フランス製RPGが日本ゲームの影響で世界的ヒット

美しくも崩壊したファンタジー世界が舞台のフランス製RPGが話題に。しかも日本のRPGから大きな影響を受けている(画像:Steamより)
「日本のゲーム」といえば何を思い浮かべるだろうか。いまは回答がかなり多様になっていると思われるが、一昔前であればやはりRPG(ロールプレイングゲーム)だったといえよう。
【写真で見る】あと1年で消滅してしまう年齢の人たちを集めた「第33遠征隊」のメンバー。なかには若そうな人物もいるが、彼女は物語においてかなり重要な存在となっている
90年代はRPGが特に目立っていた時代であり、これこそが日本のゲームといえるほどだった。そこから時間が経ち、一時期こそ日本のRPGは揶揄されることもあったが、いまやJRPG(日本のRPG)が世界でもファンの心を掴むようになっている。
2025年4月24日に発売された『Clair Obscur: Expedition 33』(以下、『エクスペディション33』と表記)は、JRPGから影響を受けたフランスのゲームである。

Metacriticでは「Must-Play」の評価を獲得、ユーザー評価も高い。今年のゲーム・オブ・ザ・イヤー候補のひとつといえる(画像:Metacriticよりキャプチャー)
PCプラットフォームであるSteamの同時接続人数は14万5000人を超え、レビュー集積サイトであるMetacriticの平均点は100点中92点。そして、全世界累計販売本数は200万本を記録している。
ファンからは「フランス生まれのJRPG」などと呼ばれており、それが高評価かつ世界的ヒットになっているわけだ。
あらゆる要素が「日本のRPG」に似ているゲーム

あと1年で消滅してしまう年齢の人たちを集めた「第33遠征隊」のメンバー。なかには若そうな人物もいるが、彼女は物語においてかなり重要な存在となっている(画像:Steamより)
『エクスペディション33』は、「ペイントレス」と呼ばれる存在によって人類に呪いがかけられている世界が舞台となっている。
その呪いとは、書かれた数字と同じ年齢の人が消え去ってしまうというもの。ゲームをはじめてすぐペイントレスによって「33」と書かれ、その年齢の人たちが消えてしまうのである。
ペイントレスが書く数字は徐々に小さくなっているため、このままでは人類は成り立たなくなる。その運命から逃れるため、人類は32歳のメンバーで構成された「第33遠征隊」を送り込み、ペイントレスを倒すべく過酷な冒険がはじまるのであった。
JRPGに親しんだ人ならば、『エクスペディション33』をはじめてすぐに「JRPGの影響」を随所に感じ取るだろう。
遠征隊が着ている服は黒を貴重としたデザインで、複雑な装飾がついている。これはどうも近年の『ファイナルファンタジー』シリーズの影響を感じさせるものだ。

世界は崩壊しつつあり、いわゆるポストアポカリプスものといえる。エッフェル塔のような建物も登場する(画像:Steamより)
『エクスペディション33』の世界はファンタジーなので、独特の固有名詞がたくさん出てくる。あまりにもたくさんの独自ワードが出てくるので混乱しやすく、これは『ファイナルファンタジー13』を彷彿とさせる。
本作のバトルはコマンド選択式である。つまり「戦う」「スキル」などのコマンドを選ぶような形式であり、これは『ドラゴンクエスト』をはじめとするさまざまなJRPGタイトルでよく見る定番の(むしろやや古い)手法である。
同時に、バトルにはいくらかアクション要素も含まれている。JRPGにも同様の仕掛けを用意したゲームはあり、たとえば『スーパーマリオRPG』あたりは有名である。
ムービーがやたら長いのもJRPGらしいし、いきなり闘技場という要素が出てくるのもJRPGの定番だ。確かに、このゲームにはJRPGに似た要素が多いのである。
また、『ファイナルファンタジー』の生みの親として知られる坂口博信氏の作品、『ロストオデッセイ』との類似性を指摘する人も多い。実際、開発チームはその作品から大きな影響を受けているそうで、『エクスペディション33』はJRPGの遺伝子が色濃く感じられる作品になっている。
古いバトルシステムに流行の「パリィ」を取り込む

