大学入学後に起きた2つのリアルと想定外の出費

無事に大学へ入学、となっても、そのあとで想定外の出費があることも……(写真:xiaoping / PIXTA)
希望の住まいが見つからず学生寮へ
愛知県在住の鈴木さん(仮名)宅では、国立の筑波大学に通う長女に続き、この春から次女も神奈川県内の大学へ進学する。きょうだいの在学期間が重なることは想定していたものの、教育費の負担は「やはり重い」と話す。
【中退者の割合とは?】入学した大学とのミスマッチで転学の追加費用も
とりわけ最初の子どもの進学時は、想定外の出来事が起こりがちだ。鈴木さん親子の場合、長女の合格後、まず直面したのは住まい探しだった。近年は事前予約制度を導入する不動産会社も増えているが、合格がわかってから動き出したため、希望に近い物件はすでに埋まっていたという。
「女の子ですから、やっぱりオートロックのある物件がいいじゃないですか。でも、もうどこも残っていなかったんです」(母親、以下の発言すべて)
引き続き調べていると、ある情報を入手した。筑波大学には医学部があるのだが、この医学部の卒業生は春ではなく、6月に退去することが多いという。医学部の場合、医師免許の国家資格に合格後、研修医となるが、研修医として進む先が決まるのがだいたいこの時期だからだ。
つまり、6月まで待てば希望する物件の空きが出る可能性がある。そこで鈴木さんの長女は、とりあえず空きのあった大学の学生宿舎(寮)に入り、一般の物件が空くのを待つことにした。
学生宿舎は大学敷地内にあり、単身用(約10㎡)の費用は改修前の棟で1万5380円、改修された棟の場合は1万9410円。一般の学生マンションに比べると格段に安く、机や椅子、ベッドなどの備品も付いている。

筑波大学(写真:PIXSTAR / PIXTA)
一方、キッチン、トイレ、シャワー、ランドリールームは共同利用。食事はついておらず、大学内の食堂で食べるか、自炊するかが主な選択肢となる。
だが共同利用のキッチンは昔ながらの電熱線コンロがいくつかあるだけ。これを複数人で使わなければならないため、自炊は難しかった。
また大学によっては、支援制度などによって100円で食事を提供する学食もあるが、筑波大学の学食にはそうした仕組みはない。
例えば栄養バランスの取れた日替わり定食は1食650円前後で、昨今の物価高では良心的と言えるかもしれないが、大学の学食としては「さほど安くないと感じました」。
自炊がしづらい分、頻繁に学食を利用すれば食費の負担が積み上がる。「私立と比べたら学費は安いから、このくらいは仕方がないかとも思いますが、結局、娘の場合はコンビニでカップ麺を買う機会が増えてしまったようです」
またシャワーも数が少なく、混み合う時間帯はいつ使えるのかわからなかったという。
2人の娘の学費と仕送りが「きつい」
噂どおり、6月になるとオートロックのついたマンションで空き部屋が見つかり、引っ越すことができた。家賃は月5万5千円で住居費は高くなるが、シャワーも好きな時間に入れ、自炊もできるため満足しているという。

