この世のすべてはシミュレーションに過ぎない:科学者もその可能性を認める「シミュレーション仮説」

『マトリックス』の世界観が現実に

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映画『マトリックス』の公開により、私たちが生きている「現実」はシミュレーションかもしれないという考え方が広く知られるようになった。だが、ほんとうにそんな可能性はあるのだろうか?今の現実を疑いたくない人は、青い薬をのんで、いますぐブラウザを閉じてほしい。だが、赤い薬をのむなら、本稿で「シミュレーション仮説」の深淵をご案内しよう。

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「シミュレーション仮説」とは

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世界がシミュレーションに過ぎないという発想は映画や小説だけのものではなく、科学的にも検討されているものだ。「シミュレーション仮説」と呼ばれる考えで、この仮説の蓋然性の高さを認める専門家も多い。

同様の発想は古くからある

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この仮説が注目されるようになったのは比較的近年のことだが、実は同様の発想は数百年前から存在する。そもそも、「なぜなにかが存在すると言えるのか」というのは哲学最古の問いのひとつなのだ。

「我思う、故に我あり」

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フランスの哲学者ルネ・デカルトは「我思う、故に我あり」と述べた。これはつまり、われわれが認識できるのは自身の意識だけであり、心の外にある事物の存在を知ることはできないということだ。

「ポストヒューマン」が人類をシミュレート?

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現代においてもっともよく知られたシミュレーション仮説は、オックスフォード大学の哲学者ニック・ボストロムが2003年に提唱したものだ。それによると、人間よりもはるかに進んだ計算資源を持つ「ポストヒューマン」が、自らの祖先としての人間をシミュレートしているかもしれない、というのだ。

「プレイラボ」創始者も検討

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また、マサチューセッツ工科大学(MIT)のプログラム「プレイラボ」創始者で、シミュレーション仮説に関する著作(『われわれは仮想世界を生きている AI社会のその先の未来を描く「シミュレーション仮説」』)もあるリズワン・バークも、この仮説を真剣に検討している。

現実もVRゲームのようなもの?

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バークは自著の中で、あまりにリアルなVRゲームをプレイしたために、自分がなにもない部屋でヘッドセットをつけているということを忘れてしまったときの体験を語っている。この経験からバークは、自身が人間よりもはるかに技術的に進んだ存在が構築した世界の中にいるのかもしれないと考えるに至ったという。

NASAのコンピュータ・サイエンティストの見解

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同様の疑問を抱いた人物に、NASAのコンピュータ・サイエンティストであるリッチ・テリルがいる。テリルによると、知覚能力を持った存在のモデルを構築することは、人類にもまもなく可能になるという。

AIが自意識を獲得するかも

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『ガーディアン』紙によると、テリルは2019年にこう語ったという:「人類はあとひと世代もすれば、この世界を作った神と肩を並べることになるでしょう」じっさい、それから数年後には、多くの専門家がAIが自意識を獲得する可能性や、それによる倫理的な諸問題について議論するようになっている。

具体的な証拠はあるのか

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近年の急速な技術的進歩のおかげで人間の脳をシミュレートする可能性が現実的になりつつあるというのは認めるとしても、この現実がシミュレーションにすぎないという具体的な証拠は存在するのだろうか?

素粒子は画像のドットと同じ

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リズワン・バークはゲームデザイナーでもあるのだが、オンラインメディア「Vox」とのインタビューで、あらゆる物質が素粒子へと還元可能であるということを証拠のひとつとして挙げている。まさに画像をドットで構成するのと同じ作りになっているというのだ。

物理的存在も情報からなる?

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バークは、アインシュタインと共に研究したことがある最後の世代の研究者、ジョン・ホイーラーの考えを紹介している。ホイーラーは「ビットからイット(it from bit)」という理論を提唱しており、そこでは、われわれが物理的物質として認識しているすべての存在は情報の欠片(ビット)からなるとされる。

物理学者も可能性を認める

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ホイーラーは量子コンピュータの実現をまたずして世を去ったが、バークはこの発想が量子コンピュータとも相性がいいと考えている:「もし現実が物理的存在ではなく、情報に基づいているのなら、われわれは計算機科学と情報に基づくシミュレーション上の存在であるというのがシンプルな説明になるだろう」

「現実があまりにも極端な偶然の産物になってしまう」

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同様に、NASAの科学者であるリッチ・テリルも、「率直に言って、もしわれわれがシミュレーション上の存在でないならば、この現実はあまりにも極端な偶然の産物だということになってしまう」と語っている。『ガーディアン』紙が報じている。

人工的存在のほうが多くなる

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テリルはこう続けている:「いまのペースで技術が進歩すれば、数十年のうちに、シミュレーション上で生きる人工的存在のほうが人間よりも数が多いというような事態になるだろう」

Photo : Gerd Altmann / Pixabay

「デジタル人間」と人間を分けるものはなにか

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「シミュレートされた環境で生きる『デジタル人間』が増えてきたら、われわれ自身がそのような存在ではないとどうして言い切れるのだろうか?」とテリルは問うている。

シリコンバレーの人々も関心を示す

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シリコンバレーにも、シミュレーション仮説に関心を示している人々がいる。たとえば、テスラ社のイーロン・マスクもそのひとりだ。『ガーディアン』紙によると、マスクは「われわれが真の現実を生きている確率は10億分の1」と発言したという。

「シミュレーションから脱出」?

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また、OpenAI社CEOのサム・アルトマンが2016年に『ニューヨーカー』誌に語ったところでは、ふたりのテック・ビリオネアが「秘密裏に科学者を雇って、われわれをシミュレーションから脱出させるよう頼んだ」のだという。

世界の「バグ」

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テック・ビリオネアや科学者は置いておくとしても、いまや多くのネット掲示板などでこの世界の「バグ」とされるものが報告されている。現実的とは思えない体験を、シミュレーションのバグと捉えているのだ。

懐疑的な専門家も

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とはいえ、この仮説に懐疑的な専門家も存在する。MITの物理学者、マックス・テグマークは『ガーディアン』紙にこう語っている:「われわれがシミュレーション上の存在である可能性は論理的に存在するか? 存在する。では実際に、われわれはシミュレーション上の存在か? 私なら、違うと答える」

世界にはまだまだ謎が多い

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また、ハーバード大学の理論物理学者リサ・ランドールも、現実がシミュレーションであるという「確たる証拠」は存在しないと述べている。とはいえ、いまだ物理学が明らかにできていないことも多く、この現実にはまだまだ解明すべき謎が残されているという点については、多くの学者も同意することだろう。

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