「裏金」処分の世耕氏が自民党復党へ 地方選挙で敗戦続きの高市首相が「歓迎」する理由

 自民党の裏金問題で処分を受けて離党していた旧安倍派幹部の世耕弘成衆院議員が5月28日、自民党の鈴木俊一幹事長に「復党願」を提出した。世耕氏の復党が認められるのは既定路線とみられている。世耕氏の「復党」には、選挙をにらんだ自民党の思惑もありそうだ。

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 自民党幹部のA氏がこう話す。

「高市早苗首相は、世耕氏の復党を歓迎しています」

 世耕氏は裏金問題で2024年4月に党から離党勧告処分を受けて離党した。元経済産業相で参院幹事長も務めた大物で、24年9月と25年10月の自民党総裁選では、出馬した高市氏のために、無所属の立場ながら参院安倍派の議員票をとりまとめたとされている。世耕氏は高市氏と近い関係であり、世耕氏を支援する和歌山の地方議員B氏は、こう言う。

「高市首相になれば、自民党に戻ると以前から話していました。そのタイミングが来たので復党届となったのでしょう」

 世耕氏に限らず、高市氏は裏金問題で処分を受けた旧安倍派幹部の起用を進めてきた。萩生田光一元経済産業相を幹事長代行に起用し、西村康稔元経済産業相を選挙対策委員長、松野博一元官房長官を組織運動本部長に充てた。世耕氏が復党すれば、旧安倍派の「5人衆」と呼ばれた幹部のうち、今年2月の衆院選に出馬しなかった高木毅元国会対策委員長をのぞく4人が“復権”することになる。

 前出の自民党幹部A氏はこう話す。

「世耕氏の復党は、党の和歌山県連での調整も順調に進んでいると聞いているので、そう遠くないでしょう。復党に拒否反応を示す議員も結構いますが、しょうがない事情がある。高市首相は、衆院選で大勝したものの、その後の地方選挙で自民党の負けが続いていることで、選挙に勝てないイメージがついているのを気にしている。世耕氏に復党してもらって、選挙の前に自民党と協力してもらいたいと思っているでしょう」

 前出の地方議員B氏も、こんな話をする。

「世耕先生は今年2月の衆院選で圧勝した後、ずっとお礼で選挙区を回っておられました。そのとき、夏くらいには復党できそうだという話を聞いていました。ちょっと早くなったという感じもしますが、やっぱり選挙が近づいてきたからですかね」

 A氏やB氏の言う「選挙」とは、8月9日に投開票がある和歌山市長選のことだ。

■「紀州戦争」に圧勝した世耕氏

 世耕氏は裏金問題で2024年4月に離党勧告処分を受けて離党した後、無所属として自民党と対立し、「紀州戦争」と呼ばれる激しい選挙戦を勝ち抜いた。

 和歌山では二階俊博元幹事長が「二階王国」と呼ばれる政治力を発揮してきた。だが、24年10月の衆院選では、二階氏が裏金問題の責任をとる形で引退。自民党は二階氏の三男・伸康氏を和歌山2区で擁立し、参院からくら替えして無所属で出馬した世耕氏と争ったが、結果は世耕氏が3万票以上の差をつける圧勝。伸康氏は比例復活もできなかった。

 25年7月の参院選・和歌山選挙区では、自民党は再び伸康氏を擁立したが、世耕氏が“刺客”として立てた無所属で元有田市長の望月良夫氏が大差で当選した。

 そして今年2月の衆院選では、自民党は和歌山2区で候補を擁立せず、県連は世耕氏の支持を表明。世耕氏は余裕で再選を決め、「紀州戦争」は世耕氏の圧勝で幕を閉じた。

■保守分裂になりそうな市長選

 8月の和歌山市長選では、現職市長が引退を表明しており、5月21日にあった立候補予定者説明会には10陣営が出席した。中でも浜田真輔市議、和歌山市選挙区の尾崎太郎県議(自民党)と片桐章浩県議はいずれも保守系で、保守分裂選挙になりそうな様相だ。

 自民党県議のC氏がこう分析する。

「3人とも出馬に強い思いがあるが、自民党の候補者は1人に絞らないと勝てない。当初、無所属の世耕氏は浜田氏を『応援する』という情報が流れた。しかし、尾崎氏とも個人的に親しいという人もいる。自民党の推薦から外れた人が、世耕氏と組んで市長選に出るなんてことになれば厳しいことになる。紀州戦争の再燃は避けたい」

 そして、C氏はこうも話す。

「保守分裂で自民党候補が敗れて、もしあの人にとられたら、えらいことになってしまう」

■「復党は選挙目当てで市民不在だ」

 C氏が名前を挙げたのは、元和歌山市長の旅田卓宗氏だ。5月21日の立候補予定者説明会にも出席していた旅田氏は、和歌山市長に4回当選した実績がある。2003年1月に市内の用地買収をめぐる収賄容疑で逮捕されたが、勾留中に市議選に出馬し、選挙活動ができないなかでトップ当選している。和歌山市議、和歌山県議にも3回ずつ、市長とあわせれば10回の当選をして、選挙にはめっぽう強いことで知られている。2010年に収賄と背任の罪で実刑が確定して服役したが、13年に出所。23年には公民権が回復した。

 旅田氏に話を聞くと、こう自民党を批判した。

「自民党は相変わらず、いろいろともめていますね。国政は政党政治ですが、地方自治は市民が主役です。しかし自民党は、党の名前で市長の椅子をとろうとしている。そのために世耕氏を復党させるというのは、選挙目当ての政党政治であり、市民不在だ」

 長く政治から距離を置いてきた旅田氏は、81歳になる。なぜまた出馬を決意したのか。

「2023年の統一地方選の何カ月か前に、公民権停止が満期になったとマスコミの方から聞かされました。ただ、そのときは選挙に出る考えはなかった。その後、大病を患い、救急車で運ばれた。このまま終わったら人生どうなんだと、政治への強い思いが再び沸いてきた。それに私が市長時代、和歌山市は人口約40万人でしたが、今は35万人ほどで衰退するばかり。この状況を看過できませんでした」

 和歌山市を舞台に、また激しい選挙戦が繰り広げられそうだ。

(AERA編集部・今西憲之)

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