【NHK朝ドラ「ばけばけ」第21週開始】失業危機のヘブン(トミー・バストウ)は「書く人」へ イセ(芋生悠)が“呪われている”理由は次回判明?

高石あかりがヒロイン・トキを演じる「ばけばけ」(毎週月~土曜午前8時、NHK総合ほか)。第21週「カク、ノ、ヒト。」は、ヘブンが英語教師ではなく、あくまで“書く人”として生きる覚悟を試されるような週のようだ。勤務先である熊本第五高等中学校の“廃止の議論”、届いた80円の為替、そして熊本に残る数々の言い伝え。職を失うかもしれない不安のなか、物語は家族を守る術になり得るのか。
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■怪しげな投資にまた手を出す司之介
ヘブンが書き物をしている間は、トキを含め、家族全員が息を潜める。物音ひとつでヘブンの頭から考えが消えてしまい、書き上げられない可能性があるためだ。食事中でも、箸の音すら立てぬよう神経を張り詰める必要がある。
その緊張の先に、ようやく書き上がった1本の物語。あくまでヘブンは英語教師ではなく、作家なのである。21週のタイトルが表しているように、今週は書き物で生きていくヘブンの覚悟に光が当たるのだろう。
しかし同時に、暗い影が立ち込める。なんと、帝国議会でこの高等中学校の廃止が議論されているという報が広まる。もし本当に学校がなくなってしまえば、英語教師としてのヘブンの仕事はなくなってしまう。収入は途絶え、松野家はふたたび、狭い長屋暮らしに戻る可能性も……。トキやフミ(池脇千鶴)は内職に追われ、女中のクマ(夏目透羽)とも離れなければならないかもしれない。
たとえ長屋に戻ることになっても、クマはすでに家族なのだから、離れることはない。不安の只中で交わされるこの約束が、松野家の強さを表している。
しかし、現実は甘くない。司之介(岡部たかし)はまたしても怪しげな投資話に手を出し、せっかく増やした金をそっくりそのまま失ってしまう。家族を守ろうと焦る父の空回りは滑稽であり、どこか痛々しい。

■創作は孤独な営み、それでも
高等中学校の先行き、ヘブンの乗らない筆、投資で金を溶かす父の存在……。さまざまな不安要素があるなか、ヘブン宛に為替が届く。80円の為替は、ヘブンが書いた「焼き網泥棒事件に端を発した一連の騒動」への報酬だった。
80円は、今の松野家にとっては決してはした金ではない。英語教師とは別の顔である、作家としての収入を示す貴重な80円。そして添えられた手紙には、次の話を待ち望む期待も込められていた。
かつて、愛する人と家庭を築こうとして破綻した過去を持つヘブンにとっては、書くことはただの夢追い人による行為ではない。書くことで家族を守る、その決意の裏には、過去の痛みが見え隠れする。
作家として弾みをつけたいところだが、教師の仕事は時間を奪う。忙しさは増し、生徒の作文添削や代講にも追われる日々。疲労と焦燥は、少しずつヘブンの筆を鈍らせる。書けるときは止まらないが、書けないときは何も浮かばない。その振れ幅こそ、作家・ヘブンの宿命なのかもしれない。
そんなヘブンのために動き出す松野家の面々。焼き網事件をヒントに、箸を隠そうとしてみるクマ。本屋で題材を探すトキやフミ、そして書生丈(杉田雷麟)や正木(日高由起刀)。物語は、家族総出で支えるものになっていく。創作は孤独な営みではあるけれど、同時に共同作業でもあることを、静かに示す微笑ましいシーンだった。

■ヘブンには焦りが滲むものの
熊本には、その土地に根付く言い伝えが息づいている。先日クマが語った「畳の話」や、お地蔵様の前でたまたま行きあった女性・イセ(芋生悠)が告げた「車引きと一緒に地蔵に願うと叶わない」「嘘をつけば来世でヘビになる」という禁忌。
「畳の話」とは、人がずっと座ってぬくもりが移ったその場所へ、間をおかずに他者が座ると、元に座っていた者の不幸せをすべて背負い込むことになる、という言い伝えである。座る前にトントンと畳を叩けば難を逃れるらしい。
そんな言い伝えがたくさん残っているなら、ヘブンの興味を引くかもしれない。そう考えたトキは、“呪われている”とも言われるイセを自宅に呼んで話してもらうことにする。彼女は堂々と、「音を立てて襖を開けたら、一回音を立てるたびにその者の寿命が一年縮まる」と話すものの、ヘブンがその理由や実例について尋ねると、途端に勢いが落ちてしまった。
古めかしく日本らしい魅力があっても、その“いわれ”がないのであれば信憑性は減る。そこが言い伝えと怪談で違う点かもしれない。ただの言い伝えには、怪談の背景にあるような人の心や、琴線に触れる悲しみがない。
メモ帳をペンで叩く姿に、焦りが滲むヘブン。教師ではなく作家として生活の糧を得るため、家族を守るため、彼は熊本という環境を丸ごと物語に落とし込むことができるのか。ヘブンが“書く人”として生きる覚悟を固めるための、静かな助走となる週なのだろう。
(北村有)
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