朝ドラ「ばけばけ」と「VIVANT」の"意外な共通点"

八雲が暮らした「山陰地方最大の都市」, 「恋愛の最強パワースポット」として一躍話題に, “『VIVANT』のふるさと”となった街, 「宍道湖名物」が『ばけばけ』効果で人気, 島根の10月は「神在月」

朝ドラ『ばけばけ』の舞台地の1つ、「水の都」松江(筆者撮影)

10月からスタートしたNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は、江戸時代末期から明治時代を生きた小泉八雲とその妻セツの物語をベースにした作品です。

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小泉八雲は、新聞記者、小説家、英文学者であり、日本文化そのものを世界に紹介した功績で知られ、特に『耳なし芳一』『雪女』などの説話を記録、翻訳して広く海外に紹介した人物です。

1890年、40歳の時に来日し、その後54歳で亡くなるまで、松江、熊本、神戸、東京と移り住み、英語教師などを務めながら暮らしました。

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八雲が暮らした「山陰地方最大の都市」

そして、『ばけばけ』で髙石あかりさん演じる「トキ」のモデルとなったセツは、1868年に武士の名家に生まれました。すぐに明治の世になり、近代化への激動の時代を過ごし、一時期は生活にも困るほどだったと言われています。

そこに英語教師として赴任してきたのが、のちに小泉八雲となるラフカディオ・ハーンで、セツは彼の身の回りをお世話する仕事をしていたのだそうです。

そんな八雲が暮らした最初の街であり、セツと出会った場所として、『ばけばけ』の前半の舞台地となったのが、島根県松江市です。撮影も行われたその松江で、現代に残る八雲ゆかりの地を訪ねてみました。

松江市の人口は約19万人で、山陰地方最大の都市です。

もともと松江藩の城下町であったこの街は、日本海をはじめ、宍道湖や中海といった湖に面しているほか、その両方の湖をつないでいる大橋川、さらに城下町を縦横に流れる堀川などの水運が発達しており、古来より「水の都」として親しまれてきました。

そんな松江を代表するランドマークといえるのが松江城です。天守は2015年に国宝に指定され、日本各地に現存している「12天守」の1つに数えられる見事な建築。

現在は島根県庁が隣接していて、今も昔も松江の中心地となっています。

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「12天守」のうち、唯一の正統天守ともいわれている「松江城」(筆者撮影)

「恋愛の最強パワースポット」として一躍話題に

八雲は、天守閣のお膝元である城下町の一角にある家で暮らしており、城内の敷地が毎日の散歩ルートだったと言われています。

城内にある「城山稲荷神社(じょうざんいなりじんじゃ)」は、同じく八雲のお気に入りの場所だったようで、『ばけばけ』では、放送前の「ロケ報告会」もこちらで行われました。

お堀にかかる橋「宇賀橋(うかばし)」は、松江城を望めるロケーションとなっており、『ばけばけ』のオープニング映像が撮影されました。また、城内二の丸には、1903年に建設された洋風建築、白亜の迎賓館「興雲閣」があります。

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松江城内で最も風情ある橋として名高い「宇賀橋」(筆者撮影)

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松江市の工芸品陳列所として建てられた「興雲閣」(筆者撮影)

八雲の旧居も、そんなお堀端にあり、現在では記念館も併設されています。旧居では、八雲が愛でた日本庭園の風景を見ることができ、記念館は八雲の曽孫である小泉凡氏が館長を務めていて、八雲のゆかりの品々が展示されています。

そんな「水の都」と、名城松江城を満喫できることでおすすめなのが、堀川遊覧船。ゆったりと船内から望む松江城は格別です。特に冬に運航される、やぐらこたつを設置した「こたつ船」は、松江のこれからの季節におすすめです。

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小泉八雲が暮らしたという屋敷(筆者撮影)

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寒い季節も観覧を楽しめる「こたつ船」。船頭が自ら火起こしをした「豆炭」を使っているそうです(写真:Hiroko/PIXTA)

さて、「神々の国」とも呼ばれる島根県の県都・松江には、城内の松江神社や城山稲荷神社だけでなく、数多くの神社があります。

松江駅からバスに乗って南に向かって20分ほど。「八重垣神社」は、素盞嗚尊(すさのおのみこと)と稲田姫(いなたひめ)が結ばれたと言われており、以来、夫婦円満や良縁結びにご利益があるとされる由緒正しい神社。

八雲もこの神社に友人と訪れ、縁結びで名高いということにとても興味を持ったのだとか。

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「八重垣神社」の境内(筆者撮影)

特に、神社の奥にある「鏡の池」は、『ばけばけ』でも占いのシーンで登場しました。池に和紙を浮かべてその上に硬貨を乗せ、それがどこまで流れ、いつ沈むかで、恋愛の占いを行うというものです。

筆者が訪れたときも、多くの観光客が池に紙を浮かべていました。実際にセツがここで友人たちと占いをしたときに、彼女の和紙だけが遠くまで漂ってようやく沈んだということで、「遠くの国の人と結ばれる」という暗示なのでは、といわれています。

