政治家から転身…元最年少市長が「核融合」に挑むワケ 東修平氏「限られた資源の奪い合い」「原理的に解決」

政治家から転身…元最年少市長が「核融合」に挑むワケ 東修平氏「限られた資源の奪い合い」「原理的に解決」
ホルムズ海峡情勢の緊迫化で、原油や液化天然ガスの供給が懸念されている今、あるものが注目されている。それが「核融合エネルギー(フュージョンエネルギー)」だ。現在「夢のエネルギー」として世界中で開発競争が繰り広げられている。不安定な世界情勢によりエネルギー価格の高騰が国民生活を直撃する中で、日本が石油やガスを永遠に買い続けなければならない構造から脱却できるのか。「ABEMA Prime」では、全国最年少の市長として活躍、現在は核融合エネルギー関連企業の副社長に就任した東修平氏に、この核融合エネルギーが日本で開発できるのか、それはいつなのかなどを聞いた。
■「太陽」を地上に再現する 核分裂とは根本的に異なる安全性

核融合とは、太陽の中で起きている反応と同じ原理を地上に再現しようとする試みだ。 具体的には、海水から無尽蔵に取り出せる「重水素」と、リチウムなどから生成される「三重水素(トリチウム)」を合体させ、その際に発生する莫大なエネルギーを利用する。 現状の原子力発電が「核分裂」を利用しているのに対し、核融合はエネルギー効率が4倍以上高く、二酸化炭素は排出されず、高レベル放射性廃棄物もほとんど出ないクリーンさが最大の特徴とされる。
Starlight Engine株式会社・副社長の東氏は、核融合の仕組みと安全性について次のように解説する。
「一番身近なものは太陽。太陽は轟々と燃えているが、あれがまさに核融合の仕組みで、地上に太陽の原理でエネルギーを生み出そうというもの。重水素と三重水素がくっつくとエネルギーが生まれる。それには1億度(まで加熱)が必要で、イメージとしては磁石のN極とN極というくっつかないものを無理やりくっつけるために強いエネルギーがいるようなものだ」。
また、従来の原子力発電(核分裂)との違いについては、廃棄物の側面からその安全性を補足した。「核分裂の場合、高い放射線を帯びたものが出て、処理するのに何万年とかかる。核融合の場合でも原理的に(放射性物質が)出るが、その処理は100年単位なので安全性が一定担保できる。高いレベルの放射性廃棄物が出ない」。
東氏はかつて、全国最年少の市長として大阪府四條畷市で2期8年務めた経歴を持つ。政治の世界から一転、エネルギー開発の最前線へと転身した背景には、市長時代に培った「平和と安定」への強い思いがある。
「この世界の構造を変えていく上で、エネルギーは最重要なものの一つ。市長として、市民と向き合ってきた経験から、みなさんの平和や安定を考えた場合に、この構造を変えていくことに取り組みたいと思った」。
また、「私が今できることは、核融合を修士まで学んできたこと、市長として住民と向き合ってきたこと。ここを兼ね備えた経験を持っている人間は、なかなか日本にいない。社会に実装していく今のフェーズでは、世の中の役に立てるのではないか」と自らの役割を明確にする。
さらには「市長をしていた経験からすると、やはり毎日穏やかに暮らせるのが、政治としては一番。その原因は何か。やはり限られた資源を奪い合っているから、現状が引き起こされている。それを原理的に解決していきたい」とも述べた。
■今は「6合目」、2040年代の実用化は「勝算30%」

研究の歴史は長いが、実用化のフェーズとして東氏は現状を「6合目」と表現する。人類はすでに1億度を作ることも、反応を起こすことも可能にしているが、最大の壁は「パッケージ化」にあるという。東氏は現在の状況をモータースポーツに例えて説明した。
「正直申し上げて、最近まで『夢の技術』だと思っていたが、しっかり勉強したところ、これは着実に前に進んでいる。イメージで言うと(特別な車である)F1カーはできるが、まだ(一般に利用する)乗用車を作るには至っていない。一瞬、高速で走れるものは作れるが、頻繁にタイヤを交換したり修理が必要になる。それを普通に日常走れる車にしていくことを目指す。その『乗用車1号』を誰が世界で最初に作るかということだ」。
世界に目を向けると、アメリカは民間主導、中国は国家主導、ヨーロッパは国際共同プロジェクトと、三者三様の開発体制をとっている。日本はこれまで国際的な実験炉「ITER(イーター)」において重要な技術を提供しており、東氏は「この蓄積が現時点では日本が世界で一番ある」と客観的な優位性を強調する。
しかし、産業として勝つためには技術力だけでは不十分だ。かつての半導体産業のように技術で勝ってビジネスで負ける歴史を繰り返さないために、東氏は「標準化」や「法整備」の必要性を訴える。
「例えば標準化や規格化をいかに早い段階から組み込んでいくのか。同じく原理的な平和を希求する国々とどうやって有効活用していくのか。重要な論点としては、日本でこれだけホットな議論になってきているのにも関わらず、核融合に関連する法律は1本もなく、法の定めがない。これは相当遅れている。この技術が分かりつつも、社会に接続することを担う人物が圧倒的にいなかった。そこを私は担っていきたい」。
実用化の時期について、東氏は「2040年代前半」という展望を示す。成功する勝算については「30%ぐらい」と冷静に見積もるが、それは決して悲観的な数字ではない。失敗が許されない国際プロジェクトとは異なり、民間企業がリスクを取って無数のチャレンジを繰り返すことが、突破口になると考えている。
「民間主導であれば、ある程度は進んでいく時に失敗ができる。国税を使うために絶対に失敗できない国際プロジェクトとの違いは大きい。民間がリスクを負って、無数の失敗やチャレンジがこれから世界中で生まれていく。(成功への)崖は厳しくなっていくが『登る』というよりは『よじ登っていく』ということ」。
生成AIの普及により爆発的に増大する電力需要に対し、核融合技術の輸出は強力な経済的武器にもなり得る。日本が技術の力でエネルギーの覇権を握り、真の平和を実現できるか。
(『ABEMA Prime』より)
【映像】核融合エネルギーの仕組み
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