「男たるもの美容に無頓着であれ」「毛もそるべきではない」女性の中にもある男性美容を茶化す風潮に思うこと

最近、男性の美容がどんどん浸透してきていて、SNSなどでもメイク男子など、男性が発信する美容コンテンツがたくさん流れてくるようになりました。

その中でひとつ気になることがあります。男性が美容を気にすることを茶化すような反応もあることです。

先日放送された「上田と女が吠える夜 特別版 初の試み!一夜限りの特別企画!男女逆転!男もツラいよ!男のお悩み相談SP!」(日テレ)では、ネイルをしたり美容サロンに行くと“男なのに”と言われたりする、美意識を笑われるのは嫌という声が紹介されました。

「男たるもの美容に無頓着であれ」「毛もそるべきではない」女性の中にもある男性美容を茶化す風潮に思うこと

 

実際、男性がメイクやネイルをすると、「オネエなの?」と言われる場面を目にすることがあります。

男性がスキンケアやメイクをするのが当たり前ではなかった世代の人から「男がメイクするなんて」といった声が出てくるのは想像に難くない部分もあります。一方で、比較的若い世代の間でも男性の美容を茶化す反応があるんです。

 

例えば、普段の何気ない会話の中で、20~30代の女性の友人からこんな発言がでてくることがあります。

男性は洗顔と化粧水までならいい。乳液とか美容液までやりだしたら引く

男性が脚つるつるは嫌! 男たるものすね毛ははやしていて欲しい

男性がファンデーションを塗っていたり、唇がテカテカなのは嫌だ

どこか、スキンケアにも脱毛にも無頓着で、気にしてないのが「男らしい」と思っている女性っているんです。

結婚相談所のドキュメンタリーなどで、婚活アドバイザーが男性の登録者に対し「今は髭も嫌がられるし、全身脱毛してつるつるの男性も多い」といったアドバイスをされる場面を目にします。

男性にはひげやすね毛はそのままでいてほしい女性からすると、男性にもつるつるがスタンダードという空気が浸透していくことに寂しさを覚えるのだそう。

男性の美容に対する否定的な意見を聞いて、筆者は「私はむしろ美意識高い男性に対して好感を持てるのになぁ」なんて思います。

でもそんな筆者自身、学生時代は「男性が美容なんて」という価値観がありました。ある大きな反省があります。

大学生の頃、男友達と向かい合って話していると、その友達が私とまったく同じリップ美容液を持っていたのを見つけました。たまたまお互い塗ろうとして机に出したところ、同じの持ってる! となったわけですが、とっさに「えー男と同じのとか嫌だー」と言ってしまったんです。今となってはありえない失言!! と思いますし、すごく悔いています。振り返ってみると、どこか自分の中に男性が美容に気を遣うのって不自然みたいな認識があったのだと思います。

 

美容を気にする=モテたがっているという価値観の再生産

男性の美容に関してこんな発言を聞いたことがあります。

男性が美容を気にしだしたら、浮気をしている

色気づいている

今まで、女性に対しても美容に気を遣ったり、しっかりメイクをしていると「色気づいている」なんて揶揄はありました。それを男性にも再生産してどうするんだ! と思います。

別に美容って、モテのためだけにやるものではありません。自分が心地いいから、テンションが上がるから、といった理由もあります。それをモテたがっていると決めつけ、ましてや浮気と結び付けるなんてあまりに野暮だと思います。

人に言いたくなってしまうことって、結局は自分が思っていることへの裏返しなんだと思います。自分のために美容をしている人は、美容を気にする他人にわざわざ「色気づいちゃって」なんて言わないと思うんです。

 

美容をすることで生まれる意識

筆者は男性の美容が浸透することは、社会全体にとってもいい側面があると思っています。

スキンケアやメイクなど、美容には色んな意味や効果があります。

実際にスキンケアをするようになった男性の体験の中には、毎日鏡を見て、自分の今の状況や変化に気づくーー。こんな女性からすれば当たり前のルーティンを初めて体感し、自己認識ができるようになった、というものがあります。

筆者はずっと、一部の男性のある傾向に疑問を覚えていました。自分はまったく見た目を気にしていないのに、女性に対しては平気で、「50キロ以上は女じゃない」「メイクが濃い」「そんな見た目じゃ抱けない」みたいなことを言う人がいます。自分のことは棚に上げて、一方的にジャッジするのが当たり前になっているんです。

 

よく女性は生まれながらにミスコンに参加させられているなんて言いますが、女性は見た目をあれこれ言われる存在だ、という大前提がある気がします。でも、実際は性別に関係なく、誰もが「見られる側」であるはずなんです。それなのに、一方的にジャッジする立場だと思っている人がいるのはなぜだろう?(もちろん性別関係なくそういうことはあると思います)。この問題のヒントとなる視点が、スキンケアを始めた男性の声にありました。

 

