自分の乳すらしまい忘れ…赤ちゃん優先では人間らしい生活ができない!→“夫の一言”で改善した話

 37歳で想定外の妊娠をし、2025年8月末に無事男の子を出産した。

筆者(妊娠前)

 妊娠に気づいたのは16週に入ってからだった。長年の生理不順や「妊娠は難しい」と言われていた過去に加え、ADHD(注意欠如・多動性障害)の特性でセルフネグレクト癖があり体調管理がおざなりになること、算数障害(発達障害の一種で数字、計算に困難を抱える学習障害)で生理周期を正しく把握していなかったことなど、いくつもの要因が重なっていたのである。

 今回は、出産から約2か月までのできごとを記していく。

◆息子につきっきりで自分の時間がゼロに

 息子が生まれて2か月。だんだんと赤ちゃん育児のペースが掴めてきたものの、発達障害の特性とより向き合い、対策する必要性を感じ始めた。

 2週間外来と1か月健診が終わり、私も息子も体調に問題はなし。息子は順調に成長していることがわかって安心した。なんせ近所に同じ月齢を持つママ友がいなくて比較対象がないので、ミルクの量や体重の増え方といった育児の情報は、もっぱらSNSで同じ月齢のママアカウントやChatGPTを参考にしていたのだ。

 新生児期間はミルクを飲むとすぐに寝ていたのに、1か月を過ぎるとだんだん起きている時間やぐずっている時間が長くなり、効率的にお世話をしないと自分の時間や仕事の時間が取れなくなってきた。

 ここで、ADHD特有の「優先順位がつけられない」が発動してしまった。「赤ちゃんは理由もなく泣く」と言われるが、息子の場合ほとんどはお腹がすいた・オムツが濡れている・眠いといった理由があって泣いていることが多く、原因を解決してあげればいいのでその点は育てやすいといえる。

 ただ、私は息子の要求に対してこまめに対応していたので、息子が寝ている時間以外、自分の時間がゼロになってしまった。

◆授乳後に乳をしまうのも忘れる忙しさ

 私は果物が好きなので、夫が買ってきてくれるキウイや梨など朝食に食べていた。

 夫はもともと朝ご飯を食べないので、朝夫よりも早く起きて一人で果物の皮をむいて食べていたのだが、冷蔵庫から果物を出した瞬間に泣く、次はむいている最中に泣く、そして食べている最中に泣くといったことが頻発し、そのたびにベビーベッドを見に行って対応しているとなかなか食べられない。息子対応中に台所に包丁を放置しているのも危ない。

 それで、果物を食べるのをやめてコーンフレークに牛乳をかけたものだけでさっと朝ご飯を済ますようになったのだが、そうしていると冷蔵庫の中で果物が傷み始めてしまった。とにかく息子が泣いたら他のことを放り出して息子を優先していたのだ。

 ある日、冷蔵庫の中を見た夫が「果物、食べてないじゃん」と言うので、「皮をむいている最中に●●君(息子)が泣くから食べる暇がない」と答えた。すると、「皮をむく数分くらい泣かせていても大丈夫。いちいち対応していると自分の時間がなくなるからある程度割り切らなきゃ」と言われた。

 たしかにずっとつきっきりで息子を見ていると、顔も洗えない、歯磨きもできない、ろくにご飯も食べられない、授乳後に乳をしまうのも忘れるという状態になっており、育児は人権が失われるものと思い込むようになっていた。でも、このままだと本当に自分のことが何もできなくなってしまうし、この状態が長期間続くと本格的な仕事復帰もできない。

 夫の言う通り、息子のことはある程度割り切って優先順位をつけて人間らしい生活を送ることにした。また、息子が寝たらチャンス。ぼーっとスマホをいじるのではなく、まずは睡眠を最優先。まだまとまって眠ってはくれないので、細切れ睡眠を取るようにしている。

◆まとまった睡眠をとりたい一心で「産後ケア」を予約

 1か月健診直前に行った産後ケア(※)も良いリフレッシュになった。保健師さんから案内された内容を見ると、近所にはいくつか産後ケアを行っている助産院があった。

 当初、入院していた病院で二泊三日のデイケアを申し込んでいたのだが、その病院だと一度退院してしまうと利用できないことがわかった。入院を延泊する形になり、しかも赤ちゃんの夜間預かりがないということで、「早く退院したい」「休息のために産後ケアを利用したい」と思っていた私は、「それでは意味がない」と思ってキャンセルしてしまった。

