日テレ「国分騒動で会見」"内容ゼロ"が真っ当な訳

日本テレビは20日、国分太一氏にコンプライアンスの問題行為が複数あったことを確認したと発表。世間では、この発表が“無回答会見”として批判されているが……(写真:国分太一氏のXより)

国分太一さんが突然の芸能界引退を発表し激震が走った。

【画像】司会を務める「世界くらべてみたら」HP、23日昼時点では国分氏の姿が…

日本テレビは2025年6月20日、福田博之社長が記者会見に臨み、コンプライアンスの問題行為が複数あったことを確認したと発表した。また、各番組から降板するとし、のちに全局がならった。同社は「プライバシーの観点から説明を控える」として、多くを説明しなかった。

“無回答会見”として批判されているが…

世間では、この発表が無回答会見として批判されている。

しかし、この記事では、この日本テレビの会見は現時点の情報では最大限のものだ、と論じる。

まず会見で述べられた限りでは、日本テレビの上層部は事象を2025年5月27日に知ったとされる。そしてすぐさま外部の弁護士に相談し、調査を開始。国分さんには6月18日までに事実の確認のうえで降板を申し入れ、6月20日に発表となった。

その場では「コンプライアンス違反であり」とはいえ「刑事告訴の事案ではなく」、さらに「日本テレビの判断として詳細は語らない」とし「反社勢力とのつながり事案ではない」とした。国分さん自身の芸能活動休止発表とともに、所属事務所や自身の経営企業からも事実を認めるコメントが相次いだ。

なお、刑事告訴の対象ではないとはいえ、被害者が刑事告訴を望んでいないケースもあるため、内容はさまざまな可能性をはらむ。また局としてはさまざまなスポンサーに説明するだろうし、そもそも他局にも情報は伝播していくから、のちのちそのコンプライアンス“違反”の内容は明らかになっていくだろう。

たとえばフジテレビおよびフジ・メディア・ホールディングスの事件の際に、記者会見に臨んだ記者らは、局から「プライバシーの観点から説明を控える」といわれたら激怒していただろう。個人名は出さずとも、局員がやったことは説明する必要があるだろう、と。

しかし現時点での情報でいえば、日本テレビ側の局員が加害に加担した、というわけではない。むしろ日本テレビは独自で調査をし、他の報道機関から探られていたわけでもなく、起用タレントのコンプライアンス違反を発表した。

日本テレビの親会社である日本テレビホールディングスは6月27日に株主総会を開催する。隠して乗り切りたい、と思う可能性もあるが、善管注意義務からも発表を見逃せない事態だったのだろう。

なお、これは皮肉でも称賛でもなく、たんなる事実なのだが、日本テレビホールディングス株式会社の取締役選任候補はスキルマトリクスで「ガバナンス・リスク管理」に一人を除いて全員にチェックがついている(スキルマトリクスとは各取締役候補の専門のこと)。これを今後、裏切らないようにしてほしいものだ。

日本テレビの対応は妥当か

ところで今回、日本テレビは日本テレビホールディングスとともに緊急の臨時取締役会を開いて、このたびの決定と発表を決めた。

このことに関して、ガバナンスの観点から緊急開催した理由が語られていない、という批判がある。私の知る限り、開示理由義務を公開させる規定は存在しない。

もちろん上場会社だから投資判断に重要な決定事項を適時開示する。ただ開催理由を説明しろといっても、それは単に今回の事案が経営上の重要項目だったからだ、ということ以外ではない。

なお、メディアは報道機関としての公共的な使命がある。真実を報道する組織としては、真実をえぐり出す必要がある。

しかし、同時にSDGsと、それこそコンプライアンス時代の私たちには雇用主としての安全配慮義務が課せられる。

これは、従業員が不利益を受けない環境を確保する義務を定めたものだ。生命、身体の安全を担保せねばならない。そしてプライバシー保護も義務がある。二次被害やプライベート侵害を引き起こさない義務だ。何よりも、被害側への心のケアとともに、加害側への厳正な抗議や措置も求められる。

ちなみに、私は国分さんの事案で、日本テレビの誰かが被害にあったと断言するものではない。ただ日本テレビの番組制作の過程で発見された内容であれば、社員がなんらかの形で関わっている(被害/加害)可能性はあるだろう。

ただ、日本テレビは社員の処分はないとした。そのときに、被害当事者が特定や推測される公表は、避けるのが一般的だ。読者の皆さんに置き換えてみてほしい。あなたが所属する企業でも、ハラスメント事案は「社外公表は原則禁止」とする方針を取っているのではないだろうか(もちろん、経営層によるハラスメント事案など、例外も存在するとしたうえで)。

フジテレビの事案があったため、日テレに対しても「なぜ非公開なのか?」という論調が出ているが、その性質は異なっているのだ。

と、ここまで説明しても保身の言い訳、と語られるだろう。ただ、繰り返すと、当原稿を執筆時点での情報でいえば、日本テレビ側は独自調査で結論と発表にいたっている。社員側に被害者がいたかは不明だが、加害側に加担はしていないという(他社報道では、スタッフに対するハラスメントがあったという報道はでている)。

ここまでの前提が異なっていれば私は意見を修正すると思う。ただ、これを前提とすれば、隠蔽というよりも社員を守るためのことだったとなる。

もちろんメディア企業として説明責任を果たしていない、という批判は可能だろう。これ以降は個人の主観からは逃れられない。

ただ、これは仮定の、さらに仮定の話だ。

架空の話として述べる。何かの不祥事があったとして、社員から「概要であっても言わないでください。これは報じられたり、探られたりするだけで心がズタズタになります」と直訴されたとする。もちろん「メディア企業に勤めている以上は仕方がないだろう」と突っぱねてもいいかもしれない。しかし、それでも私なら社員が受けた経験を、概要であっても述べる気になれない。

発表されたあとの社員の身に降りかかる状況を案じてしまう。これはメディア人としては甘いといわれるだろう。そのうえで述べている。

ただ、私はとてもナイーブなのだろう(なおナイーブとは純朴というより馬鹿者の意味が近い)。そんなことより経営者の進退は株主が決めることだ。親会社の日本テレビホールディングス株式会社の株主総会では当事案が話題になるだろう。

そして、会社は株主のものだから、日本テレビと日本テレビホールディングスの取締役会で決まった内容が間違いなら、株主が判断を下すだろう。法令違反でなければ、外部の人間が口を出すことではない。

日本テレビが率先して発表する必要はない

またこれはとても皮肉な点を書く。

局としてはスポンサー企業に説明をするだろう。そして、日本テレビとは関係なく、各キー局が今回の事案を知る。だからこそ他局の番組も降板となった。

知る関係者が増えている。ということはそのうち情報が漏洩するだろう。

ただでさえ、現在では不祥事の仔細を誰もが秘密のままでは許そうとしない。だからそのうち事態が明らかになるだろう。

繰り返し、あくまで現時点では可能性ではあるものの、日テレ側に被害者がいるとしたら、それはふさわしい状況とはいえないだろうが。

そうなると、それこそ日本テレビが率先して発表する必要はないことになるのだ。

その他の画像

コンプライアンス上の問題行為が複数あったと日テレが発表。しかし、詳細は伏せられた(画像:日テレホールディングスHPより)

「世界くらべてみたら」の番組ホームページには、6月23日12時時点でも国分氏が掲載されたまま(写真:同番組のホームページより)