庁(NOAA)の最新の予測(上のグラフを参照)は、11月までにどのモデルも赤道太平洋のニーニョ3.4海域の海面水温が平均値よりも2.5℃以上上昇することを示しています。

なかには、縦軸の値を突き抜けて、グラフの外に行っちゃうモデルも。平年を4℃以上も上回るなんて、あってはならないことです。

黒い破線は、すべてのモデルの平均値です。ピーク時の平均値が3.5℃って、かなりヤバいです。

とりあえず、NOAAは縦軸の数値を増やしたほうがいいと思いますね。

NOAAの新指標でもスーパーエルニーニョ確定

ここでギズモード・ジャパンとして指摘しておきたいのは、米Gizmodoの元記事が参照している上のグラフは絶対値ベースのニーニョ3.4海域の海面水温偏差なので、相対値ベースのグラフとは異なる点です。

NOAAは、今年2月からエルニーニョ・南方振動(ENSO)の公式な監視・予測指標を、ニーニョ3.4海域の絶対値による海面水温偏差の指数(ONI: 海洋ニーニョ指数)から、相対的な海面水温偏差の指数(RONI: 相対海洋ニーニョ指数)に移行しました。

RONI(Relative Oceanic Nino Index: 相対海洋ニーニョ指数)は、地球温暖化で熱帯太平洋全体の海面水温そのものが底上げされている現状では、絶対値だとエルニーニョ本来のシグナルと温暖化のトレンドが分離できないので、ハッキリと区別するために導入されました。つまり、ONIから温暖化分を差し引いた値がRONIということになります。

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Image: NOAA / NWS / NCEP / CPC

こちらが相対値ベースのグラフです。グラフを突き抜けてはいませんが、モデルの平均値(黒い破線)を見ると、エルニーニョの強さとしては1997年から1998年にかけてと、2015年~2016年にかけてのエルニーニョに匹敵する過去最強クラス(どちらのエルニーニョもRONI指数でニーニョ3.4海域の海面水温偏差が最大+2.4℃)、つまり「スーパーエルニーニョ」になりそうな点は変わりありません。

また、絶対値ベース(ONI)と相対値ベース(RONI)のグラフを見比べると、だいたい0.5℃くらい相対値ベースの海面水温偏差が低くなっています。これは、1991〜2020年の平均と比べて、熱帯の海面水温が温暖化によって約0.5℃暖かくなっていることを意味します。

ちなみに、「スーパーエルニーニョは、正式な名称ではありません。正式には、ニーニョ3.4海域の海面水温が平年の水準から2℃以上高くなると、「非常に強いエルニーニョ」といわれるのですが、それをわかりやすく「スーパーエルニーニョ」と呼んでいるのです。

平年を3℃や4℃上回ったらなんて呼ばれるのか、考えたくもありませんが、「ゴジラ・エルニーニョ」なんて呼ぶ海外メディアもちらほら見かけるようになりました。

EUの予測もスーパーエルニーニョ確定

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Image: ECMWF

一方、ヨーロッパ中期気象予報センター(ECMWF)の最新アンサンブル予測(上のグラフを参照)は、NOAAほど悲観的ではありませんが、それでも過去のスーパーエルニーニョと比較にならない強さです。

こちらのグラフでも、いくつかのモデルが11月までに4℃近く上昇しそうな勢いです。最も極端な予測だと、ピーク時に3.8℃まで上昇しそう。これでも「非常に強いエルニーニョ(平年の+2.0℃以上)」の基準をはるかに上回っています。

グラフは5月に発表された最新の予測ですが、今年に入ってから、エルニーニョ予測が発表されるたびに、勢力がどんどん強くなってきました。

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Image: ECMWF / ギズモード・ジャパン

単月のグラフではわかりにくいので、1月からの変遷をGIFアニメにしてみました。予測の確度が上がるにつれて、エルニーニョがどんどんモンスター化していくのがわかります。増えていく縦軸の数値に注目です。

5000万人の死者を出したスーパーエルニーニョとの比較も

気象学者のなかには、今回のエルニーニョを、ピーク時のニーニョ3.4海域の海面水温偏差が+3.5℃に達した、1877年のスーパーエルニーニョと比較する人もいます。

1877年のスーパーエルニーニョでは、その影響でアジアやブラジル、アフリカで長期にわたって干ばつが深刻化し、広範囲にわたる農作物の不作と、5000万人以上の命を奪う世界的な大飢饉(ききん)を引き起こしました。5000万人は、当時の世界人口の約3.5%に相当します。

再び世界規模の大惨事になるの?

