多忙な学校で「余裕ある先生」副担任との関係に差

授業準備も万全、文科や教委からの通知にも精通、何でもサクサクと仕事を進める先生の日常とは?(写真:Fast&Slow / PIXTA)
もし、毎日の校務が1時間短縮され、その分を生徒との対話や自身の研究にあてられるとしたら、先生の仕事はどう変わるでしょうか。
【具体的な活用例】Google Geminiで学年だよりのたたき台を作成するには
そこで大きなはたらきをするのがAIです。AIはまるで優秀な副担任のように、先生の仕事を大きく効率化してくれるのです。
生成AIの活用は、もはや一部の「ITに強い先生」だけの特権ではありません。無料のツールを少し工夫して使うだけで、教材作りも学年だよりの文案作成も、驚くほどスムーズになります。
確かに、校務にAIを活用する先生は増えてきて、校務が改善されています。しかし、いまだにAIを活用することなく、従来の働き方をしている先生の姿も目にします。AIを使う先生と使わない先生の差は少しずつ広がっています。
ここでは、AIの活用で見えてきた「新しい学校の姿」まで、等身大の実感を持って綴ります。
明日から使える無料ツール4選、まずは「Google」
「AIを使ってみたいけれど、何から始めればいいかわからない」という先生でも明日から実践できる無料ツールを4つ、使い方を含めて紹介します。まずは、教育現場と相性の良い以下の無料(または教育者向け無料プランがある)ツールから触れてみると良いです。
1. Google Gemini
Googleの生成AIです。Googleアカウントがあれば無料で利用でき、最新のウェブ情報に基づいた回答が得られるのが強みです。実際、多くの学校でGoogle Workspaceが導入されているため、教員の仕事との親和性が高いです。
【具体的な活用例】
・学年だよりのたたき台作成:「中学1年生が学習に対して前向きになれるような、温かいエピソードを交えた500字程度の文章を作成して」と依頼します。そうすると依頼に応じた文章が生成されます。生成された文章をたたき台として学年だよりを作成することで、1から作るのと比べて大幅な時間短縮になります。
・校務文書の要約:長文の通知文や教育委員会の資料をコピー&ペーストし、「3つのポイントに要約して」と指示します。Geminiは要約にも長けており、必要な情報を容易に得ることができます。

(画像:筆者提供)
Geminiは回答のスピードが速く、生成されたテキストをワンクリックでGoogleドキュメントやGmailにエクスポートできるため、事務作業のシームレスな効率化に最適です。また、Gemini教育版は全年齢対象となっているため、児童や生徒が学習にも活用できます。
2. Google NotebookLM
Googleが提供する、特定の資料をAIに学習させて活用するツールです。Googleアカウントがあれば無料で利用することができます。AIがネット上の不確かな情報ではなく、ユーザーがアップロードした資料(ソース)だけを根拠に回答します。
【具体的な活用例】
・学習指導要領との照合:特定の校種や教科の学習指導要領をアップロードし、「中学1年生の現在進行形についての授業アイデアを提案して」などと質問をします。一人では湧かなかったような授業アイデアが生まれます。
・生徒指導案件の相談:校内の生活指導に関するマニュアルをアップロードし、「セーターの着用について教えて」と相談します。学校によって異なるきまりもすぐに知ることができ、児童・生徒や保護者からの質問にも即座に対応することができます。

(画像:筆者提供)
NotebookLMはハルシネーションが起こりにくく、情報の出典が明示されるため、正確性が求められる教育現場で最も信頼できるツールの1つです。
「Canva」と「Padlet TA」
3. Canva AI
GoogleやMicrosoftなどさまざまなアカウントからシングルサインオンして利用することができます。教育関係者は「Canva for Education」を申請すれば、有料級の機能を無料で使うことができます。
【具体的な活用例】
・AI画像生成:「理科の実験で使う、ビーカーと試験管が並んだ可愛いイラスト」と入力するだけで、著作権フリーのオリジナル画像が完成します。そのままデザインの中で使用する画像を生成するのにお勧めです。
・マジック作文:箇条書きのメモを、一瞬で「学級だより」風の整った文章へ変換することができます。また、文章の続きを作成することもでき、デザインだけではなく、文章生成にも優れています。

