高市早苗の「台湾有事発言」にあった決定的な間違い…中国が悟った、日本の「軍事的無知」

高市首相の「台湾有事」答弁が波紋

高市早苗首相が台湾有事の国会答弁で、中国の怒りを買い、大騒動を引き起こしています。

今までの総理が発言したことがない、台湾有事が発生する具体的な状況を、首相が発言したため、中台問題は内政問題であるとする中国の怒りを買った……とメディアは、明日にでも戦争が起こるかのように騒いでいます。

しかし、メディアにも野党にも重要な視点が欠けているように思えてなりません。高市総理の答弁は、立憲民主の岡田克也議員の質問に対してのもので、バシー海峡(台湾とフィリピンの間の海峡で,世界にとって重要なシーレーン)有事について回答したものです。首相は官僚の書いた「実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、全ての情報を総合して判断しなければならない」という模範解答に満足できず、ついつい、自分の意見を付け加えて、こんな答弁をしてしまいました。

「たとえば海上封鎖を解くために米軍が来援する、それを防ぐために何らかの武力行使が行われる事態も想定されます」

「台湾を完全に支配下に置くためにどういう手段を使うか。単なるシーレーンの封鎖かもしれないし、武力行使かもしれないし、偽情報、サイバープロパガンダかもしれない。それが戦艦を使い武力の行使もともなうものであれば、どう考えても存立危機事態になりうるケースであります」

台湾に対する集団的自衛権の問題は、日本政府も米国も曖昧にしている問題で、現在、専門家でも意見が異なります。

高市首相の「台湾有事」答弁が波紋, 答弁のなかの「完全な間違い」, 中国が悟ったであろう日本の「軍事的無知」, 高市首相の「軍事知識のなさ」

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答弁のなかの「完全な間違い」

しかし、高市首相が付け加えた部分は、完全な間違いがあり、それを「まちがい」と正す人がほとんどいないのが、もっと問題ではないではないしょうか。実は、高市首相は、ありえない言葉を使って有事を想定していました。私は耳を疑い、この人が本当に軍事や現代史に詳しく歴史問題に発言するだけの資格があるのか、きわめて疑問だと感じました。これは、少しでも、あの戦争の歴史を知っている人ならわかるまちがいです。

高市首相が「戦艦」という兵器を持ち出したことは、ありえないことです。

現代の中国は戦艦をもっているのでしょうか? もちろん、もっていません。いや、世界中を探しても、現在稼働している戦艦はありません。記念艦として展示物になっている戦艦はあっても、戦争に使える道具としての戦艦はないのです。

彼女は多分、「軍艦」のことをいいたかったのでしょう。戦艦はBATTLESHIP、軍艦はWARSHIP。軍艦なら、潜水艦から、駆逐艦、巡洋艦まで、現在世界で稼働している戦闘用の船すべてを総称する言葉ですから、間違いではありません。

しかし、戦艦とは、あの「戦艦大和」のように、大きな大砲を積み、その大砲では貫通できない固い装甲で船体を包んだ巨大な軍艦のことであり、第二次大戦までは、今の核ミサイルなみに、その国の軍事力をはかる存在でしたが、日本が真珠湾攻撃で航空母艦で戦艦を撃沈して以来、役目がなくなり、戦時中は、航空母艦や輸送船団の護衛を勤めたり、その大砲の力で地上をに大量の艦砲射撃を加えて、水際の陣地や要塞を破壊する用途に使われたましたが、燃料も人員にも費用がかかるわりに、効果は少なく、戦後は次々退役し、米国がベトナム戦争や湾岸戦争で、一部の戦艦に敵の陸上基地を砲撃することに使用した程度で、今や存在しない兵器です。

こんなことは太平洋戦争に関する本を一冊読めば、どこにでも書いてあることであり、そのことを知らない首相が、国防と軍事に強いと評価され、現代史の修正を主張し、さらに対外強硬派であると自称していることもおそろしいと思います。

中国が悟ったであろう日本の「軍事的無知」

ちなみに、中国が近代になってからもった戦艦は二隻。その名は、定遠・鎮遠。日清戦争当時は、東洋一の巨艦として知られていましたが、圧倒的に戦力が劣っていた日本軍に黄海海戦で敗戦。定遠は自沈、鎮遠は、損害から立ち直れないまま、日本軍に鹵獲され、その後、日本の海防艦として、1911年に実験艦として大砲の威力の実験に、使用され沈没しています。一方、定遠は、戦後、日本との長い戦いの歴史を知らしめるために展示船として遊興施設になっています。

まさか高市首相も、展示船にすぎない定遠を、いまさら、中国が戦争に使おうなどとは思っていないでしょう。ですから、この部分は完全なまちがいと言って訂正すべきなのです。 軍事知識に乏しい読者は、私がオタクで細かな点をついて高市イジメをしていると思うかもしれませんが、これは軍事知識の最低クラスの問題であり、1プラス1が3と答えるほどの情けないまちがいなのです。

