「高市首相の側近中の側近」黄川田沖縄北方担当大臣の失言 自民党って北方領土問題を軽視しているのでは?
黄川田仁志沖縄北方担当相が視察で訪れた北海道から北方領土を眺め、「一番やっぱり外国に近い」と述べた問題。すぐに釈明し、高市早苗首相からも注意を受けたが、心情に沿わない政治家の発言がまたも元島民らを失望させた形だ。ウクライナ侵攻などで停滞している対ロシアとの返還交渉に、日本はどう向き合うべきか。(山田雄之)

首相官邸に入る黄川田仁志氏=10月21日、東京・永田町で(木戸佑撮影)
◆根室市長から「海外へのゲートウエー」と聞いたから?
黄川田氏の発言は根室市の納沙布岬を訪れた8日、対岸の北方領土の歯舞群島などを視察した際に飛び出した。記者団に対し「一番やっぱり外国に近いところですから、目で感じるというのは大切だと思う」と感想を述べた。
北方領土を「外国」扱いし、ロシア領と認めたと受け取られかねない発言で、黄川田氏はその後、元島民らとの懇談で釈明。同行した根室市長から「根室市は海外へのゲートウエーだ」と説明を受けたとして、発言は「話の延長線上」と弁解した。「誤解を与えたならば、今後は注意しながら大臣として責任ある言葉を発していきたい」とした。
◆元島民「私たちの側に立ったら絶対に出ない言葉だ」
木原稔官房長官は10日の会見で、黄川田氏を注意したと明かし「北方領土はわが国固有の領土だ。発言は誤解を招きかねない」と強調。高市首相も同日の衆院予算委員会で、電話で注意したと説明した。

北方領土返還を願って建てられたモニュメント=北海道根室市の納沙布岬で(2021年撮影)
元島民らでつくる「千島歯舞諸島居住者連盟」の理事長で、黄川田氏の釈明を現場で聞いた松本侑三さん(84)は「不法占拠されたというのが運動の前提。島を見ながら『外国』との表現はあり得ない。私たちの側に立ったら絶対に出ない言葉だ。もっと元島民の気持ちを理解してほしい」と失望を隠さない。
◆高市氏の出馬会見「顔が濃い方」「濃くない方」と司会
もっとも沖縄北方担当相の北方領土を巡る失言は、過去にも繰り返されてきた。島尻安伊子氏は2016年2月の会見で、手元の資料にあった「歯舞」を「はぼ、何だっけ」と読み進められず。江崎鉄磨氏は2017年8月の就任直後、北方領土について「素人は素人」と明かし、国会答弁は「役所の原稿を朗読する」と責任放棄のような発言をした。

自民党総裁選に立候補を表明した高市早苗前経済安保相(当時)。記者会見の司会は黄川田氏だった=9月19日、国会で(佐藤哲紀撮影)
そして今回。黄川田氏は、高市氏の自民党総裁選への立候補表明の会見で司会を務め、記者との質疑応答で「顔が濃い方」「顔が白い、濃くない方」と言って指名。高市氏がその場で「何てこと言うの。すみません」と謝り、注意した経緯もある。
政治ジャーナリストの泉宏氏は「高市氏の側近中の側近。論功行賞人事で、彼が軽率で無思慮な発言をすることは党内で有名。今回の発言に驚きはない」と受け止める。沖縄北方担当相は「内閣の最軽量ポストの一つ」とし、「安全保障の観点から近年は極めて重要な役割を担っているはずだが、自民党は長らく軽視したままだ」と指摘する。
◆「主権侵害に真剣に対応しない国と思われたら」
肝心の北方領土問題は停滞している。安倍晋三元首相は2018年のプーチン大統領との会談で、歯舞群島と色丹島の2島を日本に引き渡すと明記した日ソ共同宣言に基づき、平和条約締結交渉を加速させようと試みたが、決着しなかった。2022年のウクライナ侵攻による関係悪化で、元島民らがビザなしで現地の墓地を訪れる「北方墓参」や現地交流も途絶えたままだ。先述の松本さんは高市政権に対し、「あらゆる手段を使ってロシアとの交渉を開始し、解決に向けて強い姿勢で臨んでほしい」と要望する。

北方四島へのビザなし墓参の再開が困難な中、旧島民や家族らは洋上慰霊を実施している=2024年8月、北海道沖で
ロシア研究を長年続ける青山学院大の袴田茂樹名誉教授は「プーチン氏相手の解決は難しいが、最も重要なのは問題を風化させないことだ」と強調。「元島民の年齢や墓参などの人道問題のように扱いがちだが、これは日本の領土の不法占領という国家主権侵害の問題だ。政治家もメディアも、全国民の最重要問題との認識を持つ必要がある」として、こう危ぶむ。「主権侵害に真剣に対応しない国だと映れば、尖閣諸島、竹島、沖縄など他の地域の問題にすぐ飛び火する」
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