歴史を俯瞰して読み解く、名作家具の誕生秘話。建築家・寺田尚樹によるレクチャーシリーズが一冊の本に。

April 14, 2026 | a wall newspaper | photo_Nanako Ono text_Emi Uemoto

建築家・寺田尚樹による名作家具のレクチャーシリーズをまとめた書籍『モダンファニチャーヒストリー』 が刊行されました。

[Scandinavia]リビング タワー/ヴァーナー・パントン パントンはビビッドな色彩と独創的なフォルムを得意とし、北欧らしからぬデザイナー。腰かけたり寝転んだりと最大で4名が座れる。

18世紀半ばにイギリスでおこった産業革命を発端としたモダンファニチャーの歴史を紐解く一冊。

アルネ・ヤコブセンの《アントチェア》はイームズの成型合板の椅子がきっかけだった!?

そんな名作家具の誕生秘話を横断的に紹介する『モダンファニチャーヒストリー』。著者は家具輸入商社インターオフィスの社長を務めた建築家の寺田尚樹。「家具を単体ではなく、時代背景を含めて俯瞰して見る。そうすると、実はいろんなデザイナーが同時代に生きて、影響を与え合っていたことがわかってくるんです」

[Germany]ハラーシステム/フリッツ・ハラー 1965年にデザインされたUSMのモジュール式収納家具。パイプをポールジョイントでつないでフレームをつくる仕組みで、拡張可能。※USMはスイスのブランドだがドイツの章のコラムで紹介。

[Japan]ステンレスカトラリー/柳宗理 父・柳宗悦の「用の美」を受け継ぎモダンなプロダクトへと昇華させた。「ヤコブセンの《AJカトラリー》と並ぶアイテムだと思います」

本書は「質実なドイツ」「裕福なアメリカ」「陽気なイタリア」「清貧なスカンジナビア」「懸命な日本」の5章仕立て。各章の折り込み扉を開くと、緻密に描かれたイラスト入りの手描き年表が。家具の歴史を体系的に理解できるようにと、寺田自身が描いたものだ。そして思わず笑ってしまうのが欄外にある「はみだしMEMO」。「イームズがアサリのお味噌汁が好きだったらしい、とか(笑)。本編とは関係ないですが、デザイナーへの親近感が湧きますよね。副音声のようなものだと思って楽しんでもらえたら」

[Italy]チューブ/ジョエ・コロンボ クッション付きの大小の筒をクリップで留めて自由に組み合わせ、収納時は入れ子状に一つに収まる。2016年にカッペリーニから復刻。

[U.S.]チューリップチェア/エーロ・サーリネン 1本脚のデザインは、ダイニングテーブルの脚元をすっきりと見せるために生まれた。「この椅子は1本脚で特許もとっています」※エーロ・サーリネンはフィンランド出身だが、幼少期にアメリカへ移住。

自邸でも数々の名作家具を愛用中。《リビング タワー》を入れるためにロフトをつくり、壁の色もそれに合うように選んだという。「トレンドで選ぶのではなく、自分が愛着の湧く家具を見つけてもらえたらうれしいですね」

年表には細やかに家具や建築、解説が描き込まれている。

寺田尚樹

てらだなおき 1967年大阪府生まれ。建築家・テラダモケイ主幹。2018年〜24年インターオフィス代表取締役社長。26年〜武蔵野美術大学造形学部教授。グッドデザイン賞審査委員なども務める。

『モダンファニチャーヒストリー』 

世界各国の名作家具を歴史背景とともに紹介する。建築やプロダクト、時代を象徴するイベントも絡めながら解説。350点以上の図版のほか、手描きイラストも。寺田尚樹著/青幻舎刊/6,600円。