『エクスペディション33』のバトルでは、「攻撃」「スキル」「アイテム」などを選択して戦っていく。ただし、特殊な行動がいくつか用意されている(画像:Steamより)
とはいえ、JRPGも進化を続けている。オープンワールドを採用する作品もあるし、日本のRPGにおいてもコマンド選択式バトルを避けるケースもある。
もともと「たたかう」や「じゅもん」といったコマンドを入力して戦うのは、ゲーム機の表現力の限界があったからそうしていたのであって、アクションゲームのような実装が可能ならばそうなるのが自然な流れといえる。
記事執筆時点のナンバリング最新作『ファイナルファンタジー16』は完全なアクションRPGになっているし、2025年秋発売予定の『Pokémon LEGENDS Z-A』もアクションに寄せている。いまやFFもポケモンもそうなっているわけだ。
ふつうのコマンド選択式バトルは見ているだけの時間が多く退屈で、古いゲームがリマスターされるとたいてい倍速が標準搭載となるくらいである。
そんななか『エクスペディション33』はコマンド選択式バトルを採用しているわけだが、同時にいま流行の「パリィ」という要素を取り入れている。
パリィはいわゆるジャストガードである。タイミングよく敵の攻撃をはじくことができれば、カウンターができるなど大きなメリットを得られるが、失敗するとそのままダメージを受けてしまうといったシステムだ。
このパリィは非常におもしろいゲームシステムで、アクションゲームでは当たり前のように搭載されている。パリィはタイミングを図るのが難しいものの、成功させたときに大きなメリットを得られると同時に、失敗したときに大ダメージを受けてしまう。これはゲームのおもしろさのひとつである「リスクとリターン」をうまく作り出せており、優れた駆け引きになっている。
パリィのおかげで、『エクスペディション33』はバトル中に退屈することはない。極端な話、キャラクターのレベルが低くてもすべてパリィできれば勝てるのだから、これは集中しないわけにはいかないだろう。
もちろん、本作にはキャラクターの育成、スキルによる仲間同士のコンボ要素などもある。パリィが苦手ならふつうにキャラクターを鍛えてレベル上げをすればよく、プレイヤーにさまざまな可能性を提示しているわけだ。
グラフィックもサウンドも見事だがストーリーは唐突

主人公のギュスターヴ。恋人を失ったのちに遠征隊として旅立つ(画像:Steamより)
『エクスペディション33』はフランスのベル・エポック(美しい時代の意、19世紀末のパリが華やかだった時代)をテーマにしたグラフィックも優れているし、クラシックやシャンソンなどを採用したサウンドも魅力的だ。
気になるところがあるとすれば、ストーリーである。ファンタジーものなので固有名詞がいろいろ出てきて混乱させるのは仕方のないところなのだが、流れが唐突なのはかなり癖があるといえよう。
そもそも本作では、ゲームをはじめてまもなく主人公の恋人が死んでしまう。これはペイントレスの呪いの恐ろしさ、怖さをプレイヤーに伝えるためのものと思われるのだが、しかし急に主人公の恋人が死んだところでどう反応すればいいのだろうか。
それこそ『ファイナルファンタジー7』のように、仲間として一緒に過ごしていたキャラクター(しかも恋愛感情といえるようなものが見て取れる間柄)が死んでしまったら驚くし悲しいわけだが、いきなり誰かの恋人が死んだと言われても、適当に「お悔やみ申し上げます」と返すほかない。
これ以外にも唐突なストーリー展開が多く、もっと段階を踏んだ物語にしてほしいと感じたのが正直なところである。こういったストーリー展開は、JRPGではなかなか見られないかもしれない。
日本のゲームが世界に影響を与えているのは確実

スキル演出のカッコよさはかなりのもの。リアル等身のキャラクターだと地味な動きになりやすいのだが、本作はファンタジーのよさが活きている(画像:Steamより)
さて、ここまで何度も「JRPG」という単語を書いてきたが、実はJRPGとは定義が難しいものである。
『エクスペディション33』は前述のようにフランス生まれのゲームらしさを持つし、開発者は「アートワークにおいてはJRPGを真似していない」と明言している。そもそもフランス生まれでは「J」ではないだろう。
RPGの源流はテーブルトークRPG(紙・ペン・サイコロなどを用いて卓上で遊ぶゲーム)であり、そこからコンピューターで遊ぶRPGが生まれた。日本で大きなブームのきっかけとなったのはさらにその後に出た『ドラゴンクエスト』シリーズであり、一口にRPGといってもいろいろな流れがある。
その後も日本ではさまざまなRPGが登場した。『ファイナルファンタジー』、『ポケットモンスター』、『サガ』、『テイルズオブ』、『ペルソナ』、『ゼノブレイド』など、一口にJRPGといえどもさまざまな内容・方向性となっているうえ、日々進歩している。傾向はあれどJRPGとは掴みどころのないジャンルといえる。
少なくとも確実にいえるのは、そういった日本のRPGの流れを汲んだ作品のひとつが『エクスペディション33』なのである。日本のゲームが世界に影響を与え、そこから高く評価される作品が生まれたのだ。遠いフランスのゲームといえども、日本人が注目するのは当然といえる。