じつは、富山の「黒部川は、佐渡の先まで続いている」って、知ってた…? さらに、八ヶ岳の水も、南海トラフに流れ込んでいる事実。「海底谷」の、ものすごいスケール

宇宙で唯一の生命を育んだ「海」、あたりまえのようにそこにある「山」、そしてミステリアスな「川」……。地球の表情に刻まれた無数の凹凸「地形」。どうしてこのような地形になったのかを追っていくと、地球の歴史が見えてきます。

「地球に強くなる三部作」として好評の『 川はどうしてできるのか 』『 海はどうしてできたのか 』『 山はどうしてできるのか 』を中心に、地形に関する選りすぐりのトピックをご紹介します。

前回まで地球に海ができていく過程をたどって、ようやく陸地が形成されようとする段階となりました。

現代の地球で、陸上生活を送っている私たちからすると、陸地と海は、はっきりした境があるように見えますが、本当にそうでしょうか。今回は、 『 川はどうしてできるのか 』から、陸地で発した川の流れが、深く海底まで続いている、そんな驚きの地形の不思議を見ていきたいと思います。

*本記事は 川はどうしてできるのか 』『 海はどうしてできたのか 』『 山はどうしてできるのか (講談社・ブルーバックス)の内容を、再構成・再編集のうえ、お届けします。

「海の底にも川はございます」

えっ、海の底に川があるの? と誰もが驚くでしょうが、川が流れていると見られる流路のようなものは、世界中の海底で見つかっています。

平氏が壇ノ浦の戦いで源氏に敗れたとき、二位の尼はまだ幼い孫の安徳天皇を「海の中にも都はございます」となだめて、ともに海に飛び込んだといいますが、その言い回しを借りれば、海の底にも川はあるのです。

川という視点で見れば、日本列島の中央には、北は北海道の宗谷岬から、南は鹿児島県の佐多岬までつながる、中央分水嶺と呼ばれる大きな分水界が走っています。地表の川はそこを境に、あるものは太平洋へ、あるものは日本海へと、およそ3000mの高さを流れ下っているわけです。

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陸羽東線堺田駅の分水嶺の表示。現在同駅を含む区間は災害運休が続いており、1日も早い復旧が望まれる photo by musashi-no-kuni

まだ海底地形図というものがなかった時代には、川は陸の海岸線のところで終わっていると考えられていました。しかし、海底の研究が進んでいくにつれて、川は地表のみならず、海に入って海底にまでつながっていることがわかってきたのです。

川の終着駅は海溝である

海に注ぎこんだ川に含まれる土砂は、そのあともさらに海底の傾斜に沿って流れ下ります。その行き先は、海溝です。海溝とは最深部の水深が6000mを超える溝状の長く伸びた地形で、日本列島の周辺は太平洋側の日本海溝をはじめ、海溝だらけです。陸上の川は最終的には、深くて安定した海溝でその旅を終え、川によって運ばれた土砂は海溝にたまります。

日本海溝の水深は7400mから9200mほどです。最深部は相模トラフや伊豆・小笠原海溝と一点で交わっていて、「海溝三重点」と呼ばれています。ここが日本列島周辺で最も深い場所です(約9200m)。もしあなたがここに立って富士山を見上げれば、1万2976mの山に見えます。日本の地表に降った雨水は、最大でこれだけの落差を流れ下りるわけです。

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フィリピン海プレートを中心としてみた日本周辺の海溝と海溝三重点(『フォサッマグナ』の収載の図より、一部加筆して掲載)

分水界から海面までの陸上の落差より、海岸線から海溝までの海底の落差のほうが総じて大きいのですが、海岸線から海溝までの距離が長い(たとえば宮古から日本海溝までが約200km)ため、陸上よりも海底の斜面のほうが、平均の勾配は小さくなります。

川の流れは陸上で終わるわけではなく、このように海底を下って海溝まで続いているのです。

「海底谷」は海底を流れる川

しかし、海に入った川の水がそこで拡散してしまわずに、陸上のように決まった流路に沿って海底を流れるのは不思議な気もします。これはなぜでしょうか。

それは海底に、陸上の川を延長した谷である「海底谷(かいていこく)」があるからです。海底谷とはまさに、海底を流れる川です。

たとえば天竜川は諏訪湖(長野県)を発して浜松(静岡県)で海に注ぎますが、そこからは天竜海底谷となって、水深約4800mの南海トラフをめざしています。北海道の網走川や釧路川も、海に注ぐと網走海底谷や釧路海底谷へとつながります。その名前も「川」から「海底谷」に変わるだけのものが多いのです。

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静岡県浜松市の天竜川河口。八ヶ岳に発した水は遠州灘に注ぐが、じつは、さらに南海トラフへ向かって、さらに続いている photo by gettyimages

海底谷の成因はまだはっきりとはわかっていませんが、おもに断層によってできたものと、陸から流れ込んだ土石流が海底を削ってできたものがあります。前者は直線的で、後者は大きく蛇行した流れになります。

2種類の海底谷

  • 直線的な海底谷:断層によってできた
  • 大きく蛇行した海底谷:陸から流れ込んだ土石流が海底を削ってできた

伊豆・小笠原諸島の海底にある新島海底谷や三宅海底谷は、直線的な海底谷です。

富山湾の底を流れる、「その先」の川

一方で、黒部川(富山県)から続く富山深海長谷という海底谷は、大きく蛇行しています。この海底谷は富山湾に注ぐ陸上の川がすべて集まった、長大な海底河川なのです。

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富山深海長谷。富山湾に流れ込んだ庄川、神通川、常願寺川、黒部川、姫川などの流れは湾底で合流し、大河川となる。谷は、なんと青森県黄金崎沖まで続き、総延長は750kmを超すという(海上保安庁による海底地形図に、加筆して掲載)

これだけでも大いにおどろかされますが、もう一つの成因が、かつて陸地だったところにあった川が、海中に没したものです。

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海中に没した川とは、どんな川なのでしょうか。続いては、直線的な海底谷の流れを見ていきましょう。

川はどうしてできるのか――地形のミステリーツアーヘようこそ

地球に強くなる三部作! 川の面白さは、家で地形図を広げて眺めているだけで、「なぜこんな姿をしているんだ?」という謎が次々に浮かんでくるところにあります。一筋の流れにひそむ、地球のマジックの謎解き、そひて数々のドラマチックな物語を追います。 【姉妹刊】 海はどうしてできたのか ・ 山はどうしてできるのか