50歳のおっさんが15年ぶりにパソコンを自作した話
こんにちは、アスキーのPC自作大好き集団「ジサトラ」のイッペイです。今年で43歳を迎え、PC自作歴は20年になります。昨年、PC自作の伝道師の称号たる「インテルPCマイスター・上級」を取得してからは、いっそう業界を盛り上げるべく奮闘しております。

一度は落ちたインテルPCマイスターの上級試験ですが、補講で合格しました。こちらはその証明となるバッジです。上級試験はかなり難易度が高く、合格率は数%の狭き門なのです
編集部の若手の育成はもちろん、KTUことテクニカルライターの加藤勝明さんといっしょに毎週木曜日20時から「ジサトラKTU」という生放送番組で、PCパーツの最新情報をわかりやすく紹介しています。
そんな僕のもとに激アツな情報が飛び込んでまいりました。なんと、インテル株式会社の代表取締役社長である大野誠(おおのまこと)さんが15年ぶりにPC自作をするとのこと。
えっ!? エライ人もPC自作ってするもんなの!? なんか勝手にそういうレイヤーの人は100万円ぐらいのBTOパソコンPCをサクッと買ってるもんだとばかり思ってました。すみません……。
でもそれなら、インテルPCマイスターの上級保持者としては、是が非でも「最高のPC自作体験」にしてあげたい。そんな老婆心から「取材」という名目で潜り込み、そっと大野さんのPC自作をサポートすることにしました。だって心配だもの。

15年ぶりに組むとなると、当時とはPCパーツの規格も組み方もだいぶ違うけど大丈夫かしら? ということで、私ジサトライッペイが陰ながらサポートします
というわけで、本稿ではそんな大野さんの15年ぶりPC自作の模様をお届けします。ちなみに、大野さんは今年で50歳を迎えるそうな。50歳と言えば、団塊ジュニア世代。以前行った「ジサトラ国勢調査」では、最もPC自作erが多かった世代ですが、果たして……。

構成は社内の若手に相談したという大野さん。ケーブルレイアウトで苦労しそうな、ピラーレスPCケースや簡易水冷クーラーがしれっと混ざっている点が気になりました。これは時間がかかるような……
変わったものと変わらないもの、PC自作の今と昔
いまさらPC自作の手順をだらだらと本文で解説してもあれなので、ここからは写真を中心にご紹介します。

まずはPCケースを開梱。現場には大人が数名いましたが、基本は誰も手伝いません。アドバイスはしますが手を出すのは違うかなと。せっかくの久しぶりPC自作。ソロプレイでじっくり楽しんでもらいましょう

片側面と前面が強化ガラスのピラーレスPCケースと向き合う大野さん。昔はこんなデザインなかったですもんね。興奮と不安が入り混じったご面相。ちなみに、PCケースはAntecの「Constellation C7 ARGB WHITE」でした

落ち着くために付属のアクセサリーボックスを開梱。1つずつ内容物をテーブルに並べていきます

お次はマザーボード。無線LANとBluetoothのアンテナに興味津々です。今はもはやざらですが、たしかに昔のデスクトップPCにはなかったものの1つですよね

やはりマザーボード(ASRockの「Z890 STEEL LEGEND WiFi」)の付属物はテーブルにすべてひろげています。これが大野さんのスタイルなのかもしれません

CPUはもちろん、インテルの「Core Ultra 7 285K」。やや恥ずかしそうな表情が印象的です。なんとなしに気持ちはわかります。僕も週刊アスキーを持って写真を撮られたら同じような表情になりますもの

CPUのBOXからは、バッジシールが付いた説明書も取り出します

マザーボードにCPUを装着。15年ぶりでもLGAソケットの機構はそう様変わりしていないので、なんなく完了しました

メモリーはCrucialの「CP2K32G64C40U5W」(32GB×2、DDR5-6400)。こちらもカラーはホワイト。トレンド押さえまくってますね

メモリーを挿す前のスロットラッチを開ける工程で場所をミスる大野さん。昔はCPUソケットの最寄りのスロットを使うマザーボードもありましたが、イマドキは外側で1レーンおきに挿すモデルが一般的なのです

