トランプ氏が共和に圧力、エプスタイン捜査資料の開示阻止へ

トーマス・マシー下院議員(共和、ケンタッキー州)

【ワシントン】性犯罪で起訴され拘置所で死亡した米実業家ジェフリー・エプスタイン元被告の捜査資料を巡り、その開示を支持しないようドナルド・トランプ大統領が共和党下院議員に最後の説得を試みている。この問題は、トランプ氏への忠誠心を占う重要な試金石となっている。

トランプ氏は先週、下院での採決を強制する嘆願書に関し、署名者が必要数の218人に達することを阻止できなかった。署名者の中には4人の共和党議員も含まれていた。これにより下院では今週、エプスタイン関連資料の提出を司法省に義務付ける法案の採決が実施される予定となっている。

法案は民主党の全議員に加え、一部の共和党議員からの支持も得て可決される見通し。だが僅差で議席数を分け合っている下院で、より多くの共和党議員が離反すれば、ホワイトハウスの影響力が試される。

トランプ氏は大統領専用機「エアフォースワン」の機内で、民主党は「人々の時間を無駄にしたがっており、共和党の一部の愚かな議員たちはそれを好んでいる」と述べた。

ホワイトハウスのアビゲイル・ジャクソン副報道官は、トランプ氏が共和党議員に対して賛成票を投じないよう説得しているかどうかについて尋ねられた際、「民主党と主流メディアは、このでっち上げを使って大統領の多くの成果から注意をそらそうと必死だ」と述べ、政府機関の閉鎖を巡る争いなどをその一例に挙げた。

マージョリー・テイラー・グリーン下院議員(共和、ジョージア州)

エプスタイン関連資料開示に関する採決は、トーマス・マシー下院議員(共和、ケンタッキー州)、マージョリー・テイラー・グリーン下院議員(共和、ジョージア州)、ロー・カンナ下院議員(民主、カリフォルニア州)が推し進めてきたもので、全ての下院議員が記録に残る形で投票することになる。

この件に対する有権者の怒りと、民主党が共和党を政治的に傷つけようとしているとするトランプ氏の主張との間でバランスを取ろうと苦慮している共和党議員らに対し、トランプ氏は圧力をかけ続けている。

カンナ氏は18日、グリーン氏やマシー氏と共にエプスタイン元被告の被害者たちを招いて議会でイベントを開催する予定。カンナ氏は米NBCの「ミート・ザ・プレス」に出演し、「40人以上の共和党議員が法案に賛成票を投じることを期待している」と述べた。

トランプ氏は複数の共和党議員に対する攻撃を強めており、双方の緊張はここ数日間で公然と表面化している。

トランプ氏とかつて最も近い関係にあった議員の1人であるグリーン氏は、エプスタイン関連資料開示に関する投票を推進。これを受けてトランプ氏はソーシャルメディア上で、グリーン氏を「裏切り者」や「名ばかりの共和党員」と呼んだ。また2026年の共和党予備選でグリーン氏の対抗馬になるよう共和党員に呼びかけた。

21年に議員となり、かつては熱心なトランプ支持者だったグリーン氏は、トランプ氏が投票を前に共和党議員を脅そうとしていると発言。「彼は私を激しく攻撃し、他の共和党議員を脅すための見せしめにしようとしている」と14日にXに投稿した。また16日に米CNNの「ステート・オブ・ザ・ユニオン」に出演し、トランプ氏や他の共和党議員がエプスタイン資料の開示要求に抵抗している理由について疑問を呈した。

グリーン氏は「なぜこれほどまでに抵抗するのか、誰もが疑問に思っていることだ」と述べた。

マイク・ジョンソン下院議長(共和、ルイジアナ州)を含む共和党指導部は、下院監視委員会が最近になり数千件の資料を開示するなど進展しているとして、さらなる開示を義務付ける法案の必要性に疑問を示している。

今回の法案が下院で可決された場合、その後は上院に送付されるが、上院での見通しは不確実となっている。またトランプ氏が拒否権を発動する対象になるが、これを覆すには上下両院で3分の2以上の賛成票を獲得する必要がある。

共和党のドン・ベーコン下院議員(ネブラスカ州)、アンディ・ビッグス議員(アリゾナ州)、ティム・バーチェット議員(テネシー州)などは、すでに法案を支持する意向を示している。

ベーコン氏は米CBSの「フェイス・ザ・ネーション」に出演し、「バンドエイドを剝がして終わらせよう。大統領がそれに気づいてくれればいいのだが。ホワイトハウスがこれに反対すればするほど、見た目が悪くなるだけだ」と述べた。

一方で一部の共和党下院議員は反対票を投じる意向を明確にした。トロイ・ネルズ下院議員(テキサス州)は法案を拒否するとし、民主党が「エプスタインのでっち上げを使ってトランプ大統領とその政権の成果から注意をそらそうとしている」と非難した。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、民主党のアデリータ・グリハルバ下院議員(アリゾナ州)が12日に宣誓就任を行い、請願書の218番目の署名者となる前、トランプ氏は共和党下院議員のローレン・ボーバート議員(コロラド州)とナンシー・メイス議員(サウスカロライナ州)に直接接触したと報じた。

ローレン・ボーバート下院議員(共和、コロラド州)

ボーバート氏は、ホワイトハウスのシチュエーションルーム(作戦指令室)で米連邦捜査局(FBI)のカシュ・パテル長官やパム・ボンディ司法長官とエプスタイン元被告の捜査資料開示について話し合った。だが同氏もメイス氏も署名を取り下げなかった。

エプスタイン元被告や他の問題でトランプ氏と対立してきたマシー氏は、司法省にエプスタイン関連資料の開示を義務付ける法案に関し、賛成票を投じる共和党議員が二十数人いることを把握していると述べた。

マシー氏は「トランプ氏は、この件について関心を引き続けている」とインタビューで指摘。ボーバート氏への対応にも触れ、「なぜ議会議員をFBI長官や司法長官とともにシチュエーションルームに連れて行き、彼女の投票を変えようとするのか」と述べた。

トランプ氏はエプスタイン元被告が06年に初めて逮捕される以前に、同氏とは関係を断ったと述べている。