 それで、自宅から歩いていける産後ケアを探すと10〜15時の日帰りのデイケアをやっている助産院が見つかり、俗にいう“魔の3週目”で寝ない息子をあやしながら、まとまった睡眠をとりたい一心で深夜3時にWeb予約を入れた。

 育児の悩みを記入する欄には昼夜逆転していて息子が寝ないことも書いた。赤ちゃんの預かりがなくて昼寝できなかったとしても、ずっと夫以外の大人と会話していないし、せっかく区からの助成がきいて1日6000円のところが3000円になるしで、気晴らしになるかもと思い申し込んだのだった。

 翌日、さっそく電話がかかってきて「お母さん、寝てないですよね? 当日は赤ちゃんを預かるので寝てくださいね」と言ってくれた。久しぶりに息子のことを気にせず眠れるかもしれないと楽しみになった。

※出産後の母親が心身を回復し、育児に慣れるための支援を受ける制度。助産師などによる体調チェックや授乳・育児相談、休養のサポートな度が含まれる

◆助産師さんに不安を打ち明けると……

つかむ力が強くなってきた

 当日、息子を抱っこ紐に入れて伝えられた住所へ向かった(安全のため、ホームページには建物名までは記載されておらず、予約した人にだけ詳細な住所を伝えられる形だった)。

 普通のマンションのひと部屋が助産院になっており、アットホームな雰囲気だった。

 助産師さんというと妊婦時代からの経験上「母乳のために甘い物や脂物は禁止!」といった厳しい指導や民間療法を勧めてくるイメージを持っていたが、案内された部屋に入るとおやつが用意してあり「このお菓子、京都の限定品だって」とGODIVAの生八ツ橋をくれたり、お昼にはローストビーフのお弁当が出たり、乳頭マッサージの最中に和やかな雑談に付き合ってくれたりと、助産師さんのイメージが覆された。

 そして息子を預かってくれて3時間ほど昼寝の時間があったが、息子がいない空間というものが久しぶりすぎて緊張してしまい、せっかく昼寝の時間をもらえたのにウトウトしかできなかったのが惜しかった。昼寝のために来たと言っても過言ではなかったのに。

 また、早めに仕事復帰したく卒乳の相談をしたところから仕事の話になり、実は仕事で発達障害の本を出していて私自身も発達障害、息子に遺伝していないか不安ということを助産師さんに打ち明けた。

 すると、「必ず遺伝するわけじゃないし、今は療育もあるし大丈夫ですよ」と言ってもらえた。このセリフは今まで散々自分に言い聞かせてきた言葉なのだが、第三者に言ってもらえるとホッとした。

 他にも抱っこ紐の正しい使い方や息子のスキンケアなど、入院中は教えてもらえなかった育児情報を教えてもらい、昼寝と育児相談におやつとお弁当付きで3000円だなんて最高! と満足しながら帰路についた。次回の予約も入れている。

◆産後ケアの“人手不足”という課題

生まれたばかりの息子とのツーショット

 生後間もない赤ちゃんの育児で一番キツいのが、産後まだ回復していない体のまま極度の睡眠不足になることと、慣れない育児だ。この状態だと産後うつになってもおかしくない。自分が妊娠・出産してから、産後うつと思われるお母さんが赤ちゃんを殺めたり、自死してしまったりするニュースに敏感になった。

 産後うつではない私でも日帰りの産後ケアに一度だけ行っただけで疲れが癒されリフレッシュできたので、思い詰めているお母さんたちに強く産後ケアを勧めたくなった。しかし、産後ケアは今、自治体や施設によっても異なるが多くの場合1か月前には予約が埋まる可能性があり、予約自体とりづらい状況だ。

 実は私も、申し込んで電話が来た際「今、予約でいっぱいなのだけど、もう何度も来ている人に別の日にできないか相談して代わってもらいます」と言われ、調整してもらい予約が取れたのだ。