ストレージはWestern Digitalの「WD_Black SN7100 NVMe SSD WDS200T4X0E」(2TB M.2 SSD、PCIe 4.0)。15年前だとまだSATA接続のSSDが普及し始めたばかりですから、M.2モジュールはお初

M.2 SSDが初めてなら、当然M.2スロットのヒートシンクの取り扱いも初見です。とはいえ、最近のマザーボードではツールレスで外せる気の利いたモデルもあります。こちらもその1つ

ジャケットを脱ぐ大野さん。「そうそう、PC自作って暑くなるんだった」と再確認しておりました。完全に同意です。なんなら僕は冬場でも汗だくになります
ピラーレスPCケースと初対戦
さて、ここからはいよいよPCケースに組み込んでいきます。PCケースは15年前にはなかったピラーレスタイプ。光学ドライブやHDDのベイがない「PC自作の今」を代表するようなモデルです。

組み込み前にPCケースの説明書をじっくり読み込む大野さん。これは好感が持てるスタイルです。最近の若手はわからないとやれYouTubeだXだと、公式サイトや説明書を見ない輩が多いんですよ。でも、これが最もシンプルにして最も正しい「初手」なのです

着脱できる天板に感心する大野さん。この手のPCケースも簡易水冷クーラーの普及で増えましたよね

今回のマザーボードは通常のATXにもう1つネジ穴があるタイプとアドバイスを受け、スペーサーを追加

I/OパネルとPCケース背面の開口部を合わせて、マザーボードをネジどめしていきます。このあたりの作業は昔ながらですね

電源ユニット(Super Flowerの「LEADEX III GOLD 850W ATX 3.1 SF-850F14GE」)でも大野式開梱術が炸裂。この「とりあえず全部出していくスタイル」はある程度広いスペース(今回だと貸し会議室)がないとできない荒業なので、ご自宅でやる場合は1個ずつ箱に出し入れしながら作業を進めてください

脱着できるフルモジュラーケーブルに感動する大野さん。たしかに昔の電源ユニットのケーブルはほとんど直に生えてましたよね。このあたりも15年ぶりのPC自作だと新鮮かもしれません

各PCパーツの説明書とにらめっこし、必要なケーブルを選りすぐって電源ユニット本体に挿していきます

PCケースの電源ユニット用フレームを取り付けてから組み込みます

電源ユニットを組み込んだらいよいよ配線です。まずは若干難易度が高めのCPU補助電源用の4+4ピンから

PCケースファンやARGB LEDのハブ用電源(SATA)も忘れずに。初手で説明書をしっかり読み込んでいたので、スムーズに進行してました。このあたりは経験者の強みです。「SATA」とか「XXピン」とか、用語を事前に知っているだけでもかなり大きなアドバンテージだと思います

大野さんはとにかく作業中何度も説明書を確認しておりました。そして、行きついた先がこのツイステッドフォーム。この泥臭さ、たまんないですね。何でもかんでもスマートにこなそうとする現代の若者にこそ、見てもらいたい姿です

細かなフロントピンヘッダーのピンアサインなど、「あ、ここは進化してないんだ」という反応も。いや、コネクターになっているモデルもあるんですけどね。まだ一般的とは言い難い普及率なのです……
15年前にはなかった簡易水冷クーラーに苦戦
大野さんが最も苦しめられた工程が簡易水冷クーラーの取り付け。15年前にはなかったPCパーツですから、昔の経験を生かしづらい難易度高めの工程になります。

