良かれと思ってやってない? 実は逆効果な4つの運転法

クルマを運転する際、安全や燃費、愛車の保護のため良かれと思って行っている習慣が、実は周囲の交通を乱したり、クルマの寿命を縮めることも。無自覚な悪癖は大きなトラブルになる前にやめるのが吉……!?
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文:井澤利昭/写真:写真AC
過度な譲り合いが招く「サンキュー事故」の恐怖

右折車を先に行かせる譲り合い運転は、譲れられた側に心理的な焦りを生み、十分な安全確認がないまま交差点に突っ込むことで、事故の原因となることも
道端の店舗から本線へ合流しようとするクルマや、右折待ちをしている対向車に対してブレーキをかけて道を譲る行為は、一見すると美しい交通マナーのように思える。しかし、見方を変えれば、これはけっこう危険な「優先権の放棄」にもなり得る。
本来、50km/hや60km/hで流れている幹線道路において、優先権を持つクルマが突如として減速または停止することは、後続車にとって予期せぬ障害物が現れたのと同じだ。突然のことに後続車のブレーキが間に合わず、衝突事故を起こす原因にもなりかねない。
さらに、この「良かれと思って」譲ったことが、後続車による追突事故や渋滞を引き起こすだけでなく、譲られた側のクルマを危険にさらすことも。
例えば右折しようとしているクルマに道を譲った場合、自分の後方からすり抜けで直進してくるバイクや左側の歩道を走る自転車と右折車が衝突事故を引き起こす可能性がある。
これは、譲られた右折側のドライバーが「早く行かないと!」と焦るあまり十分な安全確認を怠るのに加え、譲った側のクルマが壁となり、死角から突然バイクや自転車が飛び出してくることになるためだ。
ちなみに、ITARDA(公益財団法人交通事故総合分析センター)などが公表している交通事故に関する調査データでも、交差点付近での譲り合いは、譲られた側のドライバーに焦りや油断を生じさせ、死角への安全確認を省略させてしまう心理的要因になることが指摘されている。
また、優先権を持つクルマの予期せぬ減速は、後続車に不要なブレーキを踏ませて渋滞の波を作り出し、周囲のドライバーにストレスを与え、さらなる不注意を誘発する要因にもなる。
スムーズな交通を実現するために基本はやはり、個人の親切心ではなく、道路交通法が定める優先順位を忠実に守ること。
道を譲る場合は周囲のクルマの流れや状況を十分に確認し、自分はもちろん、後続車や先に行かせるクルマの動きまで見越して判断することが、事故のリスクを低減させ、円滑なクルマの流れを実現することになるはずだ。
赤信号での停止時に車間距離を空けすぎる弊害

車種によって異なるものの、前に停まっているクルマのリアタイヤやバンパーが、自分のクルマのボンネットに隠れない程度の距離は保ちたい
信号待ちなどでの停車時に、前のクルマとの間に必要以上に長い車間距離を確保するドライバーを見かけることがある。
追突された際の玉突き事故を防止するためなのか、あるいは万が一、前のクルマがトラブルで止まってしまった際の回避スペースを確保するためなのか……、その考えはさまざまだろうが、ある意味安全意識の表れであることは間違いないだろう。
しかし、都市部などの交通量が多い道路において、この過剰に空いた車間距離は、限られた道路上のスペースを無駄にする要因となる。
具体的には、1台のクルマが本来よりも3m多く車間を空けたと仮定すると、それが10台重なれば30mもの無駄なスペースが発生してしまう。この30mという距離は、右左折専用レーンへの進入を妨げるには十分すぎる長さで、本来なら青信号で通過できたはずのクルマが、その「広すぎる車間」のために長時間の信号待ちを強いられることに。
また、感応式の信号機が設置されている場所では、検知センサーの範囲外にクルマが停止してしまうことで、いつまでも信号が変わらないというトラブルも発生し得る。
さらに、空けすぎたスペースに無理やり割り込もうとするクルマや、脇道から進入を試みるクルマが現れることで渋滞がさらに延びる可能性や、無理な割り込みによる接触事故のリスクを高めることにもなりかねない。
適切な車間距離の目安は、一般的に前のクルマの後輪が完全に見える程度、距離にして1.5mから2mほどが適当とされている。
この距離であれば、万一前走車がトラブルで動けなくなった場合でも、回り込める余地を確保でき道路上の空きスペースも最小限に抑えることができる。
普段クルマに乗り慣れていないドライバーは不安からついつい車間距離を空けて止まってしまいがちだが、渋滞緩和のためには適切な車間距離を身につけるようにしておきたい。
平坦路でのエンジンブレーキ多用による弊害