また、境内にある「夫婦椿」は、地面から出た2本の木が1本につながっていることから、「愛情の象徴」とされているそうです。

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『ばけばけ』にも登場した「鏡の池」には、実際に占いに使われる紙が浮かんでいます(筆者撮影)

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夫婦の契りの象徴とされている「夫婦椿」。幹を見ると、2本の木が一体化しているのがわかります(筆者撮影)

“『VIVANT』のふるさと”となった街

ちなみにこの八重垣神社の最寄り駅はJR山陰本線の「乃木駅」ですが、2026年に続編の放送が決定したTBS日曜劇場『VIVANT』とも縁のある場所でもあります。

堺雅人さん演じる「乃木憂助」の苗字の由来になったのでは?ということで、ドラマ放送当時に話題となりました。

実は島根には、同作の重要なシーンのロケ地となった場所が多くあります。

松江市内では松江城付近や出雲大社、奥出雲町など、県内各地で撮影が行われました。

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『VIVANT』の主人公「乃木憂助」の名の由来となった?と話題になった「乃木駅」(筆者撮影)

“『VIVANT』のふるさと”ということで、島根県ではロケ地巡りツアーの企画をはじめ、さまざまなPRが行われていました。続編の放送に向けて、再び島根県が盛り上がることを期待しています。

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前述の島根県庁も『VIVANT』に登場しました(筆者撮影)

さて、松江城から島根県庁を通って南下すると、宍道湖(しんじこ)と大橋川がつながる場所に1972年開通の「宍道湖大橋」があります。

そこから望める宍道湖は、「夕日の名所」。特に宍道湖の唯一の中の島である「嫁ヶ島」をバックにした夕日とのコントラストは、「日本夕日百選」にも選定され、宍道湖を象徴する光景となっています。

宍道湖畔にある島根県立美術館の近く、湖の中に建つ「袖師(そでし)地蔵」から嫁ヶ島の絶景を望めるあたりでは、『ばけばけ』の撮影も行われました。

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「嫁ヶ島」をバックに、「袖師地蔵」越しに望む宍道湖の夕日(写真:takapon/PIXTA)

「宍道湖名物」が『ばけばけ』効果で人気

そして宍道湖の名物といえば「しじみ」です。しじみ漁の船が浮かぶ様子は、宍道湖ならではの風景となっています。

しじみには、「オルニチン」が豊富に含まれていて、疲労回復の効果があることでも有名。特に、淡水と海水が混じり合う宍道湖のしじみは、その独特な生育環境から、旨味が凝縮された風味が特徴で、しじみの味噌汁は郷土を代表するグルメとなっています。

『ばけばけ』でもたびたび登場していることで、地元の食堂では、早くも大変な人気になっているとのことです。

宍道湖に面している温泉街が「松江しんじ湖温泉」で、ここから、2010年公開の映画『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』にも登場した「一畑電車」(通称:バタデン)が発着しています。

始発の松江しんじ湖温泉駅には、今でもロケ地の垂れ幕が設置されていて、当時の賑わいを今に残しています。

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抜けるような景色が気持ちいい、昼間の「宍道湖」。その広さは 7910haを有し、国内7番目の面積だそうです(筆者撮影)

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「松江しんじ湖温泉駅」では『RAILWAYS』の巨大垂れ幕がお出迎え(筆者撮影)

同映画は、東京の会社の役員へ昇進が内定した、中井貴一さん演じる「筒井肇」が、故郷である島根県で一畑電車の運転手を目指すために地元に帰る、という心温まる物語です。

旧型の電車とともに、宍道湖やローカル鉄道の風景が描かれ、錦織良成監督が自らの出身地である島根県の魅力をスクリーンで描いた「島根3部作」の1つとなり、ヒットしました。

松江しんじ湖温泉駅からは、出雲大社や中心地のJR出雲市駅まで、その「バタデン」にコトコト揺られて行くことができます。途中の「伊野灘駅」は、宍道湖に面した開放感のある駅で、ここでも主人公の実家の最寄り駅という設定で、ロケが行われました。

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宍道湖のそばを走る「一畑電車」(写真:railway memory/PIXTA)

島根の10月は「神在月」

そして、終点の出雲大社は、言わずと知れた「八百万の神々が集う」神社で、「神々のふるさと」です。『VIVANT』では、「乃木」の両親が結婚式を挙げた場所として登場しました。

「本殿」は、大社造りと呼ばれる建築様式で、24mもある高さには圧倒されます。また、全長13.6m、重さ5.2tの日本最大級の大しめ縄のある「神楽殿」も見どころです。

島根では、10月は「神無月」ならぬ「神在月」ということで、日本各地を留守にして神々が島根県に集まってくる時期です。島根県では、松江市内と近隣の玉造温泉から、八雲ゆかりの地を回る周遊ツアー「ばけバス」を運行中(来年3月まで不定期開催)。

『ばけばけ』のゆかりの地を訪ねつつ、さまざまな“縁”をつなぐ旅をしてみたいものです。

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小泉八雲がセツと過ごした島根(筆者撮影)