今回の構成の大ボスである簡易水冷クーラー(Antecの「Vortex Lum 360 ARGB White」)。もちろん、こちらも大野式開梱術で領域展開済みです

まずは簡易水冷クーラーをどの向きで組み込むかをイメージするところから。この確認を省くと、あとで痛い目にあうことも……

まずはラジエーターにファンを固定します。ネジどめは「最初は軽く、最後にしっかりしめる」を徹底しておりました。ここも経験者ならではの知見ですな

再び説明書と対峙する大野さん。簡易水冷クーラーは構造が複雑なので、ここは慎重にいきたいところ

水枕まわりのリテンションパーツを取り付け

マザーボードの裏側からバックプレートを装着

CPUのグリスは5点盛りが大野流

ラジエーターは隙間に一時待機させ、水枕を固定します

ラジエーターをネジどめして

ケーブルを接続すれば、簡易水冷クーラーの組み込みは完了です。大野さんのお顔もだいぶ疲労の色が濃くなってまいりました

最後はビデオカード(ASRockの「Intel Arc B580 Steel Legend 12GB OC」)です。まずは拡張スロットのブラケットカバーを外します

ビデオカードを固定して、6+2ピンの補助電源ケーブルを接続
超久しぶりのPC自作、感動のフィナーレ
ケーブルレイアウトなどの微調整を施し、いよいよあとは電源を投入するのみとなりました。はたして、無事起動できるのか……!

ケーブルレイアウトを入念にチェック

強化ガラスパネルの保護フィルムをはがします

いざ、電源を投入

待つこと数秒、BIOSがあがってきました!
というわけで、大野さんは見事15年ぶりのPC自作を完遂しました。しかも、終わってみれば作業時間は2時間41分の好タイム。簡易水冷クーラーありの構成なら結構早いほうだと思います。
もちろん、途中インテルの若手社員の矢内洋祐(やないようすけ)さん(28歳、PCパーツ構成のチョイスも担当)や、インテルPCマイスター・上級である僕のアドバイスもありました。
しかし、基本的には説明書と対峙しながら、大野さんおひとりで組み上げております。昔の経験が生きることもあれば、新しく知った部分もあり、その両方を楽しみながら作っておられるように見えました。

矢内さん(左)と僕(右)も入り、15年ぶりに大野さんが組んだPCと記念撮影。いろんなPC自作の取材をしてきましたが、僕はこの完成後のひと幕がすごく好きなんですよね。やっぱり「パソコンを作る」ってすごく楽しくって、すごくうれしいことなんだと再認識できるから
まとめ:結婚しても子どもができてもいつか再燃する、PC自作熱
インテルは最近、「自作PC」に代わる新たな言葉として、「カスタムPC」という表現を使うようになりました。これは既存のPCでビデオカードを交換したり、メモリーを増設したりする行為も含み、自作PC未経験者の間口を広げる狙いがあります。
パソコンに限らず「なにかを作る」という行為は、コスパもタムパも高い完成品が多く流通している現代においては、かなり嗜好性の高い趣味になっています。ありていに言えば、「効率が悪い」行動様式とも言えるでしょう。
しかし、ガンプラやミニ四駆などもそうですが、「作る行為」そのものに代えがたい魅力があるものは、結婚や育児などでライフスタイルが変わっても、ある日いきなり再燃することもあります。自作PCだってそうなんです。
大野さんは昨年6月にインテル株式会社の代表取締役社長に就任。そのプレッシャーもいくばくたるやという感じですが、そんな年末の大掃除の時に自宅で昔組んだPCを発見し、「当時の懐かしさに加えて、OSが起動したときの感動、後にメモリーを増設したことなど、記憶が一瞬にして蘇った」そうです。
そして、今回15年ぶりにPCを組むことを決意されたわけですが、ふだん会見で見せる社長然とした姿とは異なり、最新PCパーツと"楽しそうに”悪戦苦闘する様子はすごく共感が持てました。この「熱」が、50歳の方のみならず多くの世代に届くものだと信じて、筆をおきます。

最後の最後に、CPUのバッジシールをPCケースに貼った大野さんですが、気がゆるんだのか、やや角度がずれてしまいカッターではがしました

しかし、その時ちょっと電源ボタンにキズをつけてしまい、すごく凹んでらっしゃいました。これも時が過ぎればいい思い出になりましょう