楽天モバイル、黒字化の裏で不満噴出 通信設備に2兆円投資必要か

AI三木谷浩史会長
2025年末、1000万契約を突破した楽天モバイル。
三木谷浩史会長は「2025年度中のEBITDA通期黒字化達成」を公約していたが、2月12日に発表の2025年度通期決算説明会で129億円の黒字だったことが明らかにされた。
今年、三木谷会長が公約に掲げるのが「ネットワーク強化宣言2026」だ。
決算会見ではAIアバターとなっている三木谷会長は「データ利用量の多い若年層のユーザーがかなり増加している。改めて2026年はネットワーク強化の年として、重点的に対策を行ないたい」と宣言した。
Xには「楽天モバイル_お客様サポート(@Rmobile_Support)」というアカウントが存在するのだが、楽天モバイルユーザーがネットワーク品質に不満を述べているポストを見つけると、ひとつひとつ丁寧にお詫びのコメントをしているのだ。
その数が半端なく、このアカウントを見ているだけで「楽天モバイルのネットワーク品質、大丈夫かな」と心配させられる。
ポストのなかには当然「楽天モバイルを辞めてpovoにしたら快適すぎた」なんてものもあり、楽天モバイルユーザーの不満が相当、溜まっている印象がある。
ネットワーク品質の早期改善が必要
楽天モバイルも自覚しているようで、AI三木谷会長は「ネットワーク強化による通信品質の向上は当然ながら契約回線数拡大に直結する。これまでも前例のないスピードで全国に自社ネットワークを構築し、かつKDDI様のネットワークも借り受けながら運営してきたが、特に都市部中心に急速な契約者数拡大を迎えている。これによるトラフィック増加分はしっかりと自社のネットワークで捌ききるよう、設備の増強を図っていきたい」としている。
確かに自社でネットワークを構築しているが、KDDIのローミングに依存しているエリアもまだ多いようだ。
2月6日に開催されたKDDIの決算会見で松田浩路社長は「先日、楽天モバイルで通信障害が発生した際には、我々の方にかなりのトラフィックが来ていたことが確認されている。つまり、それだけでエリアが重複しているということであり、そうした部分は順次、(ローミングを)切り、停波させていく」としたのだ。
実際、KDDIが公表しているローミングのエリアマップを見ると、関東圏だけを見ても、かなりの場所がローミングサービス提供エリアとなっている。
「東京23区および局所的なトラフィック混雑エリアは除く」とあるが、一方で、東京23区の繁華街エリアの一部」も対象としている。
つまり、混雑するエリアにおいてはauユーザーために、楽天モバイルに対してローミングは提供していないが、それ以外の場所であれば、23区内でもローミングとなっている場所があるということだろう。
楽天モバイルの通信障害はNTT東日本のデータセンターでの電源障害による影響であったが、結果として、auローミングと重複している場所があぶり出され、契約終了を待たずして、その場所はローミングが停止する恐れが出てきた。
楽天モバイルとすれば、早期にネットワーク品質を改善する必要があるのだ。
2000億円投資も“焼け石に水”の可能性
楽天モバイルでは2026年度、2000億円強の設備投資を計画している。
ただ、楽天モバイルは通期でのEBITDA黒字化という公約を達成するため、この3年間は大幅に設備投資を減らしていたのだった。
ピーク時の2021年は2930億円であったが、2023年には1680億円、2024年は810億円、2025年は工事会社を確保できなかったということもあり、630億円と大幅に落ち込んでいるのだ。
ユーザーの急増に対して、ここ数年、設備投資をしなかった、いや、できなかったということもあり、ネットワーク品質がかなり落ちているという状況を招いているようだ。
2026年度は「高じ会社との綿密な協力体制はもちろん、社内の人的リソースも集中させ、基地局建設を加速していく」(AI三木谷会長)としている。
ただ、2000億円と言っても、楽天モバイル自体は2025年の通期売上収益が4828億円ということを考えると、かなりの負担であることは間違いない。
今後もユーザーが増え、さらにトラフィックも増え続けることが予想されるため、この2000億円も「焼け石に水」なんてことになりかねない。
2兆円規模の投資が必要に?
他社の場合、様々な周波数帯を豊富に持っているため、1つの基地局に複数の異なる周波数帯のアンテナを立てることができ、トラフィックを分散させやすい。
一方、楽天モバイルはメインが4Gの1.7GHz帯であり、いかに5Gとして使っている3.7GHz帯にトラフィックを流していくかが重要となる。所有する周波数帯が限られるため、いかに基地局を数多く打つかが勝負と言えるのだ。
既存3社が全国に30万以上の基地局を配備する中、楽天モバイルは10万程度に留まっている。楽天モバイルはこれまで1兆3000億円程度、設備投資をしてきたようだが、他社並みにするには、あと2兆円以上の設備投資が必要になるのかもしれない。
筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)
スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。