元横綱・白鵬にドタキャン騒動が…照ノ富士の断髪式「阿部詩、小島瑠璃子ら女性陣も多数参加」密着記

断髪式での鋏入れに女性が多かったのも今回の特徴。土俵下で鋏を入れる小島瑠璃子さん

「白鵬翔さま!」

1月31日に1万人近くのファンを集めて両国国技館でおこなわれた、元横綱・照ノ富士(34、伊勢ヶ濱親方)の断髪式が後半に差しかかった時、元横綱・白鵬こと白鵬さん(40)の名前が呼ばれた。

照ノ富士と縁のある招待客が50音順に土俵に上がり、鋏を入れていくスタイルの断髪式。ところが、司会者から名前を呼ばれた白鵬さん本人が、いっこうに土俵に現れない。いったい何が起こったのか?

会場はザワついた。

優勝45回という大記録を残して白鵬さんが引退を発表したのは、’21年秋場所後のことだった。引退後は、年寄・間垣を襲名後、’22年7月に宮城野部屋を継承した。

翌年春場所では、幕下15枚目格付け出しで入門した落合(現・伯乃富士、前頭3枚目)が所要1場所で新十両に昇進するなど、幸先のいいスタートを切ったが、’24年初場所中に発覚した弟子の北青鵬(当時、幕内)の暴行事件の責任を取って、白鵬さん(当時、宮城野親方)には2階級降格と部屋の閉鎖という厳しい処分が下った。

取り沙汰された「仲」

ドルジハンド夫人は蝶ネクタイに不慣れな照ノ富士をナイスアシスト!

白鵬さんと弟子たちの転属先は、横綱・照ノ富士が所属する一門の伊勢ヶ濱部屋。奇しくもかつて土俵上でしのぎを削った2人が同じ部屋に所属することになったのだ。

旧宮城野部屋の弟子たちは、部屋が再興されるまでの「一時預かり」の身分とはいうものの、異なる部屋の力士同士が一緒になれば稽古場こそ活気が出るが日常生活や人間関係はギクシャクする。

部屋閉鎖から1年が経っても再興のメドがつかない白鵬さんは、昨年6月、相撲協会を退職。現在は相撲の普及活動に国内外を奔走しているのだが、さまざまな経緯から照ノ富士との「仲」が取り沙汰されていることは否めない。

「遺恨」による断髪式ドタキャンなのか――。

白鵬さんが姿を現したのは、本来の出番から60人が過ぎた頃だった。館内で親方衆と雑談をしているうちに、アナウンスを聞き逃してしまったというのが理由だった。

10年前にモンゴルで国民栄誉賞を受賞した時に袖を通して以来という、金色のデール(モンゴルの民族衣装)に身を包んだ白鵬さんは、照ノ富士の肩に手を添えて「おつかれさまです。がんばってください」と長年の労をねぎらった。

東京オリンピック女子柔道52㎏級で金メダルを獲得した阿部詩選手も鋏を入れた

「神聖な場所でした」

兄、一二三選手(28)と共に来場した、東京オリンピック柔道女子金メダリストの阿部詩選手(25)、ゴルフの上田桃子さん(39)、タレントの小島瑠璃子さん(32)ら、多くの女性陣が鋏を入れたのも、今回の断髪式の特徴だった。土俵に上がることが許されていない女性は、特注の壇上から鋏を入れる。

4~5年前から照ノ富士こと伊勢ヶ濱親方と交流がある阿部詩選手は、

「鋏を入れたのは初めてです。本当に神聖な場所でした」

と神妙な面持ち。

また、大関から序二段まで陥落、そこから横綱昇進までの復活劇を間近で見守り続けた先代の伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士、現・宮城野親方)のおかみさん、杉野森淳子さんも万感の思いを込めて、鋏を入れた。

そして、一門の親方衆、横綱・豊昇龍(26)、大関・安青錦(21)らの現役力士の後は、伊勢ヶ濱部屋の関取たちが鋏を入れる。1月の初場所では、安青錦と優勝決定戦を繰り広げた熱海富士(23・前頭4枚目)は、伊勢ヶ濱親方がもっとも期待している力士である。

「もっと稽古しなければ、強くなれないぞ!」

と、同親方から日々𠮟咤を受けている熱海富士だが、徐々に「スパルタ指導」の成果が出てきているようで、3月の春場所では三役復帰が濃厚だ。

また、初場所、豊昇龍、大の里(25)の2横綱に土を付けて殊勲賞を受賞した義ノ富士(24。前名・草野、前頭筆頭)は、伸び盛りの力士。日大で実績を残した義ノ富士は、以前から白鵬さんからスカウトを受けており、大学卒業後は宮城野部屋への入門が決まっていた。

ところが、入門を前にして宮城野部屋が閉鎖となったため、伊勢ヶ濱部屋に入門したという経緯がある。先日開催された白鵬さん主催の「白鵬杯」には、「白鵬の秘蔵っ子」と称された伯乃富士と共に姿を現して、旧師匠との「絆」を確かめていた。

さて、髷を落として、スイングショートというオシャレな髪型に変身した照ノ富士は、タキシードを身にまとい、土俵上で最後の挨拶。

「師匠(前・伊勢ヶ濱親方)をはじめ、部屋の仲間たち、私の日常を支えてくれた家族に感謝します。これからは相撲界に恩返しをできるよう、がんばりたい」

と述べる親方を囲むように、土俵下には新生・伊勢ヶ濱部屋の力士たちが並び、ファン、後援者らに頭を下げる。

春場所では、195㎝、141㎏という抜群の体躯を誇る寿之富士(25。前名・聖白鵬)が新十両として土俵に上がる。これで、6人の関取を擁することになった伊勢ヶ濱部屋。「協会の看板を背負うような力士を育てたい」と意気込みを語る伊勢ヶ濱親方の「師匠人生」は、まだ始まったばかりだ。

整髪中の照ノ富士がいる別室は報道陣でてんやわんや

元横綱・白鵬の白鵬翔さんは予定より遅れて断髪式に登場。「後輩横綱」照ノ富士の肩に手を置き耳元で長年の労をねぎらった

初場所で大関・安青錦と優勝決定戦を演じた熱海富士。照ノ富士には日々「稽古が足りない」と厳しい指導を受けている

元白鵬の宮城野部屋へ入門する予定だった義ノ富士。入門直前で部屋が閉鎖になったため伊勢ヶ濱部屋に入り現在は幕内力士に

整髪を終えて来場者に挨拶をする伊勢ヶ濱親方。土俵下には伊勢ヶ濱部屋の力士全員が並んだ

引退相撲当日は両国国技館正面玄関近くに「照ノ富士」の力士幟がはためいた

取材・文:武田葉月(ノンフィクションライター)