良かれと思い込んで続けている「体にいい食事」、見直してみませんか?
- たんぱく質:肉や卵の食べ過ぎはよくないと思い、魚しか食べないようにしている
- たんぱく質を補うために毎日プロテインを飲んでいる
- カルシウムやたんぱく質を摂るために、しらすやジャコを積極的に食べている
- 痩せているのが気になり、とんかつやメンチカツなど肉は揚げ物で食べるようにしている
- 朝と昼に野菜を食べられない日は、夜に野菜の食べだめをしている
- 毎日の食事は、いつも野菜から食べている
- 自炊できないときは、野菜の惣菜や野菜ジュースをよく買っている
- 糖質はなるべく食べないようにして、白米は週2回だけと決めている
- 玄米は白米より体にいいので多めに食べてもよい
- 麺類なら、太らないのは断然そば
- ハチミツは体にいいので、砂糖の代わりに量は気にせず使っている
- 健康のためにチーズとナッツをしょっちゅう食べている
- ビタミンの吸収率をよくするため、野菜は油で炒めて食べている
- マヨネーズは低糖質なので野菜サラダの必需品
- ビールは好きだが、健康のために風呂上がりだけにしている
- ビールより太らないのでハイボール派
イラストレーション・堀 道弘 文・一寸木芳枝
健康にいいと思っている食習慣も、実は勘違いしていたり、年齢とともに体質に合わなくなっていることも。ここで改めてアップデートしたい……!そんな思いをもつ方へ、医学博士の野口緑さんからのアドバイスをお届けします。
「テレビ番組やSNSで流れてくる“これが体にいい”“これは体に悪い”という情報に、多くの人が飛びつきがちですが、食べてはいけないものなんて、本当はないんですよ」
そう話すのは、メタボに着目した独自の保健指導で実績を上げ、“スーパー保健師”として多くの患者と向き合ってきた野口緑さん。
「重要なのは、適量や正しい摂り方を知ること。体にいい食事と言われているものでも、摂り過ぎたり、摂り方を間違えれば体に悪い影響を及ぼすことも」
知識がないためについやってしまいがちな食習慣、あなたは大丈夫?
たんぱく質:肉や卵の食べ過ぎはよくないと思い、魚しか食べないようにしている
肉、魚、豆、乳製品、卵ーーこの5種類は毎日必要なんです!
「確かに肉を食べ過ぎれば、飽和脂肪酸の摂り過ぎでコレステロール値が上がり、動脈硬化が進む可能性があります。卵も長期的に見ると、多量摂取は心筋梗塞の発症確率が上がるというデータも。だからといって、たんぱく源を魚だけに頼ってしまうと、肉や卵から摂れるはずの栄養素が不足することに。
大切なのは、乳製品、卵、肉、魚、豆の5品目をバランスよく食べること。1日に食べるべき量の目安は、牛乳 200ml、卵Mサイズ1個、肉と魚はそれぞれ50〜100g、豆腐1/4〜1/3丁。これは20代でも60代でも大きくは変わりません」(野口さん)

良かれと思い込んで続けている「体にいい食事」、見直してみませんか?
たんぱく質を補うために毎日プロテインを飲んでいる
通常の3食をとっていれば、プロテインは追加不要です
「コンビニなどでも気軽に購入できる利点はありますが、私たちに必要なたんぱく質量は体重あたり1g。60kgの人であれば、1日60gです。これは、3食普通に食事をしていればあっという間に摂れてしまう量。であれば、あえてプロテインを飲む必要はなく、食べ物だけで充分だと言えます」(野口さん)
カルシウムやたんぱく質を摂るために、しらすやジャコを積極的に食べている
意外な落とし穴!小魚類は“隠れ高コレステロール食材”
「“骨粗鬆症の予防のために”“ダイエット中の口さみしいときのおやつに”と、しらすやジャコを摂る人は多いですが、内臓を含めて丸ごと食べられる小魚類には、多くのコレステロールが含まれています。血液検査の結果で思い当たる節がある人は、しばらく食べるのを控えてみるのをおすすめします」(野口さん)
痩せているのが気になり、とんかつやメンチカツなど肉は揚げ物で食べるようにしている
無理に太ろうとすると、血糖値や中性脂肪に影響が
「まず、牛と豚と鶏は、鉄分やビタミンの含有量や脂質が異なるだけで、たんぱく質としての優劣はありません。また、揚げ物という調理法も、適量であれば問題はありません。太れるか太れないかを決めるのは、脂肪細胞の数。痩せている人はそもそも数が少なく、細胞1個ずつを大きくして太ろうにも限界があります。バランスを欠いた食事は、血糖値や中性脂肪の数値を上げる要因にもなるので、無理はしないこと。筋肉をしっかりつけるほうがベターです」(野口さん)
朝と昼に野菜を食べられない日は、夜に野菜の食べだめをしている
1回で1日分は摂りにくい、慢性的な野菜不足の心配が
「1日の野菜の必要摂取量は350g。それもピーマンやトマトなどの緑黄色野菜は120g以上、それ以外はナスやきゅうり、白菜や大根などの淡色野菜で摂るのが理想。この量は、おそらく1回では摂りきれないと思います。毎食必ず“野菜を食べる”と意識して、1食に120g以上必要、と覚えておきましょう。野菜のおかずを作り置きしておくのもおすすめです。ちなみに、毎日必ず摂りたい食品としては、食物繊維が豊富なきのこ類と海藻類、ビタミンCが豊富なイモ類。ただ、さつまいもは糖質が過多のため、1日約5cm程度までです。焼きいもは1本を3人で分けるくらいのイメージで」

