長い、長すぎる!初デートで「自分語りばっかり」な男には理由があった〈ばけばけ第83回〉

『ばけばけ』第83回より 写真提供:NHK
今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラ(連続テレビ小説)に関する著書を2冊上梓し、毎日レビューを続けて10年超えの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は、第83回(2026年1月28日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)
サワの授業が上達している理由
錦織(吉沢亮)が校舎を歩いている。次期校長としての視察のようだ。
生徒の習字「白かば林」。右に「白か」、左に「ば林」と書かれているが、ななめ読みの「ばか」だけ目立って見えるのは筆者だけだろうか。
ふと見れば、教室内ではサワ(円井わん)が授業をしている。
授業が終わって、錦織が声をかける。
松江新報の記事を見たと言い、錦織おまえもか! と思ったが、そのあとがほかの人達とは違う。
サワの先生になりたいという願いが「きっとかなうと思うよ」「熱のこもったいい教え方をしていた。前にも一度見させてもらったことがあるが見違えるようだった」と言うのだ。
うれしいサワ。たぶん、こういう言葉が彼女にはいま、一番うれしいと思う。錦織は、サワの気持ちを多分、よくわかっている。彼もまた、ヘブン(トミー・バストウ)に一時期、ただの通訳のように言われて落ち込んだときがあるから、自分の力が世の中や誰かの役に立っていないことに敏感に反応する自尊感情の低い人だと思うから。
サワの授業が見違えてきたのは、錦織の友人・庄田(濱正悟)のおかげ、のはず。でもそれを錦織は知らない。
主題歌明け。ヘブン邸に錦織は移動。
トキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)が歌っていて、ヘブン、「お見事」と褒める。
トキは一時期より元気になっている。新聞記事になったことで、サワの勉強熱に火が付いたと知って、トキは安堵(あんど)しているのだ。
それはヘブンのおかげ。
「さすが夫婦よね」とフミ(池脇千鶴)が錦織に語りかける。
この日、錦織が訪ねてきたのは、ヘブンに校長を引き受けることにしたと報告するためだった。
「生徒たちのためにも、そしてヘブンさんがここに居続けるためにもお受けしてみよう」と決めた。
ただ「校長になってもヘブンさんのリテラリーアシスタントはできるんですよね」と念を押す。
そばランチで気分が悪くなるサワ
「では一緒に頑張りましょう、錦織校長」とヘブンは手を差し出し、ふたりは固い握手を交わした。
そこに、トキがお茶を持ってきて、気取った口調で英語を話す。お茶(tea)を「チー」と発音して錦織に出す。
錦織は流暢(りゅうちょう)な英語でトキに話しかける。
「最近落ち込んでいたようだが元気になったんだね。君が落ち込んでいると、ヘブンさんまで沈んでしまう。君はこの家の太陽なんだから輝いていてくれよ」
だが、こんないいことを言われても、トキは「今の私には『おトキさん』しかわからん」。
「『おトキさん』は英語でもないしな」と錦織は突っ込む。
こんなふうにふざけられるのも、サワのことが新聞に載ったおかげだろう。
一方、サワは白鳥倶楽部で勉強中。日曜日にも通ってきて頑張っている。
こちらは庄田のおかげ。
「いやいやおサワさんの力だよ」と言いつつ、「ならわしのおかげということでありがたく受け取っておきます」と庄田はやっと感謝を受け入れた。
いい感じになったところで、昼餉(ひるげ)にいくことに。土江(重岡漠)も門脇(吉田庸)もいかないのはたまたまか、気を利かせてか。
こうしてふたりは花田旅館でそばランチ。庄田を値踏みする、平太(生瀬勝久)とツル(池谷のぶえ)。ウメ(野内まる)は「がんばってごしなさい ふふふふ」と意味深に笑う。
