重度障害児の“安楽死容認”医師投稿に波紋 育てる母親「到底理解できない」、一方で芽生える「投げ出してしまいたい」感情 “当事者”野田聖子氏と考える必要な支援

■「筋ジストロフィー」を抱える娘と毎年海水浴や旅行へ, ■次男が医療的ケア児、自治体ごとに感じる“窓口格差”, ■“当事者”野田聖子衆院議員「井関さんもイエローさんも過労」, ■医療的ケア児の社会との繋がりは 一人暮らしはどう実現?

重度障害児の“安楽死容認”医師投稿に波紋 育てる母親「到底理解できない」、一方で芽生える「投げ出してしまいたい」感情 “当事者”野田聖子氏と考える必要な支援

■「筋ジストロフィー」を抱える娘と毎年海水浴や旅行へ, ■次男が医療的ケア児、自治体ごとに感じる“窓口格差”, ■“当事者”野田聖子衆院議員「井関さんもイエローさんも過労」, ■医療的ケア児の社会との繋がりは 一人暮らしはどう実現?

先日、話題となったある医師の投稿、その内容は「重い障害を持ち生まれた子どもには『安楽死』が認められる社会が良い」というものだ。前提としては、「両親が育てると決めたら全力で応援する」ということだが、「『生んだなら死ぬまで親が責任を持て』というのはあまりにも無慈悲すぎる」と訴えている。

ネットでは批判的な声が目立つ一方で、「親の人生が全部その子の介護に注がれるのは受容できない」「『産まなければ…』と思う親がいても不思議じゃないくらい過酷だろう」という意見も。『ABEMA Prime』では、2人の当事者と、自身も医療ケア児を育てる野田聖子議員と考えた。

■「筋ジストロフィー」を抱える娘と毎年海水浴や旅行へ

生まれつき筋肉が徐々に弱くなる「筋ジストロフィー」という疾患を抱える、井関ゆうなさん(23)。20歳の時に誤嚥性肺炎を起こし、医療的ケアが必要になった。それでも毎年、海水浴や旅行などに出かけ、家族で充実した生活を送っているという。

■「筋ジストロフィー」を抱える娘と毎年海水浴や旅行へ, ■次男が医療的ケア児、自治体ごとに感じる“窓口格差”, ■“当事者”野田聖子衆院議員「井関さんもイエローさんも過労」, ■医療的ケア児の社会との繋がりは 一人暮らしはどう実現?

ゆうなさんの養育は朝6時の朝食の注入・吸引・服薬などから始まり、7時におむつ交換、9〜16時はデイ出張、18時に夕食の注入・吸引・服薬をし、21時に入眠する。ただ、これは一例で、他にも朝まで3〜5回の覚醒(1時間おきの日も)、吸引・体位交換などが発生する。通所ケアを受けられるまではさらに大変な状況だった。

母親の宏美さん(46)は、「日常的なケアで大変なのはやはり吸引。時間が決まってなく、寝ていようが、ご飯を食べていようが、お風呂に入っていようがしなくてはいけない。ちゃんとした睡眠がとれないので、自分自身の思考能力が落ちてしまうことがある。誰かに助けてと言っても、『頑張れよ』と思われるんじゃないか」との思いを語る。

医師のネット投稿について、「到底理解できるものではないし、不快で嫌悪感しかない」と批判し、「私たちが言いたいのは安楽死云々ではない」と訴える。「助けてもらえるような制度の整備を一緒に考えてほしい、子どもの命が両肩に乗っているのを半分助けてくれないか、というのが投げかけたいこと。もちろん、社会に丸投げするつもりなんてない。ただ、今回の投稿で追い詰められたりする親が出てきたり、安楽死を認めるということを理由に『こういう選択ができるのにお前はしないのか』と圧力がかかるような世の中になるのでは?知らないところで命が奪われてしまうんじゃないか?という恐怖はすごくある」。

一方で、「投げ出してしまいたい」という思いが生まれる時もあるという。娘は大切な存在であることに変わりはないものの、それでも「口をふさいでしまいたい」「この子がいなければ」と考えたことも。また、誰も助けてくれないことの孤独感、医療的ケア児の事件を見聞きする度に「他人事ではなく、明日は我が身」だと感じている。そのため、「レスパイト(一時休養)」できる選択肢の必要性を訴えている。

■次男が医療的ケア児、自治体ごとに感じる“窓口格差”

イエローさん(仮名、40代女性)は、夫、長男(4)、次男(1歳1カ月)の4人暮らしで、次男が医療的ケア児、長男には発達特性の兆候がある。神戸出身で、2019年からは千葉県に居住。自治体の支援をめぐって奮闘している最中だ。

■「筋ジストロフィー」を抱える娘と毎年海水浴や旅行へ, ■次男が医療的ケア児、自治体ごとに感じる“窓口格差”, ■“当事者”野田聖子衆院議員「井関さんもイエローさんも過労」, ■医療的ケア児の社会との繋がりは 一人暮らしはどう実現?