そして、同様に、野党もマスコミも、この問題にいまだにきちんと踏み込んでいないことに疑問を感じます。岡田議員は、首相の戦艦という発言を聞いてまちがいと思わなかったのでしょうか。彼は党の外交・安全保障総合調査会長なのです。(同じ立憲民主の辻元清美議員は、現在、世界で稼働している戦艦はありませんと語っている)。質問のときに、きちんと詰めれば、高市首相の軍事知識がどの程度のものか、はっきりしたはずであり、続いて答弁にたった小泉進次郎防衛大臣も、戦艦が出てくるわけがないことを正しませんでした。

高市首相の「台湾有事」答弁が波紋, 答弁のなかの「完全な間違い」, 中国が悟ったであろう日本の「軍事的無知」, 高市首相の「軍事知識のなさ」

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多分、中国の幹部は、このやりとりの中国語訳を聞いて、日本の政治家のおそるべき軍事的無知を知ったと思います。まさか、習近平主席も、「定遠」をバシー海峡にだそうと思ってはいないでしょう。

マスコミも答弁当初から、台湾有事について具体的言及をしたこと自体を問題にはしても、「戦艦」が出てくる事態などありえないと、どの社も言及していません。

いまだに、高市首相の答弁が画面に出てくるたびにテロップに戦艦という言葉が出てくきます。 出版社の感覚でいうと、本人が間違っていても、発言をそのまま記録しなければならない場合は、戦艦(ママ=原文のままの意味)と書き、ついでに軍艦のこと? という注釈をいれるでしょう。テレビもいまだに「戦艦」が存在すると思っている人々が中心にニュースをつくっているとしか思えないテロップです。

高市首相の「軍事知識のなさ」

さて、もうひとつ高市首相の軍事知識のなさについて言っておきましょう。岡田代議士の質問は海峡が封鎖されて軍事衝突がおきた場合についての質問でした。

たしかに、バシー海峡はシーレーンとして、きわめて重要な地域です。しかし、現在の海峡封鎖は、軍艦を並べて民間船を臨検するといった悠長なことはありえません。この海峡を中国が封鎖しようとするなら、台湾とフィリピンの航空戦力、そして、あとで駆けつけてくるであろう、米国の原子力空母の航空戦力とミサイル攻撃を考えなければならず、軍艦によって、幅100キロから150キロもある海峡を封鎖することなど、危険極まりない行為で、それこそ、バシー海峡の海底に中国軍艦の墓場ができてしまいます。

つまり、そんな形の海上封鎖は、ほとんど、軍事常識では考えられないのです。

実際に行われた海上や海峡封鎖の多くは機雷によるものです。潜水艦か機雷敷設艦が、海峡に機雷をばらまけば、危険で、民間の輸送船はなかなか通れません。まず、民間船の乗組員がストを起こして、この海域での航海を拒否するだろうからです。

高市首相の「台湾有事」答弁が波紋, 答弁のなかの「完全な間違い」, 中国が悟ったであろう日本の「軍事的無知」, 高市首相の「軍事知識のなさ」

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高市首相の、この無知は、結局本など読まず、気に入った言説の人に話しを聞いて、自分なりの考えをまとめた、きわめて幼稚な理解とはいえないでしょうか。

もし、中国が本気で、バシー海峡を封鎖する気なら、国籍不明の潜水艦によって民間船が撃沈された。あるいは沈められなくても,魚雷かミサイル攻撃を受けたというだけで、民間船の船員たちはバシー海峡横断を拒否して封鎖は成立します。台湾、米国側は、それが中国の潜水艦によるものだと証明しない限り、宣戦布告も海峡に軍艦をだすこともむずかしくなります。 多くの海戦史上、海上封鎖とは、こういう状態で行われるのであって、高市首相のような認識の海上封鎖は現代ではおこりにくいのが常識です。

それをわかっていて、現代戦の実相も、戦史の知識もないのに、中国嫌いの高市ファンを喜ばすために、過剰な戦闘シーンを想像させる予想を述べたのなら、これは彼女のスタンドプレイが招いた大きな失敗といえるでしょう。

今からでも遅くはありません。あなたは、こう訂正すべきでしょう。「従来の日本の見解にそった発言をしたつもりであったが、詳しく説明しようとして、大きなまちがいを言った。戦艦とは軍艦の意味であるが、戦艦などないのは、中国の方々もご存じのはず。わざと『ジョーク』とわからせるために発言したのに、野党もメディアもジョークを理解できる軍事的知識がなかったのはショックでした。中国の軍事専門家は当然ジョークとわかっていただいていると思います。しかし、ジョークが通じず、こんな大事になったのは申し訳ありません」と。それにしても、この基本的まちがいに気づかない首相のいう威勢のいい未来観を信じていいのでしょうか。私は彼女のサナエノミクスは、サナエのリスクとしか考えられません。