〈『プラダを着た悪魔2』で大復活〉富豪の彼氏が逮捕、「努力家」→「イタい女」と評価が一転…アン・ハサウェイ(43)の“波乱万丈人生”
伝説の「お仕事バイブル」が、大人のドラマになって帰ってきた。2006年に公開されて以降、日本でも莫大な人気を誇ってきた映画の続編『プラダを着た悪魔2』(2026年5月1日公開予定)が、20年の月日を経てついにお披露目される。
第一弾では新卒だった主人公アンディも、新作では40代に。監督いわく、キャリアを積んだ大人の女性に向けた物語になるそうだ。
映画と同じく、主演のアン・ハサウェイもミレニアル世代(1981年~1990年代半ば生まれ)を代表する人気女優。お姫さまのような容姿とひたむきな姿勢は、キャリア女性が増えた同世代の象徴とも言われている。しかし、おとぎ話さながら、波乱万丈なキャリアを歩んできた人でもある。

アン・ハサウェイ
デビューから順風満帆、“シンデレラストーリー”を歩んでいたが…
1982年ニューヨークに生まれたアンは、スポーツや音楽に励む元気な少女として育った。一番の夢は、舞台女優の母を見て3歳のころから憧れていた俳優。10代になると、両親の反対を押し切り、単身芸能界に自らを売り込んでいった。
ブレイクは、まさにおとぎ話のようだった。オーディション中、緊張しすぎて椅子から落ちてしまったことで、庶民がお姫さまになるディズニー映画『プリティ・プリンセス』(2001)の主役に抜擢されたのだ。
私生活でも王子様に出会った。若きイタリア人イケメン実業家、ラファエロ・フォリエリに一目惚れし、話題のカップルになったのだ。
努力家のアンは、一切手を抜かずスターの階段をのぼる。『プラダを着た悪魔』(2006)の主演の座も、9番目の候補だったにも関わらず、スタジオ幹部のオフィスにあった砂庭に「私を雇って」と書き残すまでの情熱で手に入れたものだ。
プリンセスにふさわしく、信念も持っていた。同性愛を描いた大人向け映画『ブロークバック・マウンテン』(2005)で浮気される妻を演じて物議を醸した一方、コメディ作品のオファーに対しては、出産をからかうような女性表現を理由に断ったりしていた。
ひたむきで高潔なアンのプリンセスストーリーに亀裂が入り始めたのは、2000年代後半。4年間交際していた富豪が、詐欺で逮捕されたのだ。バチカンとのつながりを偽り、クリントン大統領夫妻まで巻き込む数億円の規模の詐欺だった。アンはすぐに別れたが、彼からたくさんの宝石や贅沢旅行を贈られていたことから「彼女も金を返すべき」と糾弾されることとなった。
「努力家」→「イタい女」と評価が一転した“事件”
災難はつづく。2010年、アカデミー賞が若い視聴者を呼び込むべく、通例はベテラン芸人が就く司会に、若手俳優である彼女とジェームズ・フランコを抜擢したのだ。関係者によると、アンはひたむきに準備し、女性表現についても配慮していた。一方、サブカル肌のジェームズはまともに協力せず、本番の授賞式でも「泥酔疑惑」がかけられるような態度をとった。
気まずい空気のなか、アンは舞台を持たせるため一人で奔走したが、そのがんばりも空回り。裏舞台のことなんてつゆ知らずな視聴者からすれば、彼女のほうが悪目立ちする結果に。今ほどフェミニズムが普及していなかった時代なのもあり「男のやる気を削いだイタい女」と責める論調すら出てきた。愛されていたはずの努力家ぶりが、嫌われる要素に転じてしまったのだ。
バッシングのピークは、またもやアカデミー賞。『レ・ミゼラブル』(2012)でファンテーヌ役を熱演したアンは、売れっ子としてメディアに出続けて、露出過剰状態に陥る。見事オスカーに輝いたものの、その頃には、彼女のことを「あざとくて大袈裟」「頑張りすぎてイタい」と嫌うことがブームとなり「ハサヘイト」現象とまで名づけられてしまっていた。

