若者「レンタカー離れ」で激変する国内旅行…事故多発の離島とタイパ・メンパで選ばれる「熱海」

若者に急増「車なし旅行」のリアル, 宮古島で増えるレンタカー事故, 地方旅に潜む「不慣れな運転」の罠, Z世代が重視する「メンパ」とは, 車なしで大満喫! 熱海のV字回復, 若者の車離れに焦る「沖縄」の対策, 若者が選ぶ「コスパ最強」旅の未来

急増する「車なし旅行」。タイパに次ぐ“メンパ”重視で熱海が一人勝ちのワケとは……。写真は、熱海駅に隣接する「熱海駅前 平和通り商店街」

若者に急増「車なし旅行」のリアル

スマホとSNSでの情報収集が当たり前となった今、若者の間で「新たな旅のスタイル」が共感を集めている。それが「旅行先でレンタカーは借りない」という選択である。

東京や大阪といった大都市圏なら公共交通機関で事足りるが、地方は依然として「車社会」だ。鉄道がなくバスの本数も少ない地域では、レンタカーがなければ行動範囲は著しく狭まってしまうはずである。

しかし、今の若者たちにとっては「車がなくても楽しめる」旅行先こそが、最旬のトレンドとなっているのだ。関東の人気観光地から沖縄の離島まで、旅行ジャーナリストが現場で目撃した、激変する「国内旅行のリアル」を解説する。

宮古島で増えるレンタカー事故

沖縄、宮古島。国内で人気が高い離島であり、東京や大阪からも直行便がある。その宮古島には鉄道はなく、バスは走っているものの数はそう多くない。空の玄関口である宮古空港や下地島空港およびその周辺には、大手をはじめ数多くのレンタカー会社が点在する。

筆者が現地でレンタカーを利用した際、店員から第一声で「事故にはくれぐれも気を付けてください」と忠告を受けた 。理由を尋ねると、「最近、島民との事故やレンタカー同士の事故が多く、その対応に追われている」という。

「レンタカーによる交通事故がこの数年で10倍に増えた」とも聞いた。その内容は「信号がほぼない場所で、狭い路地なのに、左右をよく確認せずに突っ走ってくる」「インバウンドも増えて外国人の事故も多い」とのことだった。

別の島では、急に観光地化した場所でレンタカーによる路上駐車が増えたため、アスファルトに線を引いて駐車場を整備したという話も。実際、宮古島で人気の観光地の駐車場では、「わ」「れ」ナンバーのレンタカーが溢れかえり、警察官が慌ただしく事故処理にあたる光景も目にした。

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宮古島(写真奥)と来間大橋で結ばれている来間島。「宮古ブルー」と呼ばれる海が美しく、島巡りでレンタカーを利用して来る旅行客も多い

地方旅に潜む「不慣れな運転」の罠

内閣府規制改革推進室が’25年3月に発表した「移動実態に関する調査結果」によれば、旅行先での移動手段には明確な地域差が表れている。

  • 【大都市圏】(東京圏、名古屋圏、大阪圏)
  • 「電車・地下鉄」58.2%
  • 「自家用車・レンタカー」36.2%
  • 「徒歩」27.7%
  • 【大都市圏以外】
  • 「自家用車・レンタカー」56.6%
  • 「電車、地下鉄」32.2%
  • 「徒歩」21.1%

地方旅行においてレンタカーは重宝する移動手段だが、普段は車を所有せず、旅先でしか運転しないペーパードライバーも少なくない。土地勘のない場所で不慣れな運転をすれば、たとえ大都市圏より交通量が少ない地方であっても危険が伴う。

Z世代が重視する「メンパ」とは

観光地で頻発するレンタカーの事故、またパトカー出動のリアルな現場を目の当たりにすると、「せっかくの旅行で事故処理という絶望を味わいたくない」という防衛本能が働くのも、無理はないかもしれない。

また、日常的に車を運転し、旅先でも利用している層の中心は高齢者である。宮古島のレンタカー窓口で手続きをしていたのも自分以外は高齢者ばかりであり、実際に路地からの急な飛び出しや、枠を大きくはみ出した駐車など、ヒヤリとさせられる場面に何度も遭遇した。高齢ドライバーの問題は旅行先でも例外ではなく、「もらい事故」のリスクも潜んでいる。

JTB総合研究所が’26年3月に発表した「ライフスタイルと旅行に関する調査2026」において、若い世代ほどタイムパフォーマンス(タイパ)を重視する一方、失敗や精神的ストレスを避ける「メンパ(メンタルパフォーマンス)」を優先する旅が拡大していることが明らかになった。