今回のエルニーニョが1877年と同じレベルの大惨事を引き起こす可能性は、極めて低いと考えられます。

気象学者のBen Noll氏は、ワシントンポストへの寄稿で、「1877年から1878年にかけてのスーパーエルニーニョによる壊滅的な被害が繰り返される可能性は低いです。なぜなら、被害を悪化させた当時の社会的、政治的、経済的な要因が現在は存在しないからです」と指摘しました。

ただし同氏は、それでも深刻な気象事象が起これば、世界の食料システムに重大な打撃を加える可能性があると警告しています。

1877年当時の「社会的、政治的、経済的な要因が現在は存在しない」といっても、個人レベルに落とし込めば、気象災害にあったら生活を二度と立て直せない人は、経済大国にも大勢います。世界規模の大惨事を避けられたとしても、多くの人に個人レベルの大惨事を経験させる可能性があります。

国連防災機関(UNDRR)によると、今回予測されているエルニーニョは、地域によって不均衡な影響をもたらす可能性が高いといいます。

アジアやオーストラリアでは、干ばつでトウモロコシや米、小麦の生産が落ち込む一方、南北アメリカでは降水量の増加で大豆の生産量が増加する見込みです。

UNDRRは、やばみ感あふれる見解を示しています。

世界が地政学的な激動期を乗り越えようとするなか、標準化された分類ではないにせよ、予想される「スーパー」エルニーニョ現象が、世界のサプライチェーンをさらに不安定化させる恐れがあります。迫り来るエルニーニョは、中東における紛争に起因する貿易制限と時期が重なる可能性が高いです。こうした制限は、すでに海上輸送を立ち往生させ、太平洋を横断するコンテナの輸送費は危機前の水準を40%上回り、重要なヨウ素やリン酸肥料の輸出も制限されています。

数兆ドル規模の損失と、世界平均気温の過去最高更新

2015年から2016年にかけて発生した前回のスーパーエルニーニョ(NOAAによると、ピーク時のニーニョ3.4海域の海面水温偏差は+2.4℃)による世界規模の経済損失は、最終的に3.9兆ドル(約615兆円:1ドル=157円)に達したと研究者は試算しています。

もし今回のエルニーニョが予測通りのエグさになれば、同等もしくはそれ以上の損失をもたらす可能性があります

さらに、スーパーエルニーニョは地球の気温を過去最高の水準に押し上げます。2027年は、観測史上最も暑い年になる可能性が高いです(今年は観測史上2番目に暑い年になりそうな気配)。

大気中に蓄積された余剰熱は、世界中の極端な気象事象をさらに激化させ、干ばつや洪水、台風やハリケーンなどの熱帯暴風雨、山火事などの災害を悪化させると思われます。

現在発達中のエルニーニョがいつ発生するのか、どこまで強くなるのかについて、科学的に正しい表現を用いれば、「現時点では不明」です。エルニーニョ予測には「春の予測の壁」と呼ばれる不確実性があって、早い段階における予測はとても難しいんです。

それでも、ECMWFのアニメグラフを見ればわかるように、月を重ねて不確実性が小さくなるにつれて、エルニーニョの勢力がどんどん強くなっているのは心配材料です。

そして、NOAAやECMWFの予測モデルが「歴史的な強さのエルニーニョ」になることを示している以上、世界の「リーダー」と呼ばれる政策決定者は、エルニーニョ終息後も長期間にわたって続くと考えられる気象への影響や、不安定化する経済に対する準備をいますぐに始める必要があります。

もしかすると、風向きが変わって、上昇中の海面水温がいきなり下がりはじめたり、思ったよりも強くならなかったりするかもしれませんが(可能性はゼロではない)、エルニーニョの強さや世界平均気温の高さに関係なく、気候変動時代を生き残るために、災害にあったときのための準備をしておくほうがいいでしょう。

それにしても、あおられなくても客観的データが十分に怖いレベルまで来ちゃいましたね…。