『プラダを着た悪魔』(2006)に出演したアン・ハサウェイ
「ハサヘイト」の理由はなんだったのか、今でも説明できる人は少ない。「完璧すぎる優等生」なイメージが大衆の癇に障った面はあるかもしれない。しかし、ハリウッド恒例の「オスカーの呪い」と見るのが妥当だろう。
30代から中年にかけて全盛期を迎えるスター男優と異なり、女優が良い役をもらえるのは20代から30代に集中している。ゆえに、人気女優は若いうちにたくさんの話題作に出ていって露出過剰状態となり、いざ賞に輝くと「若くしてすべて持っている女」として一気に嫌われてしまう現象だ。
当時、アンと比べて「自然なサバサバ系」と褒め讃えられていた後輩女優のジェニファー・ローレンスにしても、数年後には「あざとい」と叩かれようになる。ちょっとした会話が切り取られて「わがまま女優」と報道された際、声を上げたのはアンその人。誤情報を指摘し、メディアや世間の女性蔑視を批判したのだ。「それまで持ち上げてきた女性が少しでもミスを犯したら容赦なく引きずり下ろすなんて、悲しい慣習はもうやめにしましょう」。
逆境の中でも勇敢さを失わなかったアンだが、猛バッシングが残した影響は大きかった。「あまりの悪評」によりトップ監督から干される事態に陥ってしまったし「大袈裟」という中傷自体、本人がずっと気にしていたことだからこそ深く傷ついたという。
それでも、持ち前の情熱を失わなかった。お手本は『プラダを着た悪魔』ミランダ役の大女優、メリル・ストリープ。彼女のように、つねにアーティストとして成長していくキャリアを追求し、小規模な作品や舞台で挑戦をつづけた。
“大復活”のきっかけとなったオール女性キャスト映画
二年ほど映画界を離れたアンの大復活となったのは、オール女性キャスト映画『オーシャンズ8』(2018)。かつて自分に投げつけられた「わがままなナルシスト女優」のイメージを面白おかしく演じきり、あっぱれな女優魂と喝采された。本人としても、はじめて同性ばかりの現場を体験したことで、肩の力が抜けたそうだ。
キャリアを通してアクション大作からSF、女性映画、アートフィルムにまで出演してきたアン・ハサウェイは、今や世代を代表する40代女優として君臨している。メディア露出こそ減ったが、スポーツを情熱的に観戦する姿がSNSで拡散されたりすることで、自然なかたちで好感度が復活した。
2026年は「ハサ・ルネッサンス」、つまり第二の全盛期と評判だ。全米公開予定作はなんと5本。「干され」時代に手を差し伸べてくれたというクリストファー・ノーラン監督の大作『オデュッセイア』(2026年日本公開予定)から、ワケありポップ歌手を演じる『Mother Mary(原題)』まで、『プラダ2』以外にも次々と期待作が待ち受けている。

アン・ハサウェイ ©AFLO
ジュエリーデザイナーの夫とのあいだに2人の息子に恵まれ、慌ただしい子育ても経験したことで、完璧主義から解放されより挑戦的になれたというアン。それでも、人生で一貫している仕事術は、準備を怠らず全力を尽くすこと。それは本番で緊張しないようにするためでもあり、結果がどうなろうと「やり遂げた」と納得できるようにするためでもあるという。
実のところ、かつて投げられた「頑張りすぎてイタい」という批判は、ミレニアル世代の女性があてはめられがちな負のステレオタイプでもある。ある意味、世代の代表として嘲笑されても、彼女は努力をたやさず、私たちに勇気と美徳の成果を見せてくれた。だからこそ、今のアン・ハサウェイは、これまで以上に女性を勇気づけるヒロインなのだ。