若者のレンタカー離れは、単なる経済的理由や免許未取得といった事情にとどまらず、「旅費に加えてリスクも伴う」というレンタカーの特性を敬遠する心理が背景にあるのだ。

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下地島空港の「17END」に隣接する駐車場。写真映えするスポットとして多く紹介された結果、飛行機が飛来する前の時間帯は駐車場に車が溢れている

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レンタカー主流の沖縄旅、行政が今後への危機感も……。離島などの旅行は「レンタカー」が欠かせない。だが、車がないと楽しめない場所が旅行先の選択肢から外れることもあるという

車なしで大満喫! 熱海のV字回復

今、若者に人気を集めている旅行先の一つが、静岡県の熱海市である。東京から新幹線で約45分、在来線でも2時間ほどで着く。インバウンド客が多い現在においても、JR熱海駅前は若い年代の日本人旅行客が大半を占め、賑わいを見せている。

熱海は、主要な観光スポットを徒歩や路線バスで巡ることができる点が魅力だ。海岸から駅へ向かう急な階段も、体力のある若者にとっては苦にならない。さらに、近年の「昭和レトロ」ブームにより写真映えスポットとして注目を集め、ノスタルジックな喫茶店や商店街での食べ歩きなど、車がなくても存分に楽しめる環境が整っている。

熱海市の統計によれば、宿泊施設利用人数と観光レクリエーション客を合算した観光交流客数は、’03年度の780万6475人から徐々に減少し、コロナ禍を除いて’11年度は523万1252人まで落ち込んだ。しかしその後に再び増え始め、コロナ前の’19年度は721万7162人、そして’23年度は627万3274人へと、見事なV字回復を遂げている。

熱海以外にも、草津温泉、鎌倉や江の島、高尾山などが最近、旅行客で賑わっているという。いずれも、車がなくても旅行が楽しめる場所である。

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東京から気軽に行ける旅行先、熱海。昭和世代におなじみだが、今は日本人かつ若者の旅行客が非常に多い

若者の車離れに焦る「沖縄」の対策

一方で、若者のクルマ離れに強い危機感を抱いているのが、前述の沖縄県である。沖縄県・沖縄コンベンションビューローによる’23年1月の調査では、沖縄旅行におけるZ世代の移動手段について「旅先で運転したくない」という声が62.9%に上った。同時に「沖縄の公共交通を利用したい」との回答が83.3%を占めたという。

同資料によると、沖縄を訪れる観光客の67.2%が、移動手段でンタカーを使用する。沖縄の鉄道は、那覇空港と那覇市、浦添市を結ぶ沖縄都市モノレール(ゆいレール)しかなく、郊外へのバスはそう多くない。空港からリゾートホテルへ行くだけなら往復バスでも問題はない。だが、道中で観光スポット巡り、グルメやショッピングなどで立ち寄りたければ車が必須となる。

こうした状況を受け、沖縄県は公式ウェブサイトで「レンタカーだけじゃない! おきなわ旅の楽しみ方 『レンタカー以外の交通手段』」と題し、車なしで行ける離島やモデルコースを積極的に紹介している。

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沖縄観光WEBサイト「おきなわ物語」で紹介されている、レンタカーを使わない沖縄の旅。モデルコースは「定番スポットを訪れる旅」「絶景癒し旅」「沖縄グルメ旅」など

若者が選ぶ「コスパ最強」旅の未来

昨今の物価高、そしてインバウンドの増加などでホテル代が高騰し、日本国内を旅行する費用も以前より高くなっている。レンタカーも多人数で割り勘にすれば安価だが、1〜2人の少人数利用では安くない。筆者が宮古島でコンパクトカーを2泊3日借りた際も、フルカバーの保険を含めて2万円弱かかった。

これに加えてガソリン代の負担も重い。特に離島の燃料費は本州より高く、3月半ばの宮古島ではレギュラーガソリンが1リットルあたり231円(セルフ式)にも達していた。

流行りの「コスパ」そして「メンパ」という点を考慮すると、車がない旅は確かに安く済み、しかも気楽である。レンタカー代が浮く分、ホテル代にお金をかけて滞在を楽しむこともできる。

若者の趣味が多様化していること、また、若者のクルマ離れ、そして日々の生活に余裕がなければ車を保有する割合が増えないことを鑑みると、今後は「車がないと楽しめない旅行先」よりも「車でなくても楽しめる旅行先」が、さらに人気を集める時代が来るかもしれない。

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移動手段として、レンタカーのほかに「カーシェア」もある。長時間だとレンタカーより割高だが、短時間かつピンポイントで行きたい場所があれば便利なことも

取材・文・写真:シカマアキ