だが庄田は、自分と錦織の話を長々と話し出す。
「あいつはわしらの同期で松江始まって以来の秀才と呼ばれたものすごい男なんだ。だが、家が貧しく中退を余儀なくされ、しかしあまりに優秀だったためそこから代用教員となった。一方、わしは錦織には遠く及ばなかったが、あいつと一緒に東京に出て同じ試験を受け、自分で言うのもなんだがまさかの合格を果たし、東京で英語教師になった。そして実は県知事閣下から松江中学の教師にならないかと打診があり、私も故郷に錦を飾りたかったので松江に戻ってきたんだ。だが結局のところ断ってしまった。わしが行くと、なんというか錦織がやりにくいだろうと思ってね。別に仲が悪いわけじゃないんだよ。むしろ仲は――」
長い、長いぞ。視聴者に、庄田の設定を説明するためだとしても、唐突にかなり長い。すると、サワの表情がみるみる曇っていく。
「ダメ 気分が悪くて」
やっぱり自分語りの長い男はいやだよねえ。これだから男に頼らずひとりで生きると改めて思ってしまうのでは? と思ったら――。
庄田もサワも、初めてだった
「初めてなんです。こうやって男の方と食事をするのが」
なんとも素朴な答えが飛び出した。
「男の方? え、わしのこと?」
「はい」
「あ、あ、そうなんだ。なんだそれで。ははは」
庄田のリアクションもなんかおかしい。
「ごめん。それは申し訳なかった。初めての男性との食事がわしのような男で」
ふたりは少し沈黙。そのあとの庄田の告白もびっくり。
「でもわしもなんだ。わしもこれが初めての女性と2人きりの食事だ」「だから心臓がそばと一緒に口から飛び出しそうで、それでただただ喋ってごまかそうと」「ごめんそっちのことまで気づけなくて」
自分語りが多すぎたことをちゃんと謝る庄田はじつに紳士的だ。
「でもなんか良かった。おサワさんも初めてで」
「はい。私もなんか良かったです。庄田さんも初めてで」
もじもじするふたり。サワがとてもいい笑顔になっている。
ヘブンとトキが湖畔を歩いている。
スズムシは「リリリリ……」
うまおいは「スイッチョン」
オノマトペで虫の声を再現していると、ヘブンが「すばらしい人達」と、虫の声を聞いているらしき風情ある男女ふたりに気付いた。
女性の顔にトキはびっくり! それはサワと庄田だった。
なんかいい感じである。これは、サワも優秀な庄田と結婚して、川を出られるのでは? トキ、なみ、サワ、もう全員、結婚退社じゃなくて、全員、結婚脱出(川の向こうへ)でいいのではないか。
フォトギャラリー
主なシーンより
第17週(1月26日~1月30日)
「ナント、イウカ。」あらすじ
「ヘブン先生日録」で時の人となったトキ(高石あかり)。しかし、そのせいでサワ(円井わん)との関係がぎこちなくなる。傷心のトキをヘブン(トミー・バストウ)はなんとか励ます。一方、傷心中のサワは一人、教員資格取得のために勉強に励んでいた。そこに東京から帰ってきた庄田(濱正悟)から、勉強を手伝うと声をかけられる。はじめは仕方なく庄田のアドバイスを聞くサワだったが、次第に庄田に心を開き、尊敬していく。
連続テレビ小説『ばけばけ』
作品情報
連続テレビ小説「ばけばけ」。松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々を描きます。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語です。
【作】 ふじきみつ彦
【音楽】 牛尾憲輔
【主題歌】 ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
【出演】高石あかり(「高」の表記は、正確には「はしごだか」) トミー・バストウ / 柄本時生 さとうほなみ 円井わん 濱正悟 岩崎う大 重岡漠 吉田庸 野内まる / 渡辺江里子 木村美穂 / 吉沢亮 / 岡部たかし 池谷のぶえ 池脇千鶴 佐野史郎 生瀬勝久 ほか
【放送】 2025年9月29日(月)から放送開始