トランプ氏の健診結果に疑義、医師から詳細欠如の声

先週、ウォルター・リード軍医療センターを後にするトランプ大統領
ドナルド・トランプ米大統領が最近受けた健康診断の報告書について、心臓血管の健康状態を評価する検査結果の詳細が欠けていると指摘する声が複数の医師から上がっている。
これは、医師らが特に具体性に欠けるとして指摘した報告書のいくつかの項目の一つだ。トランプ氏は5月26日、ウォルター・リード軍医療センターで約3時間を過ごし、年次健康診断の一環として一連の検査を受けた。
トランプ氏の主治医であるショーン・バルバベラ海軍大佐は、5月29日遅くに公開された報告書で、トランプ氏は「心臓、肺、神経系、そして全体的な身体機能において、依然として非常に良好な健康状態を維持している」と記した。
バルバベラ氏はトランプ氏の心臓の健康状態について、心臓の動脈の狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)を調べるために通常実施される冠動脈CT血管造影検査、音波を使って心臓の画像を作成する心臓超音波検査、そして人工知能(AI)を活用した心電図解析の結果を引用した。バルバベラ氏は、AI解析によってトランプ氏の心臓年齢が実年齢の79歳より14歳若いと推定されたと述べた。
しかし、ホワイトハウスの報告書には、トランプ氏の心臓機能が正常であるというバルバベラ氏の診断を裏付ける、こうした検査から通常得られる重要な情報が含まれていなかった。同氏はまた、頸(けい)動脈の超音波検査で正常な結果が示されたと述べたが、具体的な数値は示さなかった。
テキサス州の血管外科医、ウィリアム・シュッツェ氏は、「別の医師に送る報告書を作成するとしたら、頸動脈超音波検査についてもう少し詳しく記載していたと思う」と述べた。「(コレステロールなどが原因の)プラークがどの程度蓄積しているかについてもだ。なぜなら、ほとんどすべての人がそこに何らかのプラークの蓄積があるからだ」