毎日の食事は、いつも野菜から食べている
ベジファーストは、食べてから10分以上置かないと意味がない
「“ベジファースト”=『野菜を先に食べれば血糖値が上がらない』と思われがちですが、実は『野菜を食べてから10〜15分後に次のものを食べると血糖値は上がらない』が本当のところ。ですから、野菜を一口食べてすぐに肉やご飯を食べていたら、ベジファーストの効果はなし。結局、ゆっくり食べなければ、お腹の中で一緒になってしまうので意味がありません。実は1品ずつ供されるコース料理は、非常に体に優しい構成になっているんですよ」
自炊できないときは、野菜の惣菜や野菜ジュースをよく買っている
糖分と保存料に注意、シンプルな調理法のものを選んで
「惣菜を上手に利用して、できるだけ野菜を摂ることはとてもよいと思います。ただし、市販のものは日持ちさせるために添加物が多く入っていたり、尿酸値を上げる原因にもなる果糖ブドウ糖液糖がたっぷり使われていることも。市販品なら蒸し野菜やサラダなど、味付けがされていないものを選び、調味料は添付されているものを避け、塩などに替えて。また、野菜ジュースは果汁が入っていないかどうかを確認し、野菜100%のものを選びましょう」
糖質はなるべく食べないようにして、白米は週2回だけと決めている
適量を守れば、毎日白米を食べても大丈夫
「糖質オフダイエットなどで、白米を食べないようにしている人も多いようですが、適量を守れば白米は毎日食べても問題ありません。ただ、自分の適量を知ることが大切です。ご飯を1日どれくらい食べていいのかの計算方法はちょっと複雑ですが、以下のとおり。目標体重×基礎代謝基準値(40代までは21.9、50歳から74歳女性は20.7)×生活活動強度の指数(あまり運動していないなら1.5)×0.6(炭水化物はエネルギーの6割が理想)÷4(炭水化物1gは4kcal)=1日に必要な炭水化物量。たとえば、60㎏を目標にダイエットをしているあまり運動していない63歳女性なら、60kg×20.7×1.5×0.6÷4=約279g。つまり、お茶碗に軽めに1杯(93g)は毎食食べていいのです」

玄米は白米より体にいいので多めに食べてもよい
玄米も炭水化物、摂取目安量は変わらない
「玄米は、白米に比べ、脱穀で失われるビタミンやミネラル、食物繊維などプラスαの栄養素が多いのですが、炭水化物量は白米とほぼ変わりません。ですから、食べてよい量は白米と変わらないのです。先に紹介した1日に必要な炭水化物量を参考にして、玄米であっても同じ量を守りましょう。食物繊維は意識しないと1日に必要な摂取量に届かないことが多いため、それを補うという意味では玄米はとてもよい食材。白米の代わりに玄米を取り入れるのはとてもいいですよ」
麺類なら、太らないのは断然そば
そばはカロリーも糖質も高い麺類で、太らないとは言えません
「それぞれの麺類を100gあたり茹でた場合で見てみましょう。そばが130kcalで糖質27.0gなのに対して、うどんは95kcalで糖質21.4g。そうめんは114kcalで糖質25.4g(※)。カロリーや糖質量もうどんやそうめんより、そばのほうが上回っています。他の麺類より太らないとは言えませんね。ちなみに、そばよりカロリーや糖質が高いのは、パスタと中華麺。一方、麺類としては物足りないかもしれませんが、春雨は100g 80kcalで糖質19.7gと低カロリーで低糖質です。ダイエット食として人気なのも頷けます」
※八訂食品成分表より。糖質は単糖当量。

