勝手に名乗り始めた「ロボットクリエイター」、高橋智隆はなぜ「世の中に認知」されたのか
ロボット工学を学ぶため大学に入り直した高橋智隆さん(50)。「欲しい物は自分で作る」という子どもの頃に 培(つちか) った力で、次々と新たなロボットを生み出すクリエイターになっていく。(読売中高生新聞編集室 斉藤新)
オリジナルロボット初号機は「ザク」
「京都大学で2回目の大学生活が始まり、 早速(さっそく) オリジナルロボットを完成させました。アニメ『機動戦士ガンダム』に登場する『ザク』というロボットのプラモデルを動かしてみようと、モーターを組み込んで半年がかりで改造しました。ロボット化したプラモデル同士が戦う『プラレス3四郎』というアニメを子どもの頃に見て以来、いつか実際に作って動かしてみたいとずっと思っていたのです。足の裏の 電磁石(でんじしゃく) で鉄板を敷いたジオラマの上を転倒せずに歩くことができ、手元のリモコンで操縦できるようにしました。

ロボットクリエイターの高橋智隆さん
個人的な趣味で1人で操縦して遊んでいたのですが、思った以上のできばえに、学内にあった『特許相談室』という窓口に持ち込むことにしました。特許の出願から企業との交渉までをサポートしてもらい、電磁石を使って歩行する技術の特許を取り、玩具メーカーから商品化もされました。
自分の 携(たずさ) わった商品がお店で売られていることにうれしさを覚えた反面、継続的にロボットを開発していくためにはどうしたらいいのかを考えるようになりました。そこで、技術のアイデアコンテストや起業コンテストに片っ端から出場し、その賞金を次のロボット開発に充てることにしました。ロボットの実機を持ち込んでのデモンストレーションは審査員受けがよく、出場したコンテストは全て優勝することができました」
物を作って、形にすること
大学卒業後は、ロボットクリエイターとして自ら起業する道を選んだ。
「大学を卒業する頃にはロボットを開発している会社で働くことも考えましたが、その頃、大学発のベンチャー(新興企業)が注目されるようになってきました。『うまくいかなかったらその時に就職すればいいや』くらいの気持ちで、起業することにしました。大学が学内にベンチャー企業が入居できる部屋を用意してくれ、その第1号として『ロボ・ガレージ』を設立して今に至っています。
また、『ロボットクリエイター』という肩書もその頃から自分で勝手に名乗っていたもので、当時は人に説明するのがなんだか恥ずかしかったことを覚えています。あるとき、有名なボードゲーム『人生ゲーム』の中で選択できる職業に、ロボットクリエイターが追加されることになり、世の中にも認知されてきたんだとうれしかったですね。
ロボット開発が仕事になってからも、基本的にはずっと一人で作ってきました。自分が欲しいと思うロボットを、自分の手で作りたい。そんな思いは、学生の頃から変わっていません。自分が作るロボットを自分が楽しみにしているという不思議な感覚なんです。ロボットが日常生活のなかに溶け込み、1人1台誰もがロボットを持っているという時代を自らの手で実現させたいですね」
好きなことを突き詰めてきた経験から、中高生に伝えたいことがある。
「何か物を作って、形にするという作業は、とても大切なことだと思います。ただ思いついただけでは、そのアイデアがうまくいくかどうかわかりませんが、試行錯誤しながら形にしていくなかで、アイデアが進化していきます。また、形にして人に見せることで客観的な評価を得られ、自分の未来が開けてきます。

2016年に発売されたシャープと高橋さんが共同開発したロボット型の携帯電話「ロボホン」
中高生のみなさんには、周りに流されず、ユニークな夢や目標を持ってほしいと思います。私が始めたロボットクリエイターという仕事は前例があるわけでもなく、はたから見ると遊びのように思われていた時期もありました。でも、まだ誰も挑戦していない分野だからこそ、大きなチャンスがあったと感じています。ぜひ、みなさんも、本当に好きなこと、やりたいことを見つけてください」