主治医のショーン・バルバベラ氏は、トランプ氏が依然として非常に良好な健康状態を維持していると述べた
トランプ氏の心臓の健康状態を十分に評価するためには、カルシウムスコア、動脈内のプラークの有無、そして動脈の狭窄を評価するCAD-RADSスコアが必要だと、他の医師らは述べている。報告書には心臓や主要血管に「動脈閉塞や構造的異常はない」と記されているだけで、これは単に閉塞がないことを意味するに過ぎない可能性があるという。
心臓超音波検査から得られる駆出率(心臓が収縮するたびに拍出される血液の割合)などの詳細情報は、トランプ氏の健康状態をより包括的に把握するために役立つだろう。同氏の2018年の報告書には駆出率の測定値が含まれていた。
米国人が高齢の指導者を選ぶようになるにつれ、大統領の健康状態は一層厳しい目で見られるようになっている。トランプ氏は約2週間後に80歳を迎える。前任のジョー・バイデン氏は82歳で退任した。
ホワイトハウスのスティーブン・チャン広報部長は、「トランプ大統領は、歴代大統領の中で最も詳細な健康情報を公表しており、その健康状態は極めて良好だ」と述べた。また、担当していない患者の健康状態について臆測を述べる外部の医師を批判した。大統領が健康データを共有することを義務付ける法律や規定は存在しない。
ホワイトハウスは声明で、5月29日夜に公開された報告書について、診断の総合的な所見を提供することを目的としていたと述べた。具体的な結果が記載されていないことは、臨床的に意味のある異常が認められなかったことの裏付けと捉えられるべきだとした。
バイデン氏は4年間の任期中、年次健康診断では高い評価を受けていたにもかかわらず、同氏には衰えの兆候が見られた。同氏は2024年6月の討論会で惨敗し、数週間後に再選に向けた選挙活動を断念した。
バイデン氏の主治医らは、前立腺がんの発見に役立つ前立腺特異抗原(PSA)値を算出する検査を実施していなかった。同氏は大統領退任直後、骨に転移した進行性前立腺がんと診断された。医師らは、同氏の健康診断にPSA検査が含まれていれば、ほぼ確実に早期発見できたはずだと述べている。
トランプ氏の健康診断にはPSAスコアが含まれており、1ng/mLと報告されている。これは以前のスコアより高いが、依然として健康的な範囲内に十分収まっている。加齢とともにスコアが上昇するのは正常なことだ。
報告書は、トランプ氏が健康上の問題を抱えていることが知られている他の重要な分野でも詳細を欠いていた。同氏は昨年、ウォルター・リード軍医療センターに3回通院しており、その中には下肢の腫れの治療も含まれていた。担当医はこれを慢性静脈不全と診断した。高齢者によく見られる症状で、静脈内の逆流防止弁が正常に機能しなくなることが原因である。
報告書には「下肢にわずかな腫れがある」と記載されており、慢性静脈不全と診断された昨年より「改善している」と記されている。改善の理由は示されていない。トランプ氏は数カ月前にウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、一般的な治療法である弾性ストッキングの着用を嫌がっていると語っていた。治療なしに症状が改善するのは異例だと医師らは述べている。
ホワイトハウスは、この症状の重症度は時間の経過とともに変動する可能性があると指摘した。
トランプ氏のコレステロール値や服用薬も、報告書を読んだ複数の医師の目に留まった。数値は非常に良好で、HDL(善玉コレステロール)値は70mg/dL、LDL(悪玉コレステロール)値は53mg/dLだった。
報告書によると、トランプ氏はコレステロール管理のためにロスバスタチンとエゼチミブを服用している。ジョージア州の血管外科医、ダニエル・トレント氏は、「これほど優れたコレステロール値はなかなか見られない」とし、「通常、これほど良い数値になるまで患者を管理することはない」と述べた。
ホワイトハウスは、トランプ氏の数値は、期待される治療効果および確立された心血管疾患予防目標と一致していると述べた。
また、報告書には今年に入って見られた首の発疹についての記述も一切なかった。3月初旬に発疹が現れた際、バルバベラ氏は、トランプ氏が皮膚疾患の予防クリームを使用していると述べたが、具体的な疾患名は明かさなかった。

今年に入り、トランプ氏の首に発疹が見られた
過去の報告書には、トランプ氏の皮膚の状態についてより詳細な記述が含まれていた。昨年の報告書には軽度の日光による損傷などが記録されていた。今回の報告書には同氏の手に現れるあざについての記述がある。バルバベラ氏はあざについて、「軽度の軟部組織への炎症」だとし、「頻繁な握手」と「アスピリン療法の副次的効果」によるものと説明した。
トランプ氏は数カ月前にWSJに対し、「心臓にサラサラの血液が流れるようにしたい」という理由から、医師の推奨量よりも多くのアスピリンを服用していると語った。バルバベラ氏は当時、トランプ氏は「心臓病予防」のためにアスピリンを使用しており、1日当たり325ミリグラムのアスピリンを服用していると述べた。今回の報告書には、現在の服用量は記載されていない。

報告書には、トランプ氏の手のあざについて記載されている
ホワイトハウスは、5月29日に公開されたような報告書の要約版に記載される薬剤リストは、読みやすさと関連性を考慮して省略されることが多いと述べた。ホワイトハウスは声明で、「特定の薬剤、用量、または既往歴に関する記述がないからといって、モニタリングや治療が行われていないと解釈すべきではない」と述べた。
今回の報告書に過去の報告書で詳述されていた症状についてほとんど言及されておらず、重要な分野における標準的な詳細が欠けているため、トランプ氏の健康状態を完全に把握することはできないという声が複数の医師から上がっている。
シュッツェ氏は「報告書は、彼の年齢にしてはあまりにも出来すぎている」とし、「これは都合よくゆがめられた内容のように見える」と述べた。