ハチミツは体にいいので、砂糖の代わりに量は気にせず使っている
1日の糖の摂取目安量は“スティックシュガー3本分”
「先ほどお話しした白米と玄米の話と同じで、精製糖には含まれないアミノ酸やビタミン、ミネラルが摂れるという点では、代替にハチミツを使うというのは悪くありません。でもだからといって、1日における砂糖の摂取目安量10gが変わるわけではないので、量が多くてもOKということにはなりません。摂りすぎないよう注意しましょう。日本は煮物など砂糖を調理に使う機会が多い国なので、多少おまけしたとしても、1日20gまでには収めたいですね」
健康のためにチーズとナッツをしょっちゅう食べている
ナッツは“油のカプセル”、チーズは他の乳製品とのバランスを
「アーモンド、くるみ、ピーナッツなど、ほとんどのナッツは高脂肪で、少量でも高エネルギー。言ってみれば、“油のカプセル”です。ごく少量にとどめておきましょう。お酒のおつまみとしてついつい手が伸びてしまいがちな人は、より注意が必要です。一方のチーズの1日の摂取目安量は30〜50g。6Pチーズなら2〜3個まで。でももし、その日すでに牛乳を1本飲んでいたならば、一切の乳製品はお休みと思ってください」
ビタミンの吸収率をよくするため、野菜は油で炒めて食べている
調理用の油は1日大さじ2杯の量が目安、油を多く摂ると内臓脂肪が増える原因に
「確かにビタミンA、E、Bは、油と一緒に摂ると吸収率が高まります。しかし、普段の食事で野菜と一緒に肉や魚などを食べていれば、もうそれでビタミンの吸収率をあげるのに充分な油脂が含まれています。ですから、野菜を炒めて食べる必要はなく、むしろ野菜にも毎回油を使うと、1日の必要量を軽く超えるでしょう。50代女性であれば、調理用油は大さじ2杯に。脂の多い食材を食べがちな人は、もっと少なくしましょう。必要量より多く油脂を摂ると、中性脂肪が高くなり、内臓脂肪が増えます。焼肉をたくさん食べた日は、翌日の食事や運動で調整してくださいね」

マヨネーズは低糖質なので野菜サラダの必需品
それは“野菜の天ぷら”を食べているのと同じです
「マヨネーズは半分以上が油で、残りはお酢や卵。つまりそれは、天ぷらの衣とそう変わらず、糖質よりも油脂の摂取量が気になります。レタスにマヨネーズをつけて食べれば、それは“レタスの天ぷら”。シンプルにオリーブオイルにレモン汁を混ぜ、手作りドレッシングをかけるほうが、食べる際に食材からオイルが流れ落ちるのでよいのですが、それでも油は量に注意を。おすすめは、トマトに塩、きゅうりやレタスに味噌など油を使わない食べ方です」
ビールは好きだが、健康のために風呂上がりだけにしている
脱水状態でのアルコールは血液ドロドロを引き起こす
「その飲み方は危険です!よく『サウナや温泉でたっぷり汗を流した後、喉が渇いているのをあえて我慢してからのビールが最高』という人がいますが、汗をかいている=脱水状態。そこに利尿作用のあるビールを一気に流し込むと、さらに血液から水分が流れ出て、血液はドロドロの状態に。それは、脳卒中を引き起こす危険性が高まるということ。サウナや温泉から出たらお水をたっぷり飲んで、ビールはその後にゆっくり味わいましょう」

ビールより太らないのでハイボール派
度数の高い蒸留酒なので、結局は中性脂肪に変わります
「ビールや日本酒などの醸造酒には糖質が含まれるため、糖が中性脂肪に作り変えられ、内臓脂肪を溜め込みます。では、糖質が少ないウイスキーや焼酎などの蒸留酒であれば大丈夫かといえば、そうでもありません。度数の高いアルコール成分は体内で分解される過程で中性脂肪に変わりやすいため、どちらにせよ太りやすくはなり、ウイスキーをソーダで割るハイボールもOKとは言い難いのです。ハイボールを飲むときはなるべく薄めを意識しましょう」

野口 緑さん(のぐち・みどり) 大阪大学特任准教授
医学博士。生活習慣病予防、保健指導のエキスパート。著書に『健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと』(日経BP)。
『クロワッサン』1133号より