トヨタ「アクア」、外観デザイン変更と安全装備の充実で「ヤリス」と差別化か…改良モデルに試乗
トヨタ自動車の小型ハイブリッド車(HV)「アクア」に試乗した。9月に一部改良され、正面がハンマーヘッドをモチーフとした外観デザインに変更された。様々な安全装備も追加されて、かなり大幅な改良となっている。今回の改良は同じトヨタの小型車「ヤリス」との差別化を明確にするという狙いもありそうだ。

ハンマーヘッドをモチーフとしたデザインを採用した正面外観。ヘッドライトの部分が丁字形の先端部にあたる
海外名は「プリウスC」、「プリウス」の弟分という位置づけ
「アクア」は2011年の北米国際自動車ショー(デトロイト)で、コンセプトカー「プリウスCコンセプト」として発表された。コンセプトカーは、将来のクルマのデザインや技術の方向性を示す試作車両で、今年の「ジャパンモビリティショー2025」でも各社から多数のコンセプトカーが展示されていた。海外市場での「アクア」の販売名は「プリウスC」で、HVの代表的車種「プリウス」の弟分となるネーミングになっている。2011年12月の第42回東京モーターショー(ジャパンモビリティショーの前身)で一般公開された後に販売が開始されている。
トヨタの小型車というと「ヤリス」も有名だ。「ヤリス」はモータースポーツで使われているように、スポーティーできびきびした走りが特徴だ。HVのほか、ガソリン車もある。一方、「アクア」は「プリウス」の弟分とあってHVのみだ。ヤリスより内装の質感は上質で、室内の広さや静粛性にも優れ、走りが最優先でない人にはこちらの方が似合う。
今回の一部改良では、エンジンなどは前のモデルのままのため、最大の変更点は外観になる。ハンマーヘッドデザインは兄貴分にあたる「プリウス」のほか、「クラウンスポーツ」などにも採用されていて、トヨタ車の統一デザインになっていくようだ。名前は魚の「ハンマーヘッドシャーク(和名はシュモクザメ)」に由来している。シュモクザメは、仏具の 鉦(かね) (金属製の皿状の打楽器)などを鳴らす丁字形の棒= 撞(しゅ)木(もく) =から名前が付いた。目が丁字形の頭の先端部にあり、その分、視野が広いという。

運転席には大型マルチインフォメーションディスプレー(7インチ)を標準装備

全長が30ミリ長くなった一方、ドアミラーの部品変更により、ドアミラー全開時の車幅を30ミリ縮小し、取り回しやすさを向上させている
プリウスと同じデザインを採用、すっきりした印象に
以前のモデルはフロントグリルを強調するデザインを採用していたため、新しいデザインはかなりすっきりした印象だ。
改良後のヘッドライトの部分が丁字形の先端部にあたる。視野が広いシュモクザメ同様、Bi-Beam LED(発光ダイオード)ヘッドランプの採用により、一つのライトでロービームとハイビームの切り替えが可能になっている。
実際に運転してみると、新たに追加された安全装備の使い勝手が良かった。まず、電動パーキングブレーキが標準装備された。電気モーターでパーキングブレーキを作動・解除する。発進時にシフトレバーをDポジションに入れると自動でブレーキが解除され、停車後はPポジションに入れると自動で作動するため、パーキングブレーキの動作はほぼなくなっている。

エンジンは1.5リッターのHVシステムで、グレードにより燃費はリッターあたり33.6~34.3キロ(2WDの場合、WLTCモード)
乗り心地を向上させる「スムーズストップ」も標準装備、上位車種に劣らないレベルに
また、普通のクルマでは赤信号を認識してブレーキを踏んだ瞬間や信号の前で最終的に停止する時に「カックン」といった振動を感じることがある。こういう時のクルマの揺れを抑えて乗り心地を向上させる「スムーズストップ」も標準装備されて、上位車種にも劣らないレベルとなった。ブレーキ操作のたびに、実にスムーズに停止することを実感した。
カメラやレーダーを使って周囲の状況を検知して事故予防につなげるクルマ全体の安全システムは、最新世代の「トヨタセーフティーセンス(TSS)3.0」に進化した。前方の歩行者やバイク、自転車を検知し、衝突の危険性に応じてドライバーへの警告や自動ブレーキを作動させる。
ほかにも、追突やあおり運転された際の証拠収集に有利とされる前後ドライブレコーダー、カーブ時の減速やクルマ脇の歩行者などに近づきすぎないように運転をサポートする「プロアクティブドライビングアシスト機能」なども標準装備された。トヨタの小型車としては初採用となる装備が実に多い。

荷室は荷物の出し入れがしやすいように、バックドアを開いた際の入り口部分を大きくしている
装備充実により価格は上昇、今後の販売動向を注視
こうした装備の充実もあり、価格は248万6000円~302万2800円となり、改良前のモデルと比べると、25万円~36万円の値上げとなった。また、165万7700円~277万7500円(特別仕様車を除く)という「ヤリス」との価格差も広がっている。購入するクルマを「アクア」と「ヤリス」のどちらにするか、迷うシーンは減りそうだ。
消費者がこの価格差を高いと判断するのか、クルマの売れ行きが気になるところだが、これまでのところ、車名別新車販売台数のランキング上位には「アクア」の名前が見当たらない。実はかなりの人気を予想して、販売店に対して新規の受注を停止させていたためだ。これまでの受注停止で、ある程度の車両在庫もできたのだろう。トヨタによると「現時点では多くの販売店で受注を再開しております」(広報部)ということなので、今後どこまで販売台数が伸びるかに注目したい。(デジタル編集部 松崎恵三)
【仕様・主要諸元】
(試乗したグレード「Z」2WDの場合)
▼全長・全幅・全高(ミリ) 4080・1695・1485
▼総排気量(L) 1.490
▼燃費 WLTCモード(キロ/リットル) 33.6
▼価格 282.48万円(オプションは除く)