「明日産後ケアに行きたい!」となったときに行けるよう、もっと気軽に予約が取れるようになれば、悩むお母さんや悲しいニュースも減るのではないかと思ったが、深刻なのは助産師さんたちの人手不足だと思われる。私が産んだ病院の産後ケアで赤ちゃんの夜間預かりがないのもおそらく人手不足だ。

◆1か月健診の待合室は夫婦でいっぱい

 1か月健診もあった。健診では息子は順調に成長中で体重も大幅に増えているとわかった。産まれてすぐ受けたスクリーニング検査もすべてパスしていて安心した。私の子宮も回復していて、もう日常生活に戻っていいとのことだった。そして、産後うつの検査も問題なかった。私は発達障害の二次障害で双極性障害Ⅱ型があるので産後うつになりやすいのではないかと心配していたが、今のところ問題ないようだ。

 健診は長時間なのと、私の健診中に息子が一人になってしまうため病院から夫と来るよう言われていた。待合室には入院中に授乳室で顔見知りになった人たちが旦那さんと一緒に来ていた。

 顔見知りになったお母さんに会釈をすると夫は「みんな旦那さんと来てる。仕事休んでるのか育休中かな?」と耳打ちした。夫は前妻との子がいるのだが、生まれたのは10年前。当時は男性が育児や健診に付き合うのは珍しかったらしい。1か月健診に付き合うのも育休も初めてだ。

 いろんな人に「旦那さん、育休取ったところで役に立つ?」と聞かれるが、よくやってくれている。最近は夜間の3時の回のミルクを代わってくれるので、その間私は睡眠を取れている。

 SNSなんかでは「夫が育休を取ったけど何もしないので夫の世話までしないといけない。子どもがもう一人増えた気分。これならワンオペのほうがマシ」といった投稿を目にするが、きちんとやってくれる夫もいるのだ。

 また前回の記事で、夫婦でお世話をする際は昼と夜とシフト制にしている人もいるが夫が担当すると母乳が出ないからどうすべきかという悩みを書いたが、1回分の授乳をミルクだけにしても息子は大丈夫だと判明し、今は1日の授乳のうち1〜2回はミルクのみにしている。

◆算数LDにワクチン接種スケジュール作成は難しい

愛猫と息子

 1か月健診の翌週、保健師の訪問もあった。ここでも簡単な産後うつの検査があった。私は意外と育児をやれているのかもしれない。でも、それは夫がきちんと育児に向き合ってくれていることも大きい。

 息子はもうすぐ2か月。そろそろ予防接種が始まる。区から予防接種の案内が来たのだが、打たなければならないワクチンの量に驚いた。

 そして、ワクチンは生後何か月にこのワクチンを打つという表現ではなく、「●週」に打つという表記だ。算数LDのある私は●週という表記はわかりづらく混乱してしまう。

 妊娠中は週数がマタニティアプリに表示されていたのだが、育児アプリでは今のところ「生後●週」という表記のものを見つけられていない。

 また、ワクチンを打つと他のワクチンを打つまで決められた期間あけて打たねばならず、その計算も私には難しい。そこで、予防接種のスケジュールは夫に立ててもらうことにした。

◆最近可愛さが増してきた息子

 最近の息子はメリーを目で追ったり、クーイング(生後1〜3か月頃の赤ちゃんにみられる「あーあー」「あーう」といった発声)したり、「ヒィ―ッ」と言いながらニヤニヤ笑うようになったりして可愛さが倍増してきた。

 正直、産んですぐはどこからか拾ってきたペットのような感覚で、あまり自分の子という気がしなかった。ホルモンの変化なのだろうか。息子のためにもっと働いてお金の面で苦労させたくないとも思い始めた。

 スマホの写真もどんどん増えていき、容量がいっぱいになったらどう保存しようという悩みも出てきた。昨年産んだ作家の先輩に出産報告をしたところ「歩き回るようになったらもっと可愛くなるよ。落ち着いたら子連れで一緒にお散歩しよう」と返信が来た。

 いくつかワクチンを接種したら子持ちの友達や先輩とも子連れでお出かけをしたい。息子が巣立つ日まで一緒にいる時間を大切に過ごすつもりだ。

<文/姫野桂>

【姫野桂】

フリーライター。1987年生まれ。著書に『発達障害グレーゾーン』、『私たちは生きづらさを抱えている』、『「生きづらさ」解消ライフハック』がある。Twitter:@himeno_kei