次男の養育状況は、たんの吸引、おむつ交換、体位交換、薬(目薬・飲み薬)を一日を通して行うほか、よだれや鼻水が出ている時の吸引、吸引器洗浄、アラーム時の対応などが都度発生する。

イエローさんは「出生直後に脳に深刻なダメージを負ってしまい、寝たきりで自発呼吸もあまりないので、人工呼吸器が必要。その管理と、痰の吸引、体位交換など身の回りのことを全てやっている。定刻で予定していること以外にも、酸素を計測しているモニターのアラームが鳴ったら原因を探す」と話す。

壁に感じているのが自治体の“窓口格差”だという。自身の傷病のため市にヘルパー利用を相談するも「使えない」と回答、障害福祉サービスを受けるために「受給者証」が必要だが発行されない(両親が健常だと「育児」としてしか支援できない)、行政からサービスの説明はなく親が調べて探す必要があるといった対応を余儀なくされてきた。

「支援を受けるため、行政に行って相談・申請をするが、一つひとつの手続きがまず大変。説明して理解してもらうのに苦労するし、そもそもそういう制度があることがわからない。1歩進むのにかなりの壁を乗り越えないといけないと感じる。また、今は育休で仕事を休んでいるが、育休明けに働ける見込みが立っておらず、辞めないといけない確率が高い状況への不安もある」

■“当事者”野田聖子衆院議員「井関さんもイエローさんも過労」

医療ケア児の長男(14)を持つ自民党の衆議院議員・野田聖子氏は、「国会で安楽死について少しずつ議論が起きているが、これは自らの意思。子どもたちは自らの意思で死を選ぶわけではないので、今回の投稿は筋違いの話をしている」と指摘。

■「筋ジストロフィー」を抱える娘と毎年海水浴や旅行へ, ■次男が医療的ケア児、自治体ごとに感じる“窓口格差”, ■“当事者”野田聖子衆院議員「井関さんもイエローさんも過労」, ■医療的ケア児の社会との繋がりは 一人暮らしはどう実現?

一方、親が置かれる状況については、「私の場合、夫が仕事を辞めてくれて国会議員の仕事ができているが、大概は“お母さんが諦めなさい”と病院から申し渡される。数人の看護師がローテーションで行う仕事を、医療知識のない母親が1人でやるという現実を知っていただきたい。過労死が問題になっているが、井関さんもイエローさんもいわゆる普通の労働と同じ過労の状態だ。眠ったり1人で何かできる時間を確保したいというのが、私たちが法律を作った時の目的で、子どもが学校に行っている間に休息ができたり、働くことができるだろうと。そういう工夫をしていくことで社会と共存できるし、“こういう子がいるんだね”という寛容が生まれてくる」と語る。

2021年9月、医療的ケア児の健やかな成長を図るとともに、家族の離職を防止することを目的とした「医療的ケア児支援法」が施行された。国・地方公共団体などの責務を明らかにし、保健所や学校などに対する支援、家族の日常生活における支援を実施。医療的ケア児支援センターの設置や、地域ごとに医療的ケア児支援体制の整備を図り、来年の改正に向けて議論が始まった。

野田氏は、「そもそも数年前までこの国に医療的ケア児という存在はなく、他の障害の歴史から比べると、窓口ができても知識がないだろうというのが1つ。また、福祉の方向性を国で決めても、残念ながら各地方自治体の私権がある。それをなるべく平準化したいと思って国で法律を作り、(医療的ケア児)支援センターを作ることで情報を横展開するという状況が、今ようやくついてきた。ただ、学校に行けない子どもがまだいること自体、義務教育の方針と反目し合っているので、そういうところから丁寧に法律を改正していきたいと思っている」と述べた。

■医療的ケア児の社会との繋がりは 一人暮らしはどう実現?

医療的ケア児との外出について、宏美さんは「1人で連れて出るのはすごくハードルが高い」、イエローさんは「1歳なのでベビーカーを使って移動しているが、重たい機器などを積んでいる。何度か転倒しそうになって、呼吸器の水が入って真っ青になってしまったことがこの2カ月の間にあった。外に出ること自体が命がけの状態」と、難しさを話す。

野田氏は「私も退院時に『余命がいつかわからない』と言われたので、生きている間にいろいろな思い出を作ろうと、酸素ボンベを担いであちこちに行った」とした上で、「呼吸器を付けているのを見ると、一般の人は集中治療室のイメージが強いのでぎょっとすると思うが、目に慣れてもらうことが大事だ。外との繋がりとしては、地域の幼稚園、保育園から始まって、小学校、中学校に当たり前に行けるように整備をすること。子どもとっての一番大事な社会との関わりは教育の場なので、そこに親の介護・付き添いなしで行けるのがこの法律のゴールだ」と語る。

■「筋ジストロフィー」を抱える娘と毎年海水浴や旅行へ, ■次男が医療的ケア児、自治体ごとに感じる“窓口格差”, ■“当事者”野田聖子衆院議員「井関さんもイエローさんも過労」, ■医療的ケア児の社会との繋がりは 一人暮らしはどう実現?

そんな中、宏美さんはゆうなさんの“一人暮らし”を考えているという。「前までは私が亡くなったら施設に入れることを考えていたが、私の入院をきっかけに本人が『自分らしく生きたい』と。そのためにはどうしたらいいか、『あんたの生活をそのまま維持するためには、もう1人暮らししかないんちゃうか』と言ったら、『ほな1人暮らしするわ』と返ってきた。医療が必要な彼女ではなく、彼女を主として考えた時、“人としてはそうだろうな”と思って動き出し、重度訪問介護を使ってヘルパーさんに来てもらい始めた。そこもマンパワーが足りなかったり、家の契約のハードルがあったりするが、人と家さえ見つかればできる。できない理由は今のところ見つからないので、“やりたいことを、存分に生きようよ”を目標に動いている」と明かす。

これを受け、野田氏は「医療的ケア児のためのグループホームやシェアハウスはほとんどないので、次の法改正では作っていこうと。私自身、歳をとってから生んで早くお別れしなければいけない。医療的ケア児という“新参者”は一番大変な分、全ての障害者も世話ができると思う。そういうマルチなグループホームを作れるよう、法律の中で取り組んでいきたい」と述べた。(『ABEMA Prime』より)

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