世界中から100棟以上を選出。見るだけでも楽しい、世界の奇妙な建築の本。

November 16, 2025 | a wall newspaper | text_Chiyo Sagae

建築ファン必読!? 型破りな建築の世界調査に基づき英国の出版社がリリースした新刊『奇妙な建築物』が話題です。

〈Teapot Dome Service Station〉ティーポット・ドーム油田の政治スキャンダルを揶揄し1920年代に建設。@Zillah, Washington, USA / (c) Mark Kiver (Alamy)

〈Drina River House〉10代の少年たちが1968年に建てた小屋。@Bajina Bašta, Serbia / (c) 2024 HornyHamster (Shutterstock)

タイトルを微塵も裏切らぬ建築ビジュアル本『奇妙な建築物』は、建築・デザイン愛好家に手に取ってほしい今秋一押しの新刊だ。英国のライター、イモージェン・フォルテスが収集した世界の最も異例で想像力豊かな建築的創造物100棟以上を写真とともに紹介、思わず引き込まれる!

〈Casa del Acantilado〉傾斜42度の崖に埋め込んだ冷暖房不要の家。@Granada, Spain / (c) Luminar Neo

〈Under〉スノヘッタによる水中レストラン。@Lindesnes, Norway / (c) Lillian Tveit

例えば、巨大な岩盤に挟まれたポルトガルの〈石の家〉は景観に溶け込み、滞在者が自然に浸れる田舎の別荘として地元の一家が建設。水泳後の休息所として10代の少年たちが中州の鋭く切り立った岩の上に建てたセルビアの〈ドリナ川ハウス〉は、1960年代の建設以来地元住民が再建し続ける。家禽販売用に1931年に登場し、今ではロングアイランドのランドマークになった〈ビッグ・ダック〉。ほかティーポット型サービスステーションなど、彫刻と構造物の境界線を巧みに歩むアメリカの道端の奇抜な建造物群を網羅する。

〈The Basket Building〉ベストセラー商品にちなんで設計したロンガバーガー社の元本社ビル。@Newark, Ohio, USA / (c) Andre Jenny (Alamy)

〈HABITAT 67〉学生の卒論が万博のパビリオンとして実現した60年代の集合住宅。@Montreal, Canada / (c) Arcaid Images (Alamy)

かと思えば、急斜面の崖に埋め込んで室内温度を常に20℃に保つ〈崖の家〉。ちなみに日本は建築家、岡啓輔が20年以上かけて手作りした〈蟻鱒鳶ル〉を掲載。ほかスノヘッタ設計のノルウェーの水中レストラン〈アンダー〉など、新旧、有名無名、規模の大小にかかわらず機能性と幻想性を兼ね備えた文字通り「奇妙」な建築群の創造のパワーに目を奪われる。

〈The Wave〉フィヨルドの波紋のような集合住宅。@Vejle, Denmark / (c) Finbarr Fallon

〈The Big Duck〉養鶏業者が商品の販売用に建設を依頼。@Flanders, New York, USA / (c) Randy Duchaine

つまるところ、世界各地の標準化に抗う建築を称賛する本書が伝えたいことは何なのか。均一性と効率性で形作られがちなこの世界に、これらの構造物は好奇心、想像力、探究と実験の価値を読者に喚起する。それは、世界のさまざまな不可視の境界線をも押し広げる原動力に思えてくる。秋深し。いざ、遊び心あふれる読書の旅へ。

〈Casa do Penedo〉岩塊に挟まれた隠れ家的な家。@Fafe, Portugal / (c) Marc-Philipp Keller (Alamy)

〈The Steel House〉建築・発明・彫刻家による錆びた宇宙船のような家。@Lake Ransom Canyon, Texas, USA / (c) Jerry Cotten

『Weird Buildings』 英国ホクストン・ミニ・プレス社より2025年9月刊。建築とデザインの限界を押し広げる100棟以上の建築物をイモージェン・フォルテスの文章とともに収録。20ポンド。 公式サイト