スキンケアによって「見られている」意識が生まれる

スキンケアを一切してこなかったところから、スキンケアを始めたというライターの伊藤聡さんは、スキンケアをやるようになって生まれた変化についてこう言及しています。

スキンケアを始めると、鏡をよく見るようになるんです。「生え際が白くなったな」とか色々と気づく。自分が自分に見られることが増えたことで、「見られる」ことに意識が向くようになったのです。そこから、自分がいかに見る側にいたのか、一方的に品評する側にいたのかと気づけたのです。

朝日新聞デジタル「美容沼、50代ではまったら… 中年男性の『自立幻想』に気がついた」

確かに、自分の姿を鏡でじっくり見る習慣があると、人からどう見られているのか? に自然と意識がいくように思います。もしかしたらスキンケアの習慣がないと、鏡を見る習慣が生まれにくく、自分をじっくり見つめて、客観視する機会が少ないのかもしれないと思いました。

 

もちろん他人の目線が気になり過ぎるのもよくないですが、まったく見られる意識がなく、自分はジャッジする側だと思い込むこともそれはそれで問題です。

男性美容が浸透することで、男性=見る側、女性=見られる側という歪な構造が少しは改善されるのではないか、と思ったりします。

伊藤さんは、美容とセルフケアの関係についてこう言及しています。

そもそも、自分をケアすることが「負け」のように感じる中年男性は多いと思います。

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「肌がガサガサしている、乳液を塗ろうかな」なんていうケア行動をする人は、些末(さまつ)なことでいちいち騒いでいる「男らしくない」人になるんです。

朝日新聞デジタル「美容沼、50代ではまったら… 中年男性の『自立幻想』に気がついた」

先ほど紹介した「上田と女が吠える夜」の男のお悩み相談SP!の中でも、男性ゲストが男たるもの歯くそなんて気にしちゃいけないという意識から、メイクさんから手鏡とつまようじを渡されても使えないというエピソードを披露していました。

男は弱音を吐かず、小さなことは気にしないでどしっと構えているべき。そんな刷り込みがあるからこそ、ステレオタイプな男らしさと自分をケアするという行為が相反するがゆえに、スキンケアをすることにも抵抗を感じる場合もあるんですね。

 

「ケア」への思い込み

冒頭で、若い女性でも「スキンケアや脱毛に無頓着で、気にしてないのが男らしい」と思っている人がいることに触れましたが、男性自身の中も、ケアに無頓着なことが男らしさという認識があるのかもしれません。

その認識が生まれる背景をたどっていくと、ケア=女性、立場の弱い人がするものという固定観念が見えてきます。

男性同士で飲み会をしようとすると、たいてい「女性を呼ぼうか」となります。男性集団を「ケア」する人がほしいんです。場を取りなし、サラダをとりわけ、「すごい」「さすが」と褒めたたえて感情のケアもしてくれる人です。

観察していると、女性のいない飲み会では、その場の男性集団の中で最も立場の弱い人がケア要員になっています。「ケアする人=立場の弱い人」なんです。

朝日新聞デジタル「美容沼、50代ではまったら… 中年男性の『自立幻想』に気がついた」

男性の美容を茶化すことって、「ケア=女性がすること」という刷り込みを強化してしまうことにも繋がるのかな、とも思います。

美容を始めることで、自分の状態を知り、自分の体の変化に敏感になり、自分を労わりケアすることってシンプルに健康的だなと思います。自分をケアする習慣は、性別問わずあったほうがいいじゃん! と思うのです。

 

とりあえず男性の美容を茶化すのはもうやめよう

近年、連日の酷暑により、日傘をさす男性も増えてきました。しかし、やはり男性の中でも、まだまだ日傘を持つことへの抵抗があるようです。

「アイカサ」を運営する株式会社Nature Innovation Groupが全国の男女1000名(男性500名・女性500名)を対象に実施した「【夏の日傘需要】に関する調査」では、男性の約半数は日傘を購入することに抵抗を感じているという結果が出たそうです。

やはりどこか、日焼け対策は女性がするものという価値観が根強いのかもしれません。

ここ最近の暑さを考えると、日焼け対策は女がするものなんて言っていられないくらい、見た目とかいう前にもはや命を守るために必要なことになってきています。自分を守るための行動にも躊躇を感じさせるほど、男性の美容への偏見は根強いのだと感じます。

 

男性美容への偏見は、男性にとっても、女性にとっても、社会全体にとってもマイナスになるのではないか、と思うんです。

最近のボーイズグループのオーディションを見ていると、候補者が愛用のスキンケアや日焼け対策を紹介するシーンがあったり、ネイルをしていたりして、時代は変わってきたなぁとしみじみ思います。男たるもの~みたいな価値観を軽々飛び越えて、超自然に美容をエンジョイする姿に希望を感じるんです。

もちろん、美容をとくに気にかけたくないという人も性別を問わず尊重されるべきですし、あくまで自分がどの状態が心地いいのか、ということが大事だと思います。

ただ、男性が自分をケアするのは恥ずかしい、おかしいという価値観はもう手放していいんじゃないかと思います。

美容を始めた人を茶化すのは、いいことなし! と思うのです。

 

写真/Shutterstock

文・構成/ヒオカ