岸井ゆきの、松山ケンイチとの芝居は「半分ドキュメンタリー」ベテラン俳優陣のタフさに驚愕「お別れホスピタル2」【インタビュー】

広野誠二(松山ケンイチ)、辺見歩(岸井ゆきの)(C)NHK
4月4・11日に放送されるドラマ「お別れホスピタル2」(NHK総合)。主演を務める女優の岸井ゆきのは、前作を経てさらに深まった死生観を胸に、療養病棟という「生を肯定する場所」へ再び足を踏み入れた。

土曜ドラマ「お別れホスピタル2」キービジュアル(C)NHK
「お別れホスピタル2」とは?

桜田美々(YOU)(C)NHK
沖田×華氏の同名漫画を原作に、「透明なゆりかご」や連続テレビ小説「おかえりモネ」、2027年放送の大河ドラマ「逆賊の幕臣」も担当する安達奈緒子氏が脚本化したシリーズ第2弾。岸井が主人公の辺見歩役で出演し、医師の広野誠二を松山ケンイチが演じる。前作から、先輩看護師役で内田慈と仙道敦子、妹の佐都子役で小野花梨が続投。伊東四朗、渡辺えり、阿川佐和子、柄本明らが患者役で出演する。

大戸屋次郎(きたろう)、赤根涼子(内田慈)(C)NHK
「人生の最期」を丸ごと肯定する覚悟
前作の放送時から「ずっと『2』がやりたかった」と語る。続編の実現に「またここで働ける」という喜びに包まれたが、前作とは異なる視点が芽生えていたという。初めて終末期医療に携わった前回は「自分だったら」と投影していたのに対し、今回は「辺見の仕事は、最期だとわかり、今まで生きてきた意味を見つけ出そうとする人たちを看取る仕事なんだと。私たちは彼らにとって『最後に出会う人』であることに変わりはないけれど、彼らの生き方に意味をつけることはできないのだと深く思いました」と真摯に語る。
「きれいに死ぬ、死ぬ準備をして死ぬことなんてきっとできない。呼吸があって心臓が動いていることが(生きている)証じゃないかと思うけど、それはまだ死なない人間だから言えること」と、死を前に葛藤する患者に寄り添う辺見の心境を代弁。一般的な医療ドラマが「治すこと」を目指すのに対し、本作は「死に向かっていくこと」を描くため、自らの役目を「看取る、ケアするというより、最後まで肯定する。そういうふうにやっていました」と振り返る。
松山ケンイチと刻む「半分ドキュメンタリー」の表情
重いテーマを扱う現場だが、舞台裏はベテラン俳優陣のタフさに支えられ、意外にも明るかったという。「私が不安に駆られたり胸が苦しくなったりするのに対して、皆さんはカットがかかったらケロっとしている。『あれ、あと何回戦やるんだっけ、疲れちゃったよ』みたいな。そのタフさがすごくかっこいい」
100歳の患者を演じる伊東や、過去を抱える女性を演じる渡辺ら大先輩たちの芝居には、自身の人生経験に裏打ちされた温かさがあった。「生きていたことを肯定している感じがした。確実に思い出している人がいるんだなって」。とりわけ伊東が回想シーンで見せた若々しい声には「感動した」と興奮気味に語る。
また、前作に続き共演した松山との芝居は、極限のリアリティーに達した。「そこに立っているのが、辺見と広野なのか、岸井ゆきのと松山ケンイチなのか分からなくなるぐらい、魂を感じるんです。お芝居をしようとしていない私たちが映ってしまっているかもしれない」。演出陣からも「半分ドキュメンタリーのよう」と評されるほど、2人の間には生きた感情が流れていた。
「ずっと良くなっていかなきゃダメ?」妹へ寄せる思い
本作では、引きこもりがちな佐都子を通し、生き続けることのしんどさも描かれる。「生きているうちはどうしてずっと良くなっていかなきゃいけないの?」という佐都子のセリフは、自身の胸に深く突き刺さった。
「死を目の前にして生を全うする人と、生きていて生きたくない人と、辺見は暮らしているんですよね。佐都子の言葉には本当に答えが出ない」。だからこそ、佐都子の「今」をそのまま肯定したいと願う。「ケーキを食べながら『死にたいって思ってるよ』と話す場面も出てきますが、辺見を演じて、それでいいと思ったんです。生きている意味を他者がつけることはしにくいから、佐都子が『私死にたいよ』って思っている今を肯定してあげたい。死にたくても、自分を嫌いでもいいから、まだそばにいてほしいっていう気持ちです」
前作から月日が流れ、自身の死生観にも変化が訪れた。「前作出演時に、深く生きることと死ぬことをセットで考えるようになって、ふとした時に考えちゃうようにはなりました」。しかし、それは決してネガティブなものではなく、「生と死を考えることによって、生きているということを感じたいと思えた。恐怖や不安にとらわれたこともあったけど、そうやって考えることで、もっとポジティブなことができるようになるから」と力を込める。人生の棚卸しをし、どう生きるかを見つめ直す。それが、辺見歩を演じ切った彼女がたどり着いた「答え」だ。