東大推薦、驚異の4人全員合格 渋谷教育学園渋谷の進路部長が明かした合格の本質とは 【大学合格ランキング2026】

 東大推薦の合格者といえば“天才”のイメージがある。東大の学校推薦型選抜で初の4人の合格を出した渋谷教育学園渋谷高校を取材すると、合格者の研究は意外にも“地道”だった。

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 2026年、東京大学の学校推薦型選抜で、1校あたり最大4人までの推薦枠のなかで、出願した生徒全員が合格した高校が初めて出た。東京都の私立中高一貫校、渋谷教育学園渋谷高校だ。同校によると、法学部、農学部、工学部、薬学部に各1人が合格した。

 大学通信の調べでは、東大の推薦入試が始まって11回、1年も欠かさず合格者を出し、累計は全国最多の24人となった。

■家庭菜園から東大農学部へ

 東大推薦の合格者といえば、数学オリンピックでメダル獲得、権威ある学術誌に論文を掲載――そんな“天才”ぞろいなのか。

 渋谷教育学園渋谷高校の進路部長、高橋正忠さんは言う。

「今年合格した4人に関しては、コンテストや研究において、聞けば誰もがわかるような賞を受賞した生徒はいません」

 生徒たちが示した活動実績は、研究内容は意外にも“地道”だった。

 今春、農学部に合格した男子生徒は、自宅の家庭菜園が大好き。中学1年の頃から自宅の家庭菜園で実験してきた。家庭から出た生ごみを堆肥にして循環できないか。トマトの栽培条件を変えて、環境負荷の低い状態で、収穫量やおいしさを担保できるか挑戦してきたという。

「でも、設備も予算もある農業高校や理科部とは違って、生徒の研究の主戦場はあくまで家庭菜園です。高度な研究成果があったわけではないのです」

 それにもかかわらず、合格したのはなぜか。

「彼は家庭菜園に本当に興味を持って、継続的に研究することができました。その証拠となる活動実績は、いくつも示すことができました」

■「東大は親切」

 一つのテーマに向き合い続けた経験が、東大の推薦入試で評価される。

 東大の推薦入試の一次選考は書類審査。コンクール入賞歴などに加え、生徒が書いた「志願書」を提出する。

「実は東大の志願書は、かなり親切です。大学側が何を求めているのか、明示してくれているのです」

 例えば法学部では、こんな設問があった。

<現代社会においてあなたが重要と考える問題について、その理由を明らかにしつつ、具体的に論じてください>

 問われているのは、生徒の内面だ。

「学部によりますが、志願書ではただ自分の実績を説明するだけにとどまらず、大学からの問いに対して、自分の経験も絡めつつ、いかに自分の考えを深めて伝えるかが求められます」

 出願準備の初期段階では、生徒はつい「大人が喜びそうな答え」を書いてしまうこともあったという。はじめは「飢餓問題」や「女性の社会進出」といった“教科書的なテーマ”を掲げる生徒は多い。

 そんなとき、高橋さんは問い返す。

「本当にあなたに貧困を語ることができますか?」

 東京の私立中高一貫校に通う生徒たちは、比較的恵まれた環境で育っていることが多い。面談を繰り返して掘り下げていくと、自分は恵まれているが、同じ年齢で貧困にあえぐ子どももいる――。そんな「世の中の不公平」に対して違和感を抱いていたのだということに気づく。

「人生を紐解くと、違和感を抱いた原体験が見えてくるのです。自分の生活と結びつくことで説得力が生まれます」

 その問題意識に対して、自分はどう向き合うのか。志望する学部の学びと結びつけて考える。

「輝かしい実績があるに越したことはありませんが、生徒の『本当に、この学問を東大で学びたい』という思いが伝わるから、合格できたのではないでしょうか」

■合格ノウハウが蓄積

 探究学習に力を入れている学校だからこそ、生徒は自分の関心を掘り下げて言葉にする力を身につけてきた。高校1年から1万字以上の研究論文を書く。東大農学部に合格した男子生徒は、論文でも食料問題に関わるテーマで執筆していた。

 自分自身を掘り下げる力は、受験の前だけでなく、日々の学校生活でも養われるという。渋渋では運動会など学校行事の後、振り返りシートを書く。「何を学んだのか」「次はどうするか」を言語化する習慣をつけているという。

 大学通信情報調査・編集部部長の井沢秀さんはこう話す。

「東大が求めるレベルの能力・資質をもった生徒が毎年途切れないことに加えて、その生徒にしっかり寄り添って合格に導く教員の実力に驚きます。過去に合格した先輩たちの志願書も参考にできます。合格のノウハウが積み重なっているのでしょう」

 東大推薦に必要なのは、天才的な実績ばかりとは限らない。

(AERA編集部 井上有紀子)

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