中国製パーツでノートPCを作ってしまったファーウェイ サプライチェーンを構築した制裁からの6年

米国の技術を用いたパーツを輸入できなくなったファーウェイ

あれから6年でついに独自のノートPCを作ることに

 米中関係が悪化する中、中国メーカー独自のCPU/メモリー/ストレージ/ビデオカードなどが続々と登場し、中国製品だけで組み立てたPCでWindowsアプリを動かすことができることを本連載では以前紹介した(「中国独自の命令セットのCPUとパーツを用いた「完全中国製PC」でWindowsアプリが動いたと話題に」)。

ノートPCでもパーツの国産化は100%に迫るという

 同じく中国製品だけで組み立てたサーバーでLLMモデルをトレーニングしたり、ソフトウェアやサービスでも米国製品の代替が可能になるなど、米国が制裁を強化しても、中国独自にテック環境を構築できるようになりつつある。

中国メーカーの技術で揃えたHUAWEI Mate 60 Pro

 この“中国産テクノロジーだけで世界と張り合える”というフレーズは、最近中国でよく報じられる部分で、製品の紹介記事でも「この製品のココがすごい!」という内容以上に「ここまで国産化を達成した!」といった視点が目立っている。

 その背景として、ファーウェイのエンティティリスト入りから始まる逆境を耐え抜いて復活したことは多くの中国人が知るところとなっており、愛国的なストーリーもできあがり、中国人の印象はおおむねすこぶるいい。分解すれば中国製のパーツだらけだ、と愛国心も加わるのか、分解記事を見かける機会が増えた。

高価なHUAWEI MateBook Foldを分解するメディア

 制裁を受けたファーウェイは「HarmonyOS(NEXT)」を開発。スマホ用のSoCとして、8コアCPUすべてが自社開発のHiSilicon「Kirin 9020」、ノートPC用でも同じくHiSilicon製の「Hi 9600」をリリースした。

 3画面スマホの「HUAWEI Mate XT」や折りたたみノートPC「HUAWEI MateBook Fold」といった製品は、ぜいたくなギミックだけでなく、ベンチマークにおいても海外製品に負けないスコアを叩き出し、中国製パーツだけでもここまでできるとアピールする。

 機能も値段も尖っておりだけに、販売数が少なく持ってて自慢できる製品なので転売の対象となり、あっという間に売り切れて一層話題になった(「中国社会でも迷惑がられる転売業者 狙われるのはSwitch 2からライブチケット、病院の整理券まで」)。

最後のグローバルモデルの「Mate 40 Pro」は愛用者が多い

 一方で、このような自体になる前、グローバル向けとしては最後のハイエンドモデルとなった「HUAWEI Mate 40 Pro」は、発売から5年が経過しようとするのにもかかわらず、好きすぎて買い替えることなく使い続けている中国の愛好者がいることはフォローしたい。

 日本でも各メディアやスマホマニアにすこぶる高評価だったこのモデルだが、中国でも当時インパクトを与えた機種だったことは間違いなく、「神機(名機)」扱いをして、「今でも使っている」アピールをよく見かける。中国の反応は愛国的な一枚岩ではなく、あの頃はよかったと思って、使い続ける人もいるわけだ。

 近年、中国各都市では中古スマホ販売のチェーン店ができていることから、筆者もこのメモリアルな機種を1000元台、日本円で3万円台で購入した。うまくすれば中古市場で2万円台で買えるかもしれないので、中古市場に注目してほしい。「HarmonyOSでなくAndroidで……」というニーズに応え、HarmonyOSのAndroid化代行をする業者がEC上でも出店しているのは中国らしい(「中国で中古スマホ市場が真っ当化 中華スマホが安く買えるようになった」)

筆者も中古でMate 40 Proを買ってしまった

フラグシップスマホの国内調達率は制裁開始時点で56%

現在はすでに90%台 制裁開始以前から取り組みは進めていた

 さてファーウェイのハードウェア国産化の話に戻る。同社のMate 60シリーズやPura 70シリーズなどの主力スマートフォンや話題の新PCの国内での部品調達率は90%台とのこと。

 前述のMate 40の後、制裁後にリリースされたMate 40Eでは、ディスプレーはサムスン製からBOE(京東方)製に、ほかにもSoCやイメージセンサー、バッテリーセンサーなどに変更が加わったとされるが、それでも56%だったという数字があるので、現在に至るまでに中国国内でのサプライチェーン構築が確実に進んだと言える。

 また、Mate 40Eの段階でも56%もあったわけで、制裁開始時点ですでに国産化を相応に進めてきたとも言える。きっかけとなったのはファーウェイに先立つ、米国によるZTEへの制裁措置。このことでファーウェイは中国国内でのサプライチェーン構築を強く意識するようになる。

 2018年後半以降、中国メーカーのサプライヤー認証資格の条件緩和やサプライチェーンの選定強化、購買力向上、調達チームによる潜在的なサプライヤー発掘などを進めていた。2019年4月には投資会社の哈勃科技投資を設立し、投資や株式保有を通じた半導体などの中国のサプライヤーへの財務支援で、生産規模の拡大、生産能力と品質の向上を支援していった。また2019年にはファーウェイは中国最大の半導体パッケージング・テスト企業である長電科技の工場に100人を超える技術者を派遣するなど、技術協力も進めた。

 その結果2014年時点では、中国国内での部品調達率は11.9%だったのが2018年には23.6%に。2022年のMate 50シリーズは72%、Mate 60シリーズは90%にまで上昇する。Mateシリーズはハイエンド製品なので日本や韓国、米国からの移行が必要だったが、一方でミドルやエントリー製品については制裁前から中国のサプライヤーから部品が供給されていたこともあり、米国の制裁は効いておらず、制裁前後で影響はなかったという。

制裁前後でこれだけ国産化が進んだ

OSもAndroidを脱却 5年で新プラットフォームを作った

中国国内ではiOSを抜いて、「第2のモバイルOS」に

 Androidの代替となるHarmonyOSに関しては、2019年5月のファーウェイのエンティティリスト入り後、同年8月にHarmonyOS 1.0を発表。2021年6月にHarmonyOS 2.0へのアップデートが開始された。

 当時の中国テックメディアの論調は、発表前は「そんなに早く新OSは出てこないだろう」という感じで、随分驚いていたという記憶がある。その後、2023年8月発表、2024年10月リリースのHarmonyOS NEXTはAndroidベースではなくなった。制裁前から同社はOSの研究開発をしていたとは言え、制裁から5年弱でアプリを揃え、Androidを切り離したわけだ。今中国ではHarmonyOSはファーウェイ人気を受け、シェアでiOSを超え、“第2のモバイルOS”となっている。

 制裁開始から6年、ファーウェイを警戒させたZTEへの規制は2016年なので9年が経過した。この間にソフトウェアとサプライチェーンを国内にシフトさせ、外国に依存しない情報端末を作りあげたのである。