(画像:筆者提供)
Canvaには数万種類のテンプレートがあり、ポスター、スライド、時間割表などがプロ級の仕上がりになります。視覚的な支援が必要な生徒への資料作りにも有効です。さまざまなAI機能があり、文書やスライド作成を大きく手助けしてくれます。
4. Padlet TA
Padletはオンライン掲示板として有名ですが、そのAI版である「Padlet TA」は、単なる効率化を超え、授業の質を向上させるパートナーです。
【具体的な活用例】
・レッスンプランの生成:学年や学習目標、その他の情報を入力すれば、すぐに授業の構成案が完成します。思いもよらなかったようなアイデアを生み出すことができます。
・アクティビティやクイズの生成:レッスンプランの生成と同様に条件を入力すれば、授業でそのまま使えるようなフラッシュカードやマッチング、並べ替えなどを生成することができます。リンクを児童・生徒に共有して1人1台端末で取り組ませることもできます。

(画像:筆者提供)
TA(ティーチング・アシスタント)という名の通り、先生の授業づくりの伴走をしてくれます。大きく校務改善に貢献してくれます。
なお、このPadlet TAは2026年7月1日をもって完全に「Padlet Arcade」に移行する予定となっています。
Padlet Arcadeに完全移行後は、アクティビティやクイズ、ゲームなどのツールのみ生成することができます。「ワークシート」「授業計画」「ぬりえシート」「プレゼンテーション」の4種類の非ゲームツールはGemini上のGemとして利用可能です。
AIが浸透して職員室の雰囲気が変わる?
個人レベルの活用から、職員室全体、そして学校全体へとAI活用が浸透したとき、学校という組織はどのように変容していくのでしょうか。
まずは職員室の雰囲気が大きく変わります。これまでの学校現場では、ベテラン先生の卓越した指導案や、児童・生徒への魔法のような声掛けは、その先生個人の経験というブラックボックスの中にありました。
AI(特にNotebookLMなど)を活用し、過去の優れた実践資料や校内研修の記録を学校独自の知のデータベースとして共有することができます。
そうすれば、若手教師が去年の先輩の指導案をベースに、今年のクラスに合わせた授業案をAIと相談しながら数分で作ることができます。経験の差による不安が解消され、職員室全体で知見を底上げする「共創の文化」が生まれます。
働き方改革が進み、個別最適な学びが日常化する?
また、働き方改革が大きく進んでいきます。働き方改革が当たり前になることは、単に楽をしているわけではありません。
行事の計画案作成、会議の議事録、大量の校務文書作成といった「機械的な作業」をAIが担うことで、放課後の職員室からキーボードを叩き続ける音が消えていきます。よく、教員の仕事はブラックだと言われますが、そのような汚名をそそぐことにもつながるでしょう。
空いた時間で、教員は最新の教育理論を学んだり、他校の見学に行ったり、あるいは一人の人間として趣味や家族との時間を大切にしたりすることができます。心に余裕のある先生が教室に立つ。これこそが、子どもたちにとって最大の教育的メリットになります。
一斉授業の限界は、平均的な理解度に合わせて進まざるをえない点にありました。AIを使えば、一人ひとりの理解度や興味関心に合わせた補助プリントや解説動画をその場で生成することができます。個別最適な学びを日常化していくことができます。
教室を見渡せば、ある子はAIと対話しながら難問に挑み、ある子はAIのヒントを得て基礎を固めている。先生はその間を歩き、最も支援を必要としている子の隣に座って、じっくりと対話する。「AIが教え、人がファシリテートする」。そんな役割分担が成立します。
一方、AIにできないこともあります。それは「児童・生徒の視線の揺れ」や「小さなため息」に込められた意味を汲み取ることです。事務作業から解放された先生の目は、余裕をもって生徒へと向けられます。
「最近、あの子の笑顔が少し硬いな」「今日の授業、彼は何か言いたげだったな」。AIが書類を作っている間に、先生は児童・生徒の心のSOSや成長の兆しにいち早く気づけるようになっていきます。テクノロジーが進化すればするほど、学校は最も人間らしい場所へと進化していくのです。
AIの活用で生き方もアップデート
このように、AIを活用することで、教員の働き方は劇的に変わってきます。働き方が変われば、精神的に余裕ができ、自分のために時間を有効に使うことができるようになります。
それが児童・生徒のためにもなるのです。つまり、AIの効果的な活用は良いサイクルを回すことにつながります。
最近では、NotebookLMを活用して研修会で発表するためのスライドを生成しました。デザイン性にも優れており、自力では作ることのできないようなスライドを作ることができて驚きました。今までだと数時間あるいは数日かかっていたような作業を数分で終わらせることさえ可能です。
ここ1年で単著2冊と共著を出版し、周りから「どうしてそんなに時間があるの?」と聞かれることがありますが、それはAIを活用することでうまく時間を生み出せているからです(執筆は自力です)。AIの効果的な活用は働き方だけでなく、生き方もアップデートしてくれます。