ブレーキランプは、エンジンブレーキの場合は点灯しないため、減速していることに後続車が気づきにくく、危険なことも
長い下り坂でのフェード現象を防ぐためにエンジンブレーキを活用する運転は、安全で実に理にかなったものだが、平坦路での通常の減速時に、過度にシフトダウンを繰り返してエンジンブレーキを多用する運転は、正直あまり褒められたものではない。
なかには「ブレーキパッドを節約したい」という心理から、フットブレーキをなるべく使わずに減速しようとするドライバーがいるかもしれないが、AT車が9割以上を占める現代の交通事情を考えると、こうした運転は後続を走るクルマとの追突事故の要因となりかねない。
ここでの最大の問題は、エンジンブレーキによる減速ではブレーキランプが点灯しない点だ。後続車のドライバーは、前を走るクルマのブレーキランプの点灯を見て減速の準備を始めるため、ランプが点かないままスピードが落ちる状況は、車間距離の判断を誤らせ、追突のリスクを増大させることになる。
特にマニュアル車でのシフトダウンによるエンジンブレーキは、アクセルオフによるエンジンブレーキよりもより強力に減速するため、後続車にとっては急な接近として感じられる。
一見平坦に見えてわずかに傾斜している下り坂や、雨などで路面が濡れている場合は、後続車の制動距離が延びるため、さらに危険だ。
また、頻繁なシフトダウンはエンジンやトランスミッション、クラッチといったクルマの駆動系に負荷をかけることにも。
比較的安価なブレーキパッドの消耗を防ぐため、修理や交換費用が高額になるこうした部分に負荷をかけるのは本末転倒だろう。
さらに、「フューエルカット(燃料供給停止)を積極的に利かせて燃費を稼ぎたい」という心理から、フットブレーキを極力使わずにシフトダウンで減速しようとする人がいるが、こうした目論見は逆効果になるケースが多い。
現代の電子制御されたエンジンは、アクセルペダルを完全に離した状態であれば、タイヤの転がる力でエンジンが一定の回転数(およそ1500rpm以上など)を保っている間は、自動的に燃料噴射をストップする仕組みになっている。
シフトダウンをして人為的に回転数を高く保とうとすれば、確かに燃料カットの作動時間はわずかながら延びるかもしれないが、同時に低いギアによる強力なエンジンブレーキでの抵抗が発生し、クルマは急激に失速することにも。
高いギアのまま惰性で進んでいれば停止線まで届いたはずが思った以上にスピードが落ちてしまい、再びアクセルを踏んで無駄な燃料を消費する……。それでは本末転倒だ。
現代のクルマにおいては、平坦路での過度なシフトダウンはあまり意味がなく、フットブレーキを適切に使うことが、安全かつエコな運転と言えるだろう。
EVやPHEVのバッテリー寿命を縮める日常的な満充電

長距離ドライブの直前などを除き、EVのバッテリーは満充電にせず80%程度に抑えるのが長持ちさせる秘訣。数年後のコンディションが大きく変わってくる
電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)を所有するユーザーにとって、スマートフォンのように毎日「100 %まで満充電」にしておくことは、航続距離への不安を解消するための安心材料かもしれない。
しかし、EVの駆動用として採用されるリチウムイオンバッテリーの特性を考えると、良かれと思って行っている日常的なフル充電が、数年後の大幅な航続距離低下を招くかもしれないのだ。
リチウムイオンバッテリーは、満充電の状態または空に近いほど化学的なストレスを受けやすい性質を持っている。
特に「100 %」の状態を維持して長時間放置することは、電極の劣化や電解液の変質を促進し、バッテリーの容量低下を加速させることになる。
多くのメーカーが推奨しているのは、日常的な走行であれば充電量を80 %程度に抑えること。この「80 %運用」を心がけるだけで、数年後のバッテリー性能に明らかな違いが出てくる。
また、満充電の状態では「回生ブレーキ」が十分に作動しないというデメリットも。
バッテリーが一杯の状態では、減速時のエネルギーを電力として蓄える余裕がないため、クルマは回生ブレーキを制限し、通常のブレーキのみで減速しようとする。
これにより、本来得られるはずの燃費(電費)向上の機会を損なうだけでなく、ブレーキの操作感が普段と異なり、ドライバーが違和感を覚える場合もある。
長距離ドライブに出掛ける直前であればバッテリーを100%に充電しておくメリットはあるが、自宅近くのスーパーへの毎日の買い物や通勤が主な目的であれば、適度な余裕を持たせた充電管理こそが、愛車のバッテリーを長持ちさせることになる。
これまで良かれと思ってやってきたことが、技術の進歩や環境の変化で変わることは、どの世界にも十分にありうること。クルマの運転も昔からの習慣にとらわれることなく、常に最新のものにアップデートしていくのが、優良ドライバーへの近道であり、愛車のコンディションを長く保つことにつながると言えるだろう。