引っ越した部屋、内覧時の様子(写真:鈴木さん提供)
現在の仕送り額は光熱費や食費など合わせて月13万5千円ほど。あまり外に遊びに行くタイプでもないため、交際費はさほどかからない。当初は仕送りで足りない部分は本人がアルバイトをして賄っていた。
「福祉施設のアルバイトをしていたようです。長時間の時もあり、月に8万円~10万円くらいはもらっていました」
ある程度、お金を貯めることができたため、今はアルバイトを辞めているという。
この春からは、次女への仕送りも新たに始まる。音楽大学に進学した次女には、防音設備の整った住環境が欠かせず、下宿先の家賃は管理費込みで8万5000円にのぼる。防音仕様のためか、周辺の物件と比べると割高感は否めない。
長女が国立大学に進学してくれたことは家計の支えになっているが、学費と仕送りが同時に発生する負担は「やはりきつい」という。鈴木家では、このダブル進学を見越して教育費を備えてきた。夫婦ともにフルタイムで働く共働きの強みを生かし、2馬力で教育費を捻出している。
「もう一度受験がしたい」と切り出されて
東京都在住の太田さん(仮名)宅では、3人の子の大学進学を経験した。大学2年生の末っ子が卒業すれば、晴れて教育費から解放される。
三者三様にいろいろとあったようだが、中でも、当初計画していたものから計算が狂ったのが次男のときだった。
現在、社会人3年目の次男は現役で筑波大学に合格。加えて、私立の明治大学からは"特待生"扱いで合格をもらっていた。
筑波大学は国立なので学費の負担は少ないが、一人暮らしとなる。最終的には、自宅から通える明治大学への入学を決めた。特待生だったため、学費も国立と変わらない。おまけに自宅からとなれば下宿代もかからないため、親としてはかなりありがたかったという。
しかし、喜んだのもつかの間。しばらくすると、次男は「もう一度受験がしたい」と言い出した。いざ大学へ通い始めると、なんとなく、やりたい学問と違った、というのが息子の言い分だった。
実はこの次男のように、転学を希望する学生は毎年一定数いる。文部科学省が毎年行っている調査によると、大学を中退する人の割合は2022年度から2%台になり、この割合が続いている。
入学した大学とのミスマッチで転学を希望
中退の最も多い理由が「転学・進路変更」だ。大学側が総合型選抜などの推薦型入試の定員を増やしてきているのには、学びのミスマッチを防ぐためという狙いもある。
総合型選抜の場合は、大学に入学後、どのように学んでいきたいのかを出願の時点で明確にする必要がある。そのため、学びのミスマッチが起こりにくいからだ。

令和6年度 学生の中途退学者

(画像:文部科学省「令和6年度学生の中途退学者・休学者数の調査結果について」より)
結局、太田家の次男も大学を受け直すと決意。「仮面浪人」の日々が始まったのだが、特待生は成績を落とせばその資格を失うため、昼間は大学の授業に真剣に取り組み、レポートもしっかり出さなければならない。予備校に通う時間はなく、大学の勉強の合間を縫って自力で受験勉強を重ねた。
その後、無事に慶應義塾大学の商学部に合格して明治大学を退学、慶應へ入学した。慶應は特待生ではないため、入学金も学費も普通に払わなければならず「特待で学費がだいぶ免除になったのを、結局元から払わされたような感じになりました」と母親。
大学入試に挑む時には想定していなかった事態となったが、本人が転学を強く希望していたため「仕方がない」と割り切ったという。学費は余計に払うことになったが、慶應も自宅から通えるため下宿代はかからない。これがせめてもの救いだった。
芸大に行った三男は画材の出費大
その次男も社会人となり、残すは三男のみ。三男は東京芸術大学で学んでいる。国立のため学費は安いが、こちらはこちらで、画材などにお金がかかる。
「本人のアルバイトで画材の購入費は賄ってもらうよう、だんだんと移行していきました」(母親)
大学入学後、三男は自分もお世話になった美術専門の塾で講師のアルバイトを始めた。バイト料は月に3万円から5万円ほどだが、夏休みなどで受け持つクラスが多い時には1カ月にバイト代が9万円ほどあることも。また、学園祭の展示の際に絵が売れることもあるという。
こうした臨時収入は芸大ならではのことだ。この収入は画材購入のほか、仲間と一緒に自主的に行う共同展の費用に充てている。
住まいの想定外の出費、進路変更による二重の学費負担などなど、大学進学は「入れば終わり」ではなく、入ってからも選択と決断の連続だ。子どもの可能性を信じて背中を押すたびに、家計は揺れる。備えあれば憂いなし。予期せぬ選択が起こることも見据え、あらかじめ柔軟な資金